
“Zoom-Zoom”のブランドメッセージや”人馬一体”の開発キーワードで、意のままに操る楽しさを訴求してきたマツダ車。
その「走る歓び」を新たな次元へ誘う可能性を秘めた最新技術、GVC(G-ベクタリング・コントロール)は、その発想といい、その仕掛けといい、実にマツダらしいというか、真面目さと一貫性が盛り込まれた、こだわりの独自技術。
「リッター30キロ!」のSKYACTIVデミオで先陣を切ったSKYACTIV TECHNOLOGYが登場から早5年経ち、次なる技術展開の方向性に注目していた私は、技術発表の段階から、GVCが提供するであろう未知なる操縦感覚に大いに興味をそそられたのです。
ところが、GVC初搭載となった新型アクセラを試乗してみた結果は、事前の期待に反して、あまり芳しいものとは言えませんでした。
いや、アクセラの走り全体の印象は秀逸なもので、とりわけ乗り心地の良さや安定性の向上にはすっかり感心したほど。でも、肝心のGVC効果の部分を私は明確に切り出すことができなかったのです(-_-)。
もっとも、GVCがこれ見よがしに機能を主張する技術ではなく、むしろ黒子に徹するかのように陰でそっと寄り添う技術だという概念は頭では理解していたつもりだし、そもそもシステムの反応速度はヒトが感知できるレベルを遥かに超えていて、作動の瞬間に気付くのは不可能だったりもするわけですが、ドライバー目線で全くといっていいほど効果が判らなかったという悲しい現実は、意気込んで試乗した分、余計に肩透かしを喰らった感じがしたものです。
ピッチャーが精魂込めて投じた最後の一球が、ストライクともボールとも判定されないままTV中継が終了したような(笑)、釈然としない幕切れとなってしまいました。
ただ、そのGVC効果の点を除けば、一連の試乗を通じ、大幅改良を受けたアクセラがより魅力的な中核車種に進化したことを確信。以前からアクセラがマツダ車のベスト・バイだと主張して憚らなかった私は、その好印象(贔屓度?)をさらに強める結果となりました(^^)。
などと、身内の所有車でもあるBMアクセラに最大級の賛辞を送ったところで・・・掲載画像のアテンザセダンの話をしなくては。
そう、今年の8月、アクセラの大幅改良から少し遅れ、件のGVC搭載をはじめとして、安全性や快適性の向上などの商品改良が実施された最新フラッグシップ車のことですね。
実はアクセラを試乗している合間に、ふと最新型の試乗車(XD・Lパッケージ)を試す機会がありまして(^^)。
現行の三代目アテンザは2012年秋の登場ですから、もうすぐ丸4年。
その中間地点にあたる一昨年の暮れ、シグネチャーウィングのデザイン変更も含めた大幅改良を受けたのが記憶に新しいところですが、それと前後したタイミングでも、細かなアップグレードを何度か受けています。
私は過去に初代アテンザを所有していたので、歴代アテンザには大いに興味を持っていて、それなりに試乗の回数を重ねてきました。
とりわけ、2012年の三代目アテンザ登場直後は、ガソリン車にディーゼル車、セダンボディにワゴンボディ、6AT仕様に6MT仕様と、多種多様なバリエーションを乗り倒した記憶があります(^^)。
それもこれも、このモデルチェンジには”ただごとではない”感が満載だったから。
まず、従来のマツダ車にないその堂々たるディメンジョンに、旧来のアテンザとの決別めいたものを感じたし、最新のSKYACTIV技術と魂動デザインを余すとこなく注ぎ込んで勝負をかけたところには、生まれ変わったフラッグシップモデルでプレミアムな領域にチャレンジする意気込みを強く感じたものです。
とくに、初めて世に問うたソウルレッドプレミアムのボディ色とホワイト内装を組み合わせたセダンのスタイリッシュさはもはや衝撃的ですらあり、街で見掛けるたびに思わず目を奪われてましたからねぇ。
私はそんな三代目アテンザのパフォーマンスを新鮮な視点で味わいたい・・・つまり
「アテンザとしてみたら○○」とか
「旧型と比べると●●」といった前提付きの比較ではなく、ブランニューの上級セダン&ワゴンとして、その質感やステータス性をフレッシュな目で検証してみたかったのですね。
そして、何度もしつこく試乗を繰り返してみて少し気になったというか、私の漠然とした“上質なクルマのイメージ”の期待値を下回った数少ないポイントというのが、「音」と「振動」だったのです。
「音」とは即ち、クルマ全体としてはかなり静かな部類と思えたほどの好印象を一瞬でぶち壊してくれた、緩加速時に容赦なく侵入してきたディーゼル特有の鼓動。
もちろん、その音圧レベルは決して高くはなく、「どこか遠くでガラガラ鳴っている」レベルに過ぎなかったのですが、高級感を期待させるクルマの雰囲気からすると、漏れ聞こえてくるその音は私にとって明らかに期待ハズレで、甚だ興醒めな印象が否定できなかったのです。
一方の「振動」とは、セダンの19インチ車で散見されたリアのヒョコヒョコした上下動。
この現象に関しては後日、純正のリアダンパーが馴染んでくれば解消方向にあるとの好意的な記事を目にすることになるのですが、兎にも角にも、真新しいディーラー試乗車が路面の粗い産業道路で見せたリアの落ち着きの無さは、足をガチガチに固めたチューニングカーを想起させる程で、これじゃうっかり大切な客人は乗せられないな・・・と当時は真剣に心配したほどでした。
なぁんて不自然なくらい厳し目に振り返ってしまうと、思わずこの先の話の展開を先読みされてしまいそうですが・・・実はその通りでして(^^;)。
果たして、私が久々に試乗した最新アテンザセダン(XD-L)は、幾度の商品改良を経た結果、上述した大きなネガティブポイントが消え失せていたばかりか、当時はさほど問題視しなかった加速時の一瞬のレスポンス遅れも相当なレベルまで解消。4年前、操作の瞬間ごとにドライバーが感じていた細かなストレスがことごとく潰されていて、フラッグシップモデルとしての完成度を大いに高めていたのです。
いやぁ、走り出したその瞬間、乗り心地の良さや挙動のマイルドさに驚いてしまったし、レスポンス向上と音質の改善を果たしたSKYACTIV-D 2.2に至っては、実家のアクセラXDと同じディーゼルエンジンとは俄かに信じられないほど別物に感じましたからね。
そんなわけで、ジィ探しで見つけた3つ目のポイントは、弟分のアクセラの正常進化に呼応するように、頂点に君臨するアテンザもフラッグシップモデルに相応しい劇的進化を果たしていた、という嬉しい事実でした(^O^)。