
昨日のブログが何となく愚痴っぽくなったその訳は・・・
ホントはこちらの話題が書きたかったのに、あまりに疲労困憊が過ぎて書けなかったという、無念の恨み節だったわけでして(笑)
申年プロジェクトの折り返し地点で私がぜひ書き残したかったのは、先日のワトキンスグレンのレースで、#55・マツダプロトタイプが見せた大奮闘の様子。
そう、ル・マン優勝25周年を記念してこのレースから登場したCHARGEカラーのLMP2マシンが、6時間レースのほぼ最初から最後まで、総合優勝もしくは表彰台を賭けた好バトルを繰り広げ続けたのですよ!
先日のブログで簡単に総括したように、2013年から始まったMazda6 GX~LMP2プロトによるマツダのALMS/USCCチャレンジは、ひたすら苦戦の連続でした。
とりわけ、シリーズ最高峰のPクラスにステップアップした2014年、2015年の2年間は、唯一のディーゼルユニット搭載車という特異性が大きなハンデと化し、レース毎に着実な進化は果たしたものの、プロトクラスの上位を窺うどころか、格下のPC/GTマシンに追い立てられてしまうという、ファンにとっては目を覆いたくなる程の辛いレースが続いていました。
ところが、3年間に亘ったDEチャレンジに終止符を打ち、AER社製・レシプロターボエンジンにスイッチして臨んだ2016年シーズンは、一転してPクラスの中心的存在に成長。
中でも前半戦最大のハイライトは、第4戦のマツダレースウェイ・ラグナセカで見せた会心のパフォーマンスでしょう。
#55と#70の2台のマツダ・プロトタイプは、ホームコースの予選で見事にフロントローを独占。
しかも、レース序盤は1-2フォーメーションを維持して力強く周回するという、つい数年前の苦闘が嘘のような快走を見せてくれたのです。
そして迎えたのが第5戦のワトキンスグレン6H。
レース終了から数日後、IMSA公式サイトでトータル5時間以上のレース中継録画を観た私はビックリ。
前述した通り、ド派手なメモリアルカラーをまとった#55が果敢に前走車にアタックする様子が何度も何度も大写しになっていたのですから(^^)。
2台のマツダLMP2マシンにすっかり感情移入して、手に汗握るバトルに見入っていた私はそのうち、ふとこんなことに思い当たりました。
これって、もしかして・・・
歴代のCHARGEカラーマシンで最高のレースパフォーマンスじゃない?
ちょっと振り返ってみましょう。
私がかつてJSPC観戦に明け暮れた青春時代。
20代の青年がアツい声援を送り続けたマツダの4ローターマシンは、レース距離が長くなればなるほど無類の耐久力を発揮し、レース終盤にスルスルと上位進出を果たしてくれたものの、ことコース上のレーシングパフォーマンスに限っていえば、全くもって"控えめ"でした。
FISCOのどのコーナーにいても場内に響き渡り続けた孤高のロータリーサウンドと、遠く陽炎の彼方からでも一発でそれとわかる強烈なCHARGEカラーは常に無類の存在感を放ち、ファンとして大いに惹かれるものがありましたが、ここ一発の速さやレースを支配する強さに関しては、劇速だった当時の国産ターボ勢の後塵をずっと拝していたのは紛れもない事実。長いFISCOのストレートでは呆気なくトヨタやニッサンの化け物ワークスマシンに抜き去られるのが常でした。
それゆえ、マツダがル・マン優勝を果たした以降のレース中継では、番組スポンサーであるライバルメーカーの意向を反映してか、CHARGEカラーのマシンがオーバーテイクされるシーンが何度も意図的にオンエアされたものです。
当時のマツダのGTPマシンのコース上のライバルは、第2集団にあたる国産セミワークス勢やポルシェの有力プライベーター勢でしたが、コース上で丁々発止のバトルを繰り広げることは殆んどなく、主にピット作業の優劣やトラブル発生の有無で順位を入れ替えるという、静かな戦いに終始していました。
このあまりにも控えめなレースパフォーマンスは、あくまでも「国内耐久戦はル・マンのための実戦テスト」と割り切っていたマツダ独自のスタンスからくる戦いぶりでもあったわけですが、念願のル・マン優勝を果たした翌年、レシプロV10エンジン搭載のニューマシン・MX-R01を登場させても、基本的にその構図は変わることはありませんでした。
同じ3.5L自然吸気エンジンの新規定C1マシン・トヨタTS010には速さで遠く及ばなかったMX-R01は、せいぜい旧型Cカーのセミワークス勢の集団に交じって、抜きつ抜かれつの中団争いをするのがやっとだったのです。
そこへいくと現在のマツダLMP2 マシンは、かつてのMX-R01と同じレシプロエンジン搭載マシンで、何となくシルエットも似通っていながら、そのバトルフィールドは中団争いではなく、堂々オーバーオールでの表彰台争い。
TV中継映像でさえ、あれだけ時間を割いて#55の速さや勢いにフォーカスしていたわけですから、実際にワトキンスグレンに足を運んだファンはきっとそれ以上に、メモリアルカラーのマツダLMP2の躍動を瞼に刻んで帰途に着いたに違いありません。
もっとも、ルマン・プロトタイプ(LMP)の名こそ冠しているものの、今年のル・マン24時間で覇権を争った三大メイクスの超ハイテクなLMP1-H(ハイブリッド)マシンにはタイム的にも技術的にも遠く及ばないUSCCのLMP2カー。しかも、バトルの相手は年代物のデイトナプロト(コルベットDP)だったりするわけで、折角の#55の大活躍も、すぐさま世界の頂点レベルを想起させるものではありません。
しかし、欧州とは一線を画した独自の境地を確立しているアメリカンレーシングの世界において、大人気のスポーツカーの頂点シリーズでここまで目を惹くレースパフォーマンスを発揮できていることは、彼の地のマーケティング面で絶大な効果を発揮していることでしょう。
そう、今ノリにノっている#55のLMP2マシンは、コース上でマツダ史上「最強」のマーケティング効果を生んでいるCHARGEカラーのマシンとも言えるのです!
(ゼッケン後方の電光表示はクラス順位。つまり、Pクラス1位=総合1位を激走中の#55)