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2017年01月17日 イイね!

解体新書 アジアンタイヤ その2 インドネシア産

解体新書 アジアンタイヤ その2 インドネシア産お疲れ様です。

近々RE-05Dのカットが叶うとは思うものの、さしあたりアジアンシリーズ第二弾、インドネシア製で、某E氏が「雨の日の首都高、こぇぇ・・・。」とか言っていたアノ会社の製品でございます。

サイズはなんと235/35R19、売値は送料別4,490円の商品です。

製造は2013年製。


構造的にはポリエステルカーカスの1プライ構造、スチールベルト2層にジョイントレスナイロンカバー層1層のまあアジアンではオーソドックスな構造です。



ベルトも前回レポートした225/40R18 中国製と素線・厚みともよく似た構成で、ベルトの剛性は低いけれども、ベルト間剥離に対して安全な方向の仕様になっている事は共通です。
そして部材の配置精度が高く、比較的精度のよい設備で効率的に作られてた事も中国製とやはり共通する特徴です。

日本製のタイヤ、工場も戦前からあったりして、設備も導入後数十年経過しているものも少なくないと思います。こうした古い設備を上手く保全調整して難しいタイヤを作るのが日本の凄いところですが、アジアンタイヤは潤沢な資金で最新鋭の設備をガンガン導入して、日本や欧州の設備メーカーのバックアップを受けながらこうしたタイヤを作っているのでしょうねぇ。


素線って、各タイヤメーカーが作っているわけではなくて、鋼線メーカーがタイヤメーカーに撚り線を納入していますので、ひょっとすると同じ素線なのかもしれませんね。

1*3構造で素線もあまり細くないので、耐久性とコストのベストバランスなのかも。



その他構造で気になった点が2つあります。

一つはアンダートレッドという、トップトレッドとベルト層の間に位置する、いわばオイルバリア層がない事です。

二つ目は六角ビードと豆フィラーという、結構凝った構造を採用している事です。

前者ですが、よほどのスポーツタイヤでない限り、あるいはライフの短いレーシングタイヤとかでない限り、路面と摩擦するゴムであるトップトレッドゴムとベルト層との間には、オイル配合量の少ないバリア層となるゴムが薄く存在します。


丁度良いし写真が無くて恐縮ですが、上の写真、ベルト層とトップトレッド層の間に1~2mmほどの厚みで黒の濃さが違うゴム層が居るのが分かりますでしょうか?

この層の役割は、トップトレッドゴムからの油分がベルト層に浸透して、ベルト層の接着強度を低下させて剥離・破壊に至るのを防ぐ役割があります。

そもそもトップトレッドはゴムの中でもグリップが高く、尚且つ減りにくい事が求められます。あくまで一般論ですが、こうしたゴムを得るためにはゴムが変形という外的エネルギーを受けた時、その変形のエネルギーを熱エネルギーに置換する能力、すなわちヒステリシスロスが多い事が重要で、このヒステリシスロスを増大させるためには、ゴム中にカーボンや場合によってはシリカなどの補強剤と言われる粉体を出来るだけ沢山混ぜる事が良いとされています。なぜならゴムポリマーそのものと粉体が相互干渉し易くなり、わずかな変形でも発熱、すなわちヒステリシスロスが生じるからです。

しかしこの粉体を多量に配合するのが曲者でして、丁度10割そばが混ぜにくくて纏まらないのと同じく、つなぎがないとなかなかポリマーの中に粉体が混ざってくれません。

これを補助する役割がオイルだと思って下さい。

そばやうどんなら水ですが、タイヤに用いるようなジエン系のポリマーは親油性ですので、オイルを入れる事で混ぜやすくなります。

そんな訳でトップトレッドゴムには沢山オイルが含まれていますが、オイルというのはそもそもゴムに比べると分子量が小さいですから、混ぜたものもやがて抜け出てきて、他のオイルの濃度がより低いところに移行しようとします。

この移行が直接ベルト層に行ってしまうと、そもそもタイヤに掛かる内圧や外力を受け止めているベルト層を剥がれやすくしてしまい、長期的には耐久性を損ないます。

バリア層は結局、オイル濃度の低いゴム層を間にいれて、オイルのベルト層への移行を防ぐ機能を持つ訳です。

これを省略すると、まずトレッドゴム層の製造が容易になります。
そして練るゴムの種類も減ります。
設備も簡略化出来ます。

という事でコスト面のメリット大。

一方、前述の課題を引き起こす訳にはいきませんので、何をするかというと、トップトレッドのゴムにはオイルをあまり多く入れない配合が必要になります。

オイルを多く入れられないという事は、普通に考えればグリップが低く、摩耗が悪いゴムになるという事です。シリカを入れると多少補完されるという話もありますが、それはゴムのグリップでいうところの凝着摩擦力項の部分で、ヒステリシスで得られるグリップの大きさに比べると小さなものだと思いますよ。

という訳で、このタイヤはコストと耐久性の両立の為にグリップと摩耗をある程度犠牲にしている可能性があります。あくまでも推定ですが。

もう一点のビード構造の方ですが、これは逆に凝ったビードを使用しています。


ビードのワイヤーの束が六角形に見えませんか?

これはトラック・バス用の大型タイヤやランフラットタイヤなど、ビードの耐久性としなやかさ、カーカスの巻き付け形状をより良くしたい時に使用し、乗用車用タイヤではあまり見かけません。
更にワイヤーの上に乗るフィラーゴムも豆フィラーという小さく精密に作られたもの。

この辺の意図はやはり超扁平で荷重耐久性が厳しいとの観点から、ビード周辺の応力分布の改善を図ったものではないかと思います。

理由を下の図解で説明します。

図の一番上は例えば70扁平のタイヤだと思って下さい。タイヤの形状はベルト層がなければ基本風船のように丸く膨らみますが、異方性複合材料層であるベルト層がほぼ平らに膨らむのを抑えつけるので、トレッド部分は概略平らに、ベルトのない部分であるサイド部は自由に膨らむ円弧状の形状を形作ります。

70扁平タイヤではこの円弧の曲率半径が大きく、また空気による内圧のエネルギーのうち、ベルト層が支える比率が比較的低い為、カーカスの円弧部分の内外での圧縮/引張の落差が小さく、簡単には圧縮応力が生じません。

一方図の中段にある「良いサイド形状の偏平タイヤ」は、カーカスの円弧区間が小さい為、カーカスの曲率半径が小さくなりますが、豆フィラーを用いるなど工夫する事により、それでも極力圧縮応力が発生しないような配慮がなされています。

対して最下段のタイヤはフィラーが大きく、曲率半径が小さいうえ、フレキシブルに動ける範囲が狭い為、圧縮状態に陥り易いです。

タイヤのカーカスの糸とかは、引っ張り方向には非常に強いですが、圧縮、つまり座屈方向の力を受けると容易に壊れてしまいます。タイヤが空気が抜けてしまうとすぐに壊れてしまうのは、その為です。

そんな訳で偏平タイヤは比較的容易に圧縮応力状態に陥り易いので、それを回避する為の努力がないと、すぐに壊れてしまう訳ですね。

デフォで内圧高くしたりするのもその為です。


ちなみに、「それならバンバン内圧上げれば良いじゃん」と思うかもしれませんが、曲率がきつい事でカーカス内外の張力差が大きくなったり、製造上不可避な巻き返し端とカーカス曲率外側との接着面にも同様にせん断応力が拡大する傾向になるため、高くし過ぎてもやはり剥離などの異常を生じます。


大分話が小難しくなりましたが、このインドネシア製のタイヤ、グリップや摩耗はともかくとして、やはり耐久性に関しては結構気を遣っている事がうかがい知れる今回の解析でした。
Posted at 2017/01/17 16:49:22 | コメント(1) | トラックバック(0) | ミセガワ研究室 | 日記

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