
久々に気合いを入れてTV観戦した今年のル・マン24時間レース。
CSの生中継をきっちり最後まで見届け、十数年ぶりの”完走”を果たした私に残った幾つかの疑問点。
前回はその一つ目として、「トヨタの2台体制」を挙げました。
さて、今回紹介する二つ目の疑問点とは・・・実はレース内容の話ではなくて、なんとTV放送の話^_^;。
■なぜミニバンのCMなのか?
不躾にもトヨタのレースストラテジーに触れた前回とは大きく趣きが異なり、今回は一人の視聴者の単なる個人的感想に過ぎないのですが、正直なところ、今年の中継で最も違和感を覚えたのがコレだったのです。
今回私が視聴したのは、土曜の深夜と、日曜の夕方から夜にかけて。
この時間帯では、Audi、TOYOTA、NISSANという3つの自動車メーカーが、CS(J SPORTS 3)の番組スポンサーを務めていました。
その昔、テレビ朝日が地上波でル・マン中継を放送していた頃も同様に、レース出場メーカーが番組スポンサーになっていて、そこでON-AIRされるクルマのCMといえば、滅多に見られないレアなものも含め、ここぞとばかりにスポーツカーやスぺシャリティーカー勢のオンパレードでした。
TOYOTAでいえばスープラやセリカ、レビン、MAZDAでいえばサバンナRX-7、NISSANは当時「901作戦」で若者の心をがっちり掴んでいたので、シルビア、180SX、フェアレディ、果てはスカイラインやブルーバードまで、セダンでもクーペでもそれなりにスポーティーなイメージを漂わせていました(^_^)。
そして、今回。
とても興味深い内容だったレース実況の合間合間に映し出されたCMはというと・・・
まずはWECシリーズ戦のバトルシーンを贅沢にインサートし、とにかくスポーツイメージ一辺倒で押しまくったAudiのCM。そして次に、「86オーナー」を切り口に、スポーツカー文化の広がりを意識させるという、やや志向を変えたトヨタのイメージCM。
・・・とここまでは、深夜までル・マンの生中継にかじりつくような熱心なモータースポーツファンを十分意識したと思わせるCMで、ある意味”定石通り”のチョイス。
ところが、NISSANときたら、前述の2メーカーとは全く対照的に、先日発売された軽自動車「DAYZ」と、ミニバンの王者「セレナ」のCMをひたすら繰り返してきたのです(――;)。
そう、コアな視聴者の深層心理にアプローチを試みるものではなく、日本市場での好セールスが期待される最量販モデルの訴求に終始したわけで、それはあたかも
「私たちがレースをしているのは、1台でも多くジドウシャを売るためなんです!」
との打算的なメッセージを露わにされたかのよう・・・^_^;。
とりわけ、私が残念な思いを強くしたのは、従来の感覚からすると「異質」で、モータースポーツ中継にはそぐわないと感じるカテゴリーのCMが、「他でもない」NISSANから発信されたこと。
なぜ「他でもない」のか・・・。
今回のル・マン24時間レース、LMP2クラスでのNISSANエンジン搭載車は実に15台にも上り、総勢22台が参加した同クラスでは文句なしの最大勢力。
メーカーチームだけでなく、プライベートチームにも”開かれた”ル・マンでありたいという主催者側の意向に沿って、低コストなエンジンユニット供給をビジネスベースで成立させ、歴史と伝統のあるル・マン24時間レースはもちろん、WECやALMSなど全世界的なプロトタイプカーレースを積極的に下支えし、カテゴリーの隆盛と発展に多大な貢献をしている、NISSAN。
しかも今回、現地では、昨年までのデルタウィングに代わる2014年のル・マン参戦マシンとして、"世界最速の電力駆動レーシングカー"「Nissan ZEOD RC」を初公開。”ガレージ56”枠を手始めに、将来的にはLMP1クラスに挑戦するというシナリオも示唆し、決してエンジンサプライヤーに止まらず、NISSAN本隊としてル・マン制覇を目指す意気込みまで誇示したわけです。
そんな近代ル・マンやプロトタイプカテゴリーと深く関わってきた誇るべき日本企業・NISSANが、よりによってスポーツイメージとは程遠い、日本の一般的なマーケットを強く意識した超現実的な商品宣伝に終始してしまうとは、あまりにも無念。せめて、電力駆動つながりで「LEAF」のCMにしてもらいたかったなぁ・・・というのは、古臭いレースファンのボヤキでしょうか^_^;。
もし今後、万が一でも他のスポンサー企業がこの動きに追従し、コアなル・マン中継番組内でエコカーやミニバンのCM合戦をやられたら・・・甚だ興醒めですし、あまりにも悲しいですよねぇ。
このあたり、NISSANファンにはどう映ったのか聞いてみたいところ。
・・・案外、ファンの方々はもっと冷静で、
「別に、今に始まったことじゃないぜ」
「今どき、スポーツカーのCMなんてあると思う?」
「時代はエコ、お前の考え方が古臭いんだよ」
などと一蹴されるのがオチかもしれません。
当のNISSANだって、然るべき企業戦略を構築した上で、モータースポーツ活動と広告活動を効果的に連動させているのでしょうから、私のような素人・門外漢がそのロジックをとやかくいう筋合いではありませんよね。
ただ、いちレースファンとして、
「とにかく残念だった」という事実だけは、この拙いブログにでも書き止めておきたいと思います。
そういえば今からちょうど1年前、そのNISSANエンジンが大活躍したLMP2クラスへのエンジン供給を表明したのが、マツダでした。
残念ながら、今年のル・マンのエントリーリストには「SKYACTIV-D」や「MAZDA」の文字がありませんでしたが、果たしてこの先、日本車唯一の総合優勝メーカーとしてどのようなル・マン復帰ストーリーを計画しているのか・・・。
エラそうにトヨタやニッサンに物申した後で、ファンとしてかなり心配になってきました(汗)。
・・・つづく(かも)