
日曜日、朝イチで試乗したワゴン・20Sがあまりに気持ちの良いパフォーマンスを見せたことで、その前日、初めてディーゼルのセダン(XD-Lパッケージ)に乗った時の”疑念”をすっかり忘れてしまった私。
この20Sの大健闘で、私の新型アテンザに対するイメージも一気に好転し、フルSKYACTIV車の実力に大いに安堵する一方で、マツダがフラッグシップモデルとして前面に押し出している『代表選手』のセダン・XDの評価がボヤけてしまったことは、一人のマツダ好きとして、一人のクルマ好きとして、到底納得できるものではありません。
そこで私は、ワゴンで得られた爽快感に浸ったまま帰途に着きたい欲望を断ち切り、通算2度目となるセダン・XDの試乗を企てることにしました。
クリスタルホワイトパールをまとうセダンの試乗車は、豪華装備が付かない「素の」XD。
ただ、昨日試乗したソウルレッドプレミアムのXD・Lパッケージと、走りに関する基本メカニズムは共通なので、疑念の検証材料として全く不足はありません。
こうして再度クルマを替えて舞い戻った試乗コース。
徳山湾に面した新興の埋立区域から、舗装の古い海辺のワインディングロードを経て、山の中腹にある小さな工業団地で折り返すという、片道10分ほどの退屈知らずのドライブです。
この中で、直前のワゴン・20Sと最も顕著な違いを感じたシーンはといえば、団地へ向かう急坂。
ささっと気付かれないようにキックダウンはするものの、大人2名分のウェイトを乗せてやや苦しそうに登った20Sに対し、XDは何の苦もなく高いギアをキープしたまま余裕綽々で走破します。
2.0Lガソリン(196N・m)と2.2Lディーゼルターボ(420N・m)の圧倒的なトルク差がもたらす現実的なユーザーベネフィットが、なにも故意にアクセルを踏み込んだ時だけでなく、こうしたごく日常的な走行シーンでハッキリと感じ取れたことは、大いなる収穫でした。
この力強い走行パフォーマンスは、登坂時のみならず、多人数乗車時や荷物の積載時にも確実に効果を発揮するでしょうし、長距離ドライブの際にそうした実効果がどんどん積み重なっていけば、ドライバーの疲労度にもきっと大きな差となって表れるはず。
この点では、あらためて「SKYACTIV-D 2.2」の高いパフォーマンスを思い知る結果となりました。
それはそれとして、では前日のXD・Lパッケージの試乗で感じた違和感は再現したのか。
結論からいえば、加速時の遮音性も巡航時のリア周りの挙動も、見事なまでに同じであり、車両による個体差は全く感じられず。(ま、品質が一定であるのは工業製品として好ましい話ではありますが)
個体によるバラ付きがないとすれば、これらの疑念に一旦、自分なりの解釈を示しておかねばなりません。
まず、巡航中に時折り顔を覗かせた、ヒョコヒョコとした細かい上下動。
セダン・XDに共通して現れたこの挙動も、ワゴン・20Sでは一転して皆無でした・・・。
本来なら、ワゴンの19インチ車かセダンの17インチ車を追加検証してから結論を出したいところですが、感覚的には、ボディタイプの違いよりもタイヤサイズの違いの影響の方が大きいような気がします。
一方で、XDの走りとは即ち、マツダの技術陣が自信を持って送り出す『代表選手』の走りであると捉えると、私のような素人でも気が付く不快な挙動を見過ごすとは考えにくいので、案外、タイヤの空気圧が規定値から大きく外れていた可能性だってありそうです。
それに・・・この上下動は四六時中発生するわけではなく、特定の走行条件時に限った話であることも考慮して、全体としては「些細な問題に過ぎない」と、あっさりと結論付けることにしました。
(だったら最初から騒ぐなよぉ・・・苦笑)
その意味で厄介なのは、もうひとつの方。
加速時に耳に突き刺さった「ガラガラ・・・」というディーゼル特有の音は、通常の走行で加減速を繰り返す以上、ずっと付き纏われることになるのですから。
ですが、私はこの音の問題については、ひとえにアテンザのディーゼル車に対する期待値をどこに置くか次第であり、評価は人によって分かれて当然だと悟りました。
実際、巷の試乗レポートで音の評価を見ても、「ライバル車と比べれば十分静か」との肯定派から、「ディーゼルであることを意識させられる」との否定派まで、まさに反応は千差万別。
少なくとも私の場合、新型アテンザというクルマのキャラクター、その位置付けや背負っている使命などから総合的に判断し、SUVのCX-5であれば十分許容範囲内だったディーゼル特有の音が、プレミアムセダンを標榜するアテンザとしては必ずしもそう思えなかった・・・ということです。
ワゴン・20Sで感じた胸のすくような爽快さの延長線上として、いつしかドライバー自身とアテンザが「人馬一体」の境地に達し、自らの心を解き放つ至福の瞬間を想像してみた時に、ガラガラガラ・・・と容赦なく侵入してくるエンジン音は、どうしてもそのイメージにそぐわない、と私は感じたわけです。
フルSKYACTIVの高い総合力と秀逸なデザインで、クルマ自体の出来は1ランクも2ランクも上がっているだけに、ガソリン車ほどリニアでない低回転域のスロットル特性も含め、ディーゼル搭載車・XD(6AT)のパフォーマンスには、個人的に「惜しい・・・」との印象を強くします。
私としては、本革巻きステアリングの素材は二番革でも三番革でも(?)構わないので、その分のコストをXDグレードの遮音性能の向上に振り分けてもらいたい・・・そう叫びたい心境です。
というわけで、一勝一分の優勢で迎えた3戦目は、あえて厳し目の評価をもって、「敗け」に。
かくして、3連戦の結果はタイトル通りの「一勝一敗一分」となりました。
でも、その一勝はコールド勝ちに匹敵するほどの”圧勝”であり、その一敗は大いに情状酌量の余地を残す”惜敗”であったことを最後に付け加えておきます。
あぁ・・・追加で特別試合を設け、夢膨らむ「25S」と汚名返上を期す「XD(6MT)」に乗ってみたい!!(笑)