
唐突な話ですが・・・花屋さんが「赤い花」と「白い花」を店頭に並べていたとします。そして、そのお店の先月の売上げの9割以上を、「白い花」が占めたとしましょう。
では、その結果から、
「世の中の9割以上の人が白い花を好み、赤い花を好む人はほとんどいない」
と簡単に結論付けられるでしょうか?
・・・答えは「NO」ですよね。
大きな疑問は、お客さんにとって「赤い花」と「白い花」の買いやすさは同等だったかということ。
店頭に並べた花の本数、種類、価格帯、展示の方法、セールストークなど・・・全ての条件が同等であったなら、先の結論もある程度は的を得ているでしょうが、条件が揃っていなかったとすれば、売上げ結果は何らかの偏りを含んでいて、お客さんの嗜好を正しく反映したものではない可能性があります。
例えば、「白い花」のラインナップが、マーガレットやチューリップ、カスミソウからユリ、バラ、コチョウランまで、幅広い種類・価格帯のものが揃っていたのに、「赤い花」の方は稀少な品種のバラだけだったとか、あるいは超安価なパンジーだけだったとか、品揃えに明らかな不均衡があったら、どうでしょう?
たとえ「赤い花」を買いにきた人であっても、選択肢のあまりの少なさに不承不承、用途や予算に見合った「白い花」で代用するケースもあったでしょうし、さっさと諦めて別のお店に行くケースだってあったでしょう。
また、先ほど「ある程度的を得ている」と表現したのは、特定のお店で得られた結果が、必ずしも花屋全体の傾向を代表しているとも言い切れないためです。
例えば、高級百貨店内のお店と、郊外のホームセンターに隣接するお店とでは客層が違うでしょうし、そもそも、(ここ重要ですが)お店の特色をどこに置いているかによっても、訪れるお客さんは異なってくるでしょう。
ということで、私がまず言いたかったのは、『表面的な数字だけで全体を判断せず、時にはその背景や置かれた状況を正しく考慮してモノを見ましょう』ということ。
次に、そうした現実を踏まえ、お店を今後どう運営していくべきか考えるとしましょう。
ここで何より大切なポイントは、どんなお客さんにどんな花を売っていきたいのかという、お店の今後の営業方針に他ならないと思うわけです。
例えば、お客さんを特定せずにとにかく花を一本でも多く売りさばきたいという場合と、顧客を絞り込み、そのニーズに確実に応える商売をしたい場合とでは、自ずと店頭に置く花の品揃えや仕入れ量も違ってくるはず。
それは即ち、お店の特色や存在感をどう創出していくか、ということでもあります。
もしそのお店が「人々の生活に彩りを加えたい」とするのなら、仮に「赤い花」のニーズが本当に1割以下しかなかったとしても、お店の特色、ひいては存在価値を確固たるものにしていくため、戦略的に「赤い花」の品揃えを充実させていく必要性はあるわけです。
それは同時にメインストリームを外す決断にもなるので、その分、強い信念を持ち、辛抱強く継続していくことが大切になるでしょう。当然そのアプローチでは、売上高や売上げ本数などの規模の拡大を最優先にすることは難しくなるでしょうから。
つまり、次に私が言いたかったのは、『同じ外部環境下にあっても、目指すべきものが違い、かつ、確かな戦略があれば、次の一手が違ってきて当然』という話。
いやぁ、こんな思い付きの空想事でも十分悩ましいわけですから、商売の計画、ひいては経営の舵取りってホントに難しいんだろうなと思います。
おまけに、長年の熱烈な支持者や、やたら声の大きい常連客がいたりすると、経営と現場との狭間での葛藤もいろいろ生じてくるかもしれませんしね・・・。
でも、ひとつの拠り所となると思うのは、「やっぱり、このお店でないとね」と、足繁く買いに来てくれる固定客がいてくれること。
私たちのお店はなぜ、贔屓のお客さんを得ることができたのか、その要因を自ら正しく認識していれば、そんな上客の期待に応え続けるための方策を最優先に考え、そして、地道にでもその輪を広げていくことは、お店の進む道としては十分アリだと思うわけです。
(つづく)
Posted at 2012/04/05 21:40:30 | |
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