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2018年07月10日 イイね!

解体新書 Vol.14 ヨコハマ ADVAN A052 255/40R17

解体新書 Vol.14 ヨコハマ ADVAN A052 255/40R17暑いですね。

サーキットアタッカーのU様より、A052の検体のご提供を頂いたので、花粉メガネを保護具代わりに切らせていただきました。



横浜ゴム 三島工場製

凄く安易な想像として、実はSタイヤのA050とケーシング共用で、頭の載せ替えじゃないかと思ってしまいがちですが、室長も予てから言っている通り、グリップに見合ったケーシング剛性にしないと、性能としてはまとまりません。まあ稀にケーシングそのままでもバランス取れてしまうことも有るとは思いますが。

よく「スペコン」だとか、「途中からコストダウン仕様のゴムになってグリップが落ちた」なんて事を大して証拠なく吹聴する人がいますが、製品の開発って仕様変えたら摩耗テストや耐久テストなど、手間暇かかる評価がやり直しになるわけだし、本命仕様と並行して走らせるほど、工数にも開発費用にも余裕がない場合が殆どですから、私から見たら「勝手な想像」と思えてしまいますね。


さて、本題に戻りますが、結果から言ってA050の255/40R17 Mコンと255/40R17のA052は一見似た構造ですが、その詳細仕様は明らかな差を持つものでした。

まずは並べた写真。



ぱっと見はよく似たカーカス2層、内から外へ巻き返し、さらにその外からスチール補強層を貼り付けたサイド構造。ビードワイヤーは6角ビードと基本は同じ。

しかし例えばカーカスの角度は明らかに異なります。ちなみにどちらも純粋なラジアルではない(笑)。


A050が交差角22度ですから、カーカス角度79度くらい、対してA052は交差角10度位なので、カーカス角度85度位と、大分ラジアルに近い構造で、やはりA050に比べると少しトレッドのグリップが低いことに対してチューニングを施された事が伺い知れます。

この仕様は統一感があり、カーカスの巻き返しも050が二層とも高く巻き上げているのに対して、052は1層だけ高く巻き返し、もう一層はビードフィラー近傍で止められています。


一方A052のトップトレッドゴムはオイルバリア層を持たないシングルトレッド構造に、0.1mm厚さほどの接着層のみが付与されているように見えます。

やはりストレート溝が1本入ることのトレッド剛性に対する影響は非常に大きく、Sタイヤ同様の攻めたトレッド構造を採用しないと、ライバルに負けないコーナリングパワーを確保しにくかったのではと想像します。



ベルトは普通。

そしてA050の時は表示もしていなかったので見落としていましたが、A052は材質表示があり、それを見て驚いたというか、納得したのですが、カーカスが他社のインチキラジアルや普通のラジアルで用いているポリエステルではなく、「ナイロンカーカス」だと判明いたしました。


タイヤに使う繊維は、ゴムと接着させるのに接着剤をディップというドブ漬け処理で含侵させ、その接着剤によってゴムと強固に結びついて、ちょっとやそっとの力では剥離してバラバラにならないようにしているんですが、実はポリエステルはナイロンに比べると、ちょっと接着が難しくて、剥離強度が劣るという欠点を持っています。

一方で利点としては安価で強度が高く、また熱的安定性にも優れています。



※引用文献 グランプリ出版 「タイヤ工学」


ナイロンは熱収縮が大きいので、製造時にタイヤが収縮変形しないように形状維持したまま加硫の熱を冷ましたり、また使用時も走ってきてタイヤが高温となり、停止してそのまま冷却してしまうと地面を踏んで撓んでいたところだけその形状が残留してしまい、フラットスポットができてしまい、再走行時振動が発生するなどの問題が生じます。
さらにナイロンは使用中に伸びやすく、知らず知らずのうちにタイヤの形状が微妙に変わってしまうなど、色々不具合な点もあります。

こんなナイロンをなぜカーカスに使用するかというと、A050やA052はカーカス層が厳密にはラジアルではなく、2層がそれぞれ交差角を持つため、各層の伸びやすい方向と伸びにくい方向が異なるわけです。(コード直交方向に伸びにくく、平行方向には伸びやすい)
そのためカーカス層間には層間剪断力という、互いが剥がれようとする力が生じます。

この剥がれようとする力に耐えて、タイヤが壊れてしまうのを防ぐ為に、接着性の良いナイロンを使っていると思われます。
実はもっと強い角度でカーカスが交差しているバイアスタイヤでは、ナイロンカーカスが普通です。


ブリヂストンはもっと強い角度がついていましたが、確かポリエステルカーカスだったと思います。
おそらく横浜ゴムよりも剥離強度に優れる接着技術を持っているのではないかと推定できます。

しかしナイロンバイアスは非常に歴史のある材料と構造の選択ですので、横浜ゴムは剥離して壊れてしまうと言うことの防止を最優先して設計したのだと思います。

一方で前述の通り、熱い状態から止まって急冷されると変形が残り、振動が出るリスクもあるわけです。(私自身A050では経験あり)
ただ、タイヤにとって、振動が出ることよりも致命的な破壊の方がより重大ですから、変なリスクを取るべきではない選択は賛同できるものですね。

接着性を改善して強度に優れるポリエステルのバイアス構造をものにしたブリヂストンも立派だし、材料の特性を理解して、安全性のポリシーを持って商品開発している横浜ゴム、どちらも立派だと思います。

こういう事は長い経験とたくさんのデータ、そして弛まぬ理論的な考察があってこそのものです。
安全でかつ飛び抜けた性能の両立は、そう簡単にまねできるものではなく、それがコストの差、ひいては売値の差だと思いますので、一流タイヤメーカーのタイヤが割高とは思いませんが、皆さんはどう思われますか?


Posted at 2018/07/10 15:02:57 | コメント(1) | トラックバック(0) | ミセガワ研究室 | 日記

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