
GRAND-AMシリーズとアメリカン・ル・マン・シリーズ(ALMS)が統合され、USCC(United Sports Car Championship)として新たなスタートを切った2014年。
レーシングプロトとGTカーの混走で人気を博していた北米の両シリーズが合体したとあって、レースファンの注目度は一気に増した感じです。
その新生USCCシリーズの記念すべき開幕戦が、歴史と伝統を誇るビッグレース・デイトナ24時間。
プロトタイプカーのPクラス/PCクラス、GTカーのGTLMクラス/GTDクラスの全4クラスで構成されるUSCC。
その中で、総合優勝を争うトップカテゴリーが
Pクラス。
ここでは、GRAND-AMの流れを汲むデイトナプロト(DP)マシン勢と、ル・マン直系のLMP2マシン勢が同じ土俵で戦うとあって、両カテゴリーの威信をかけた激しい争いが期待されるのです。
1月初旬のテスト・デーではデイトナプロト勢の優勢が伝えられましたが、デイトナ本番のレースウィークに突入してもその流れは止まらず、予選上位をDPのコルベット勢が独占。同じDPのライリー・フォード勢がコルベットに続き、LMP2勢の最上位はオレカ・ニッサンの総合10位がやっとで、PPタイムからのビハインドは1.6秒。
他のLMP勢は、HPD ARX-03b(ホンダ)とニッサン・モーガンが後に続くPCクラス勢に混じってグリッド中団をポツポツと占めている状況で、こと純粋な速さにおいてはLMP2勢の劣勢は明らか。
24時間の長丁場とはいえ、今回のLMP2にはちょっと勝負権がなさそう・・・そんな雰囲気が漂っていました。
さて、そんな話題満載のPクラスに新たに参戦してきたのが、北米マツダです。
長年GRAND-AMシリーズで強固なタッグを組んできたSpeed Sourceチームをパートナーにして、2013年のGXクラスのメイクスタイトルを獲得したディーゼルターボユニットを大幅に出力アップし、ローラ製のプロトタイプシャシーに搭載。その名も「
マツダLMP2 SKYACTIV-D Racing」という真紅のニューマシンを用意し、新生USCCシリーズに投入してきたのです。
マシンの外観も昨年のMazda6 GXとは違い、#70、#07の2台ともに「ソウルレッド+SKYACTIVデカール」という、ワークス色の濃い装いで統一。
GTカーからプロトタイプへステップアップし、いよいよ頂点クラスへのマツダの再挑戦が始まった!!・・・ファンはそんな思いを強くし、期待に胸を膨らませていたのです。
ただ、現実はそれほど甘くはありませんでした。
昨年まで両シリーズで激しいバトルを繰り広げていたDP勢やLMP2勢たちと違い、マツダLMP2は全く実戦経験のないニューマシンゆえ、テストデーや練習走行セッションの殆どを初期トラブルの対策に費やす展開となり、タイムの方は全くもって振るわず。
24日に行われた公式予選での2台のグリッドは、GTクラスも含めた全参加マシンの最後尾にあたる
総合59位(Pクラス16位)と
総合60位(Pクラス17位)。
総合トップのコルベットDPからは、同じPクラスでありながら11秒以上も離されるというショッキングな結果に終わりました。
無論、それでも、1年前にここデイトナでデビューした、同じ量産エンジンベースのSKYACTIV-D を搭載したMazda6 GXの予選タイムから10秒以上もタイムアップしていて、レーシングユニットとして十分な進化を遂げたことは窺えるのですが、いかんせん最高峰のPクラスで戦うとあっては、求められるパフォーマンスも別次元。
残念ながら、周囲の期待値とのギャップはあまりに大きいものでした。
実績のある市販シャシーを採用している点を考慮すれば、GTマシン勢の後塵をも拝した今回の予選パフォーマンスは、主にSKYACTIV-Dエンジンが足を引っ張った結果と言わざるを得ず、昨年のレースデビューから一歩一歩、着実な進化を果たしているものの、ライバル勢と戦えるレベルに達するまでには、まだまだ速さ、信頼性の両面で大きな課題を抱えていることが早くも浮き彫りとなりました。
結局、本番の24時間レースでも、2台のマツダLMP2マシンは序盤から“我慢”の走りを強いられ、1分40~41秒台で快調にレースをリードするPクラスの上位勢に対して10秒落ちのタイムがやっと。しかし、そのペースも様々なトラブルの併発で徐々に落ちていき、まずは70号車が16時間目にオーバーヒートでストップ。残る07号車も22時間目過ぎにオイルポンプ破損で無念のリタイアを喫してしまい、開幕戦デイトナのチェッカーフラッグを受けることは叶わず。
公式リザルト上は、07号車が445LAPで
Pクラス13位(総合56位)、70号車が369周で
Pクラス14位(総合57位)という結果に終わりました。
たしかに、LMP2規定に沿ったディーゼルエンジン搭載マシンが実走したのは今回が初めてであり、レギュレーションの妥当性検証はやっと第一歩を踏み出したばかり。
各エンジンの性能調整が不十分で、現在のSKYACTIV-Dが過度の足枷を課せられている可能性も否定はできませんが、近年のル・マン24時間でのアウディvsトヨタの戦いから、FIA側にもガソリン車とディーゼル車の均衡を保つノウハウは蓄積されているはず。一概にレギュレーション上の不利を主張するわけにもいきません。
やはりここは、緒戦のビッグレースで全参加車のテールエンダ―となってしまった厳しい現実をしっかりと受け止め、”NEVER STOP CHALLENGING!!”の精神で、着実に歩を進めていくしかありませんね(^^)。
最高峰のPクラスに挑むマツダLMP2は、「速さ」と「信頼性」の双方が決定的に不足しているのが現状。
今回の惨敗を受けて北米マツダが発した「速さでは10%劣っていたが、燃費は35%勝っていた」とのコメントを借りれば、ひとまず信頼性の確保を最優先にしていけば、現在のタイムペースでも一矢を報いることができる・・・とも解釈できるのですが、それはレース中のPIT回数をライバル勢より減らすことに成功した場合の仮定話に過ぎません。いやそれ以前に、格下のGTマシンにすらバンバン抜かれまくる真紅のLMP2マシンを見るのは、あまりに心が痛みます・・・。
できれば、今後の展望を少しでも明るくするために、一刻も早くキラリと光る「速さ」を見せてもらいたいというのが偽らざるところです。
2月中旬に予定されているセブリングのテストデーでは、せめてGTDクラス勢は凌駕してくれるよう、急ピッチのエンジン開発を期待したいと思います。