
土曜日、ビアンテのドアミラー交換作業の待ち時間を利用して、やっとCX-5の改良モデルを試乗することができました。
前回、新しいFrグリルを中心にその外観を紹介した試乗車は、このたびの改良から追加されたチタニウムフラッシュ色の「XD PROACTIV」グレードだったので、今回はそのクルマにいざ試乗!と意気込んでいたところ、なんと暫定的に他店舗の試乗車と入れ替わっていて、私の目の前に姿を見せたのは、新色のソニックシルバーをまとった「XD L-Package」。
つまり、期せずして最新CX-5の最上級(最高価)グレードに試乗することになったのであります(^o^)。
但し、そんな嬉しいサプライズにもかかわらず、例によって試乗のコースはというと、渋滞気味の商業地域の平坦な幹線道をゆっくりと右回りしてくるという超・退屈な短距離ルート。
まぁ、これはいつものことですから仕方がないとして・・・
とにもかくにも、久々のCX-5試乗を終えた感想をまず素直に表現するならば、月並みではありますが
「イイクルマになったなぁ」
この一言に尽きます(^O^)。
そう感じた理由は・・・たぶん、私が個人的にCX-5に感じていた”些細な死角“が全て解消されたていたからですね。
即ち、悪くもないけど別段良くもなかった「乗り心地」にしても、ひたすら”質実剛健”を地で行っていた素っ気ない「インテリア」にしても、ガソリンエンジンにはさすがに一歩及ばないと感じていたディーゼルの「アクセルレスポンス」にしても、そして、やや耳障りだけど刺激的な走りを勘案すれば許容できると感じていた「静粛性」にしても、今回の試乗で全く不満を感じなかったばかりか、過去の印象をリセットして純粋に1台の最新マツダ車として接してみても、「このクルマ、なかなかイイじゃん」と素直に思わせるほどの魅力がありました。
ま、それくらい、今回の改良モデルにはハッキリとした”進化の跡”が感じられたというわけですが、ここでしっかり断っておかねばならないのは、私が比較しているCX-5は、今から約3年前に試乗した発売直後のモデル。
つまり、その後2度にわたって小規模な改良が施された中間のモデルには一切乗っていないのです・・・。
よって、時代は一気に3年分も飛んでしまいますが、その点はどうかご容赦ください(^_^;)。
折角なのでその3年前を少し詳細に思い出してみると・・・
2012年の春、全くのブランニューモデルとしてデビューしたCX-5は、マツダの最新技術「SKYACTIV」をエンジン&トランスミッションのみならずボディー/シャシー領域までフル採用し、かつ、新デザインテーマ“魂動”を全面的に反映させた初のモデル。
マツダの持つ最新技術を全て投入した上で、自動車づくりのプロセスまで刷新し、不退転の決意で送り出した渾身のグローバルカーでした。
また、初めて世に出たクリーンディーゼル・SKYACTIV-D(2.2)は、軽快かつトルクフルな走りで従前のディーゼル車のイメージを完全払拭し、日本市場にクリーンディーゼルブームを巻き起こすキッカケともなりました。
そんなわけで、このCX-5という名前のクロスオーバーSUVは、マツダが(通算何度目かの)危機を脱して奇跡的な復活を果たす転機となった意義深いクルマであり、歴史を作った名車の1台となったことは今更論を待たないのであります。
ただ、長年、リーマンショック後の不況や超円高のダメージに苦められていたマツダの台所事情を反映してか、クルマの基本性能の追求のためには惜しみなく投入されたコストも、快適性や豪華さなど所謂「プラスα」の領域までは十分には手が回らず、必要最低限のレベルという印象が拭えませんでした。
実際にCX-5をドライブしてみれば、全幅1.84mという大きな車体サイズや、1.4トンを超える車重を全く感じさせない気持ち良いレスポンスと、余裕あふれるディーゼルの動力性能に驚かされる一方で、乗り込んだ瞬間から常に視界に入ってくるインテリアには豪華とか贅沢といった雰囲気はあまり感じられず、ある意味SUVらしい、”道具としての潔い割り切り”を感じさせるものでした。(これはこれでバランス良くまとまってはいましたけどね)
ところが、幸いなことに、背水の陣で送り出したフルSKYACTIVのトップバッター・CX-5のヒットを機に、マツダの業績は一気に回復に転じ、その後に続いた新型車からは、CX-5のデビュー当時には我慢せざるを得なかった「プラスα」の部分にも次第に手が回るようになり、とくに近年の新型アクセラや新型デミオでは、内装の質感において”下剋上”とも揶揄されるほどの劇的な向上を果たしたのです。
そして今ようやく、苦しい時代を耐え抜いて道を拓いた功労者(車)の長男にも人並みの贅沢ができる自由が与えられ、弟たちに遅れを取っていた見映えや質感を着実に挽回し、ラインナップ内の細かな序列の歪みを解消。と同時に、絶えず進化を続けてきた走りの“人馬一体”感についても、最新の考え方をきっちりと反映させてきたのが、今回の改良モデルだというわけです。
但し、実家のアクセラに嫁さんのデミオと、インテリアの質感で下剋上を果たした当事者(車)と身近に接している私からすれば、同時に発表されたアテンザ改良モデルのようにデザイン自体を刷新するところまではいかず、既存のデザインを踏襲したまま表面処理の変更や加飾の追加を細かく積み重ねたCX-5の最新インテリアは、やっと「車格相応に収まった」という表現が妥当で、特段のサプライズには感じなかったというのも正直なところ。
それよりも、路面の凹凸を吸収する際にグンと厚みが増していて、落ち着きだけでなく高級感さえ漂わせてきた乗り味の進化や、思わず「これ、ディーゼルだよね?」とタコメーターの目盛りを確認してしまったほどの静粛性の向上の方が、個人的には遥かに新鮮に映りましたね。
無論、間もなくデビューする新型CX-3を睨んで、戦略的に商品のアップグレードを急いだ背景もあることでしょうけど、持てる最新の技術をラインナップ全体に惜しみなく水平展開しながら、常に各モデルの魅力を積極的に向上させていく最近のマツダの姿勢には、とても好感が持てます。
きっとそのうち、我が家のデミオや実家のアクセラだって、その存在が霞んでしまうくらいの魅力的な改良モデルが次々に登場していくことでしょう^_^;。
ということで、予想していた通りの正常進化の跡がしっかりと確認できたCX-5。
欲を言えば、まだ一度も実車に巡り会えていない2.5L・ガソリン車にもぜひ乗ってみたいものです。