
今年の1月、北米GRAND-AMシリーズ開幕戦・デイトナ24時間レースでは、出走した3台全てがリタイヤしてしまった、「Mazda6 GX」(新型アテンザ)。
今年から新設されたGXクラスに、シリーズ史上初のディーゼルエンジン「SKYACTIV-Dクリーンディーゼルエンジン」で斬り込むという話題満載のチャレンジは、ほろ苦いスタートを切りました。
そして、すっかり紹介が遅くなってしまいましたが、先々週に開催されたROLEX GRAND-AMシリーズ第2戦・オースチンの様子を、現代版「POLE POSITION誌」ともいうべきMZRacingサイトが、早速レポートしてくれています(^o^)。
今回の舞台は、F1のアメリカGPも開催された新しいサーキット「COTA」。
ここに#00と#70の2台のMazda6 GXがエントリーし、参戦2戦目にして待望の初完走(GXクラス2位)を果たしたというのが大きなトピックス。
完全な消化不良に終わったデイトナから僅か1ヶ月、早くも2位表彰台を射止めた#70のドライバー達の喜びに満ちた表情が印象的でしたね。
今回の結果で、私がまず大いに評価すべきと思うのは、MZRacingのレポートにもある通り、レースウィークを通じて「SKYACTIV-Dクリーンディーゼル」のエンジン本体系にトラブルが起きなかったこと。
昨年までの3ローター・自然吸気REから、4気筒のディーゼルターボへ。
言うなれば"全く別物"のパワーユニットに刷新されたというのに、デビュー戦のデイトナ24Hでは、レース直前にシェイクダウンという超タイトな(いや、あり得ない?)スケジュール。
Newマシン、Newエンジンのダメ出しの途上でレースウィークが終了してしまった感じだったので、この結果は、1ヶ月間のインターバルでエンジニアが必死にリカバリーに励んだことが十分窺える内容ですね。
北米マツダのパートナーであるSPEED SOURCEは、GRAND-AMマシンで十分な実戦経験を持つチームだけに、今後、新しいパワーユニットに起因する駆動系や車体系の問題を直ちに洗い出し、スピーディーな対策を講じていけば、「Mazda6 GX」のマシンポテンシャルの急速な向上も期待できますね。
そして私はもうひとつ、ライバルとのタイム差が、初戦よりも大きく縮まったことを評価したいと思います。
ま、ライバルといっても、第2戦のGXクラスにエントリーしてきたのは#38のポルシェ・ケイマン唯1台と些か寂しい陣容ですが、レースウィーク中の各セッションの両車のベストタイムを追ってみると、以下のようになります。
○Practice1 +2.533 sec. (#38: 2’18.022 vs #70: 2’20.555)
○Practice2 +1.265 sec. (#38: 2’18.072 vs #70: 2’19.337)
○Practice3 ― (No Time)
○Practice4 ― (#38: No Time vs #70: 2’20.952)
●Qualify +0.435 sec. (#38: 2’21.682 vs #00: 2’22.117)
●Race +0.752 sec. (#38: 2’17.876 vs #70: 2’18.628)
とくに、予選と決勝のベストタイムが、#38・ケイマンの1秒差以内まで迫ってきたことは、驚きの一言。
決勝のベストタイムを例にとれば、Mazda6 GXのそれはケイマンの僅か「0.5%増し」に過ぎないのです。
これ、前戦・デイトナの予選タイムが+6.134秒(=5.4%増し)、決勝のベストタイムも+6.192秒(=5.4%増し)だったことを思うと、本当に同じマシンなのか疑いたくなるほど(笑)。
私がこれほどタイム差の縮小を大喜びするのには、理由があるんです・・・。
コレ、我々WW2がアマチュアレースのスーパー耐久の現場で嫌というほど痛感してきたことなのですが、仮に一発のベストタイムに大きな差があると、決勝レースにおけるパフォーマンスの差は確実に「それ以上」なのです。
とかく、速いマシン(チーム)はコンスタントに良いタイムを並べられるだけの安定したポテンシャルを有しますが、遅いマシン(チーム)は得てしてその真反対であることが多いのです。
不安定なパフォーマンスの中で刻んだ”虎の子の”ベストタイムは、運良く条件が揃った時に出たミラクルショットに過ぎないわけですから、決勝レースでそのレベルのタイムを安定して再現し続けることなどまず無理。つまり、予選での3~4秒差は、決勝の平均ラップタイムでは4~5秒差に拡大して重く圧し掛かり、不利な状況をさらに難しいものにしていくのです。
そして何より、そこまで大きなポテンシャル差があるとコース上でのパフォーマンス不足も決定的で、「抜きつ抜かれつ」どころではなく、「抜かれ抜かれて、また抜かれ」の世界。
スタンドから熱い視線を送るファンに、その活躍を印象付けることは決してできないのです・・・。
そんな観点からも、北米マツダとSPEED SOURCEの強力なタッグが、2戦目にしてクラスTOPのマシンを少なくともタイム上で射程圏内に捉えてきたのは、この上ない朗報。私達ファンがMazda6 GXの奮闘の様子を拝める日もそう遠くないかもしれません。
もちろん、ライバルも進化するのでこの先はタフな戦いが待ち受けているでしょうけど、GXクラス同士が切磋琢磨し、いつしか格上のGTクラスの下位集団を喰えるようになってきたら・・・かなり注目できる展開になりそう(^.^)。
各クラスの上位争いのみならず、クラス間での下剋上まで見られればレースの興味も倍増しますから、マツダファンのためにも、そしてシリーズ振興のためにも、次戦でのMazda6 GXのさらなる飛躍を期待したいものですね。