
北米期待の新シリーズ・USCC(United SportsCar Championship)の開幕から、2ヵ月が経過しました。
デイトナ24時間、セブリング12時間と、シリーズの看板レースともいうべき伝統ある耐久戦を終えた今、この2戦を振り返って強く私の印象に残っているのは、全体的にフルコースコーションや赤旗中断が頻発したということ。
ま、そのお陰で(?)、まだまだ速さに劣るマツダのLMP2マシンが12時間レースを僅か13周遅れでフィニッシュできたという事実もあるわけで、一概にクリーンなLAP数の少なさを非難するつもりはないのですが、問題はその原因となったアクシデントが危険極まりないクラッシュだったこと。
中でも、デイトナ24時間で赤旗を招いた大クラッシュは思わず目を覆ってしまうもので、コース脇をスロー走行していたGTマシンに全開加速中のプロトタイプマシンが激突。追突したコルベットDPは全損級のマシンダメージを受け、搭乗中のドライバーは命にこそ別状はなかったものの、複数回にわたる緊急手術を受けるほどの重傷を負ったのです。
昨年のGRAND-AMで上位争いの常連だった#99の真紅のマシンは、今シーズン中の復活参戦は厳しい状況に追い込まれているとも聞きます。
また、セブリングで起きたPCマシン同士のクラッシュも背筋が凍り付くようなもので、コーナー内側で停止したマシンがアクセルターンでコース復帰を試みたものの、態勢を崩し、こともあろうにブラインドコーナー出口のレコードライン上にハーフスピン状態で出没。
そこに、接近戦を演じながらコーナーを立ち上がってきた後続マシンが激しく接触したのです。
幸い、両ドライバーに怪我はなかったようですが、マシンは大破。チーム関係者でなくとも「そりゃないゼ・・・」と吐き捨てたくなる酷い事故でした。
「レースにクラッシュはつきもの。別に問題視するレベルじゃないのでは?」
たしかに・・・そんな見方もあるでしょう。
アメリカンレースの象徴・NASCARの例を出すまでもなく、クラッシュや派手な小突き合いは日常茶飯事。
現に、私が昨年、公式動画で追いかけたGRAND-AMのレースだって、毎戦のようにプロトタイプ同士、GTマシン同士で終始激しい接近戦が繰り広げられており、ターンイン中の相手をインから軽く小突いてスピンさせたり、ブレーキングで真後ろから追突して押し出したりと、まるでノービスクラスのような反則じみたシーンも珍しくはありませんでした。
それでも、今年起こったような悲惨なクラッシュに至らなかったのは、長年同じシリーズを戦ってきたドライバー同士、コース上において最低限のルールやマナーが通用していたからではないかと私は思うのです。
とりわけ、激しいトップ争いを繰り広げるプロトタイプ勢が、同じく団子状態のGTマシン勢を一気にラップしていくようなシーンでは、そんな印象を強くしたものです。
低速コーナーが続くようなセクションでは、たとえプロトタイプといえども、簡単にGTマシンをパスできるほどの相対スピード差は作り出しようがありません。にもかかわらず、「えっ、そんなところで抜くの?」と思うような積極的なパッシングシーンが次々に繰り広げられたのは、譲る側と譲られる側の意志疎通が、幾多のレース経験を通じて、ある一定レベルで確立されていたからに違いありません。これはたぶん、ALMSシリーズの世界でも、程度の差こそあれ同様だったと思うのです。
そこへきて、新生のUSCCです。
GRAND-AMシリーズとALMSシリーズが統合されたこのシリーズは、言ってみれば異種格闘技戦。
それぞれ異なるシリーズにおいて構築されてきた「プロト&GT」の共存関係が混ぜ合わさって、4つの新クラス間で新たな秩序や均衡が生まれるには、やはり、それ相応の時間を要すると考えるのが妥当でしょう。
とかく、人気を博した両シリーズの統合とあって、BoPと呼ばれる性能調整、各マシンの勢力均衡を維持する振興策の方につい問題意識が行きがちですけど、常に危険と隣り合わせで激しい戦いに挑むドライバー同士の最低限の信頼関係や秩序の構築にも大きな課題があるのでは・・・と私は秘かに危惧しています。
クラッシュがさらにエスカレートの一途を辿るようなことがあると、最悪の事態に至らないとも限りませんし・・・
ただ、新シリーズの序盤2戦が偶々、歴史と伝統のある耐久戦であったがために、裕に60台を超えるマシンがコース上にひしめき合う状況となり、余計に接触を誘発した側面があったことも否定はできません。
そういう意味では、参加台数も落ち着いてくるであろう第3戦以降は、私が抱いた不安をよそに、それなりに整然としたレースが展開される可能性もありますね。
いずれにしても、ファンが期待する”ドキドキ””ハラハラ”は、激しくもレベルの高い迫力のバトルが生みだす興奮であって、決して、息を飲むようなクラッシュや派手なトラブルシーンがもたらす衝撃ではありません。
「さすがは全米屈指の両人気シリーズが合体しただけのことはある!」
と、世界中のレースファンを唸らせるような魅力あるバトルをぜひとも披露してもらいたいものです。
そして願わくば、その注目の舞台で我らがマツダのLMP2マシンが大いに存在感を示し、レースを重ねるごとにメキメキと頭角を現していってもらいたいと思います(^_^)。
Posted at 2014/03/26 22:11:30 | |
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