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aquablauのブログ一覧

2018年05月26日 イイね!

アクセラ乗りが EV シフトの夢を見てみる

さて、前回の記事では EV (特に日産リーフ)の中古車価格の下落について記事にしましたが、実はその中古車の日産リーフこそ、今一番おすすめの車だったりします。
ただし2台目として、ですけどね。

中古車リーフ 4年間充電代サポート!
http://www.get-u.com/CP/zesp2u/



なんと4年間もガソリン代無料の車が手に入ります。



ただし、注意書きには小さく、

※販売価格が48万8千円以上の中古車の日産リーフをご購入の場合に限り本キャンペーンが適用されます。

とあります。そのほか、細々とした条件があるようなので、皆さん確認してください。
さて、修復歴なし、走行距離 5万km 未満で探しても、今日の時点で 43.2万円(税込)からあります。
充電容量も10セグメント(最大12セグメント)あるそうなので、100km ぐらいの走行距離は期待できるかもしれません。
自宅に充電設備がなくても、近くに日産販売店やショッピングモールなどであれば、急速充電器が設置されていたりします。

原チャリとまではいきませんが、128cc〜250cc の小型バイクより少し高いぐらいの価格です。
何より小型バイクと違って、屋根があります!
そして同乗者が四人まで乗れます!

毎日の家族の送迎、近距離の車通勤なら最適ではないでしょうか。
10km/日程度であれば、1週間に1度、急速充電器で充電すれば十分です。

問題は、そのどちらの用途も私には必要ないという点なんですけどね。
Posted at 2018/05/27 19:07:33 | コメント(0) | トラックバック(0) | | クルマ
2018年05月17日 イイね!

アンドロイドは EV シフトの夢を見るか

4月21日、22日の両日、マツダの催し物があり、行ってきました。

「サステイナブル“Zoom-Zoom”フォーラム2018 in横浜」をマツダR&Dセンター横浜にて開催
http://www2.mazda.com/ja/publicity/release/2018/201804/180412a.html



一番の目的はマツダ株式会社常務執行役員・シニア技術開発フェローの人見光男氏のセミナーです。

  「エンジン革新が実現するサステイナブル社会」
  常務執行役員・シニア技術開発フェロー 人見光夫

人見さんの主張を一言で言えば、「EVは決してエコではない」ということです。
EV は電気で動くので、CO2 を排出しないと一般的に思われています。
それは嘘ではないのですが、電気を作り出す発電は CO2 を排出する火力発電が多くを占めています。
太陽光も、太陽電池パネルを作る過程で CO2 を排出しています。
そういった一切合切(Well to Wheel)を考慮すれば、EV は決してエコではないという主張です。

 EVならクリーン? マツダのMr.エンジンと考えてみた
 https://style.nikkei.com/article/DGXMZO22335320X11C17A0000000

まあ、これは今に始まったことではなく、2015年にもマツダは同じことを言っています。

 電気よりエンジン マツダが挑むエコカー戦略
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO85760230W5A410C1000000/

しかし VW のディーゼルゲート事件から、ディーゼルへの風向きは一気に逆風となり、ドイツも中国も米国も EV へとまっしぐらに進んでいるように見えます。

 世界で加速“EVシフト”~日本はどうなる?~
 https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4046/

世界で今、ガソリンやディーゼル車から電気自動車に移行する“EVシフト”が加速している。主導しているのはヨーロッパと中国だ。ディーゼル車の不正の後、巻き返しをはかろうと電気自動車に力を入れるドイツのメーカー。大気汚染対策と産業育成のねらいから国を挙げて電気自動車の普及を進める中国。世界で急速に進むこの変化に、多くの雇用を抱える日本の自動車産業はどう対応するのか。欧州、中国、日本の最前線の動きを追う。


しかし、マツダの藤原清志専務は面白いことを言っています。

 えっ、2019年に欧州で、アレが大復活?!
 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/194452/013100167/

 藤:ということで私は、2019年ぐらいに、欧州メーカーはもう1回ディーゼルを復活させると見ています


藤原専務は個人的な予測と断りを入れながらも、2019年までに欧州でディーゼルが復活するのではないかと考えているようです。
その予測を裏切らず、ボッシュはディーゼル復権へと動き出しています。

 ボッシュ、ディーゼル復権へ新技術
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29828430V20C18A4TJ2000/

 ディーゼルの未来を変えるか? ボッシュの革新的なディーゼル技術でNOxを規制値の1/10に
 https://motor-fan.jp/tech/10004025

さて、私個人としては CO2 の排出量なんて考えて車を買いません。
消費者にとってのエコとは、あくまで自分がお金を支払う部分の経済性であって、車両価格や燃費の良さだったりする訳です。
ただし、EV の問題はそれだけではなく、忘れてはいけないのは、電池の劣化と、それによる下取り価格の大幅な下落です。
先程の藤原専務のインタビューでも次のようなやりとりがあります。

F:端的に言うと、リーフのことですね。日本の中古市場では散々です。中古はもう激安の叩き売り状態。

 藤:具体的な車種名の言及は避けますが……。あのレンジの中古が安いのは、日本に限ったことではありません。米国でも安い。あちらではだいたい3年乗ると、普通のガソリンエンジン車の下取りで40%から45%ぐらいまで落ちるのですが、真ん中あたりのレンジのEVだと、もう10数%まで落ちてしまいます。


ある方から、中古車の登録データをエクセルで集計する方法を教えていただいたので、本日(2018年5月17日)時点のカーセンサーの登録データで検証してみました。

 ・ アクセラ 2.2XD(14年〜16年登録車) 新車価格 298.2万円(税込) 登録83件
 ・ リーフ X (14〜15年登録車) 新車価格 329.3万円(税込) 登録45件
 ・ リーフ 30kWh X (15〜16年登録車) 新車価格 364.8万円(税込) 登録90件



縦軸が車両販売価格、横軸が走行距離です。どの車もそうですが、走行距離の長い車ほど、車両販売価格が下落しています。
しかし、一目見れば分かる通り、新車価格が 330万円〜365万円の EV が、たった 2〜4年で新車価格 300万円のアクセラ 22XD を大きく下回る中古車販売価格まで下落しています。
中古車販売価格が下落しているということは、買取価格もそれに合わせて下落しているということです。

EV の新車価格のほとんどは、「必ず劣化する電池」が占めていますから、電池の劣化の「不安」によりリセールバリューが大きく失われるという訳です。

ということで人見さん、現時点の普及価格帯 EV の問題点としては、CO2 排出量よりもリセールバリューの低下の方が、消費者とっては、ずっとわかりやすいですよ。

Posted at 2018/05/17 23:36:26 | コメント(3) | トラックバック(0) | | クルマ
2018年04月14日 イイね!

SKYACTIV-D 1.8 の夢を見ました

今日、SKYACTIV-D 1.8 エンジンの夢をみました。

ボアストローク:79.0×89.6(2.2D や 1.5D と同じボアストローク比 1:1.09)
圧縮比:14.8(1.5D と同様)
最大出力:85kW(116馬力)/4000回転時
最大トルク:270Nm(27.5kmf・m)/1600-2600回転時

特徴:
急速多段燃焼を採用
インジェクタは G4.5S! 18/5/17 追記 ピエゾインジェクタ(G4P)でした!
・可変ジオメトリーターボチャージャーは大口径化をし、高回転時にも高い加給効率を維持できるようになった結果、最大出力も116馬力と向上しました。(1.5D は 105馬力)

270Nm の上限は、トランスミッションの制限によるものだと思います。
多分、アクセラにもこの SKYACTIV-D 1.8 が採用されるでしょうね。
CX-3 のガソリンエンジンの 20S も 10kg ほど増加している様なので、1.8D による重量増は実質的には 20kg でしょうか。
この 20kg ほどの増加で、2.2D との差が小さくなる分、悩む人も増えるかと思います。

ともかく、CX-8、そして CX-5 に採用された急速多段燃焼は、小排気量版の SKYACTIV-D 1.8 にも展開されるようで楽しみです。残念なのは SKYACTIV-D 1.5 が廃止になるであろうという点。
アクセラ 15XD を選んだ理由は、以前に4回に分けて記事にしました。

 アクセラ15XDを選ぶ理由(1)
 アクセラ15XDを選ぶ理由(2)
 アクセラ15XDを選ぶ理由(3)
 アクセラ15XDを選ぶ理由(4)

多くの特長は SKYACTIV-D 1.8 にも引き継がれますが、私としては「ディーゼル版過給ダウンサイジング」とも言える SKYACTIV-D 1.5 に非常に満足しているだけに、1.8L へと大排気量化することについては少し残念です。

さて、これらは夢の話ですので、正確性について保証しませんので悪しからず。
Posted at 2018/04/14 21:47:53 | コメント(3) | トラックバック(0) | | クルマ
2018年04月02日 イイね!

インジェクタの進化とマツダの関わり

以前に言及した通り、デンソーのインジェクタ開発にマツダが密接に関係していること、そして次世代のインジェクタである G4.5S について紹介したいと思います。

■マツダとデンソーによるコモンレールシステム開発

BOCSH が 1930年に開発したジャーク式と呼ばれる従来式噴射系を、デンソーは長らく生産していましたが、1995年、世界で初めてコモンレールの量産化に成功しました。
しかし、それは日野の中型トラック向けのたった100台の限定生産でしかありませんでした。

その後、欧州では BOSCH が第1世代乗用車用コモンレール(135MPa)を 1997 年に生産開始して、徐々にディーゼル市場を拡大していく中、デンソーが第1世代の乗用車用コモンレールの生産に漕ぎ着けたのは 1999 年、BOSCH 社に遅れること、2年という状況でした。

これも日本市場だけ見れば、ディーゼル乗用車のシェアは 0% に近い状態が続いていたこともあり、デンソーの開発者曰く「我々の意識の中には全くなかった」という状況だった様です。
しかしデンソー社内の営業側からの強い要請で、180MPa の第2世代乗用車用コモンレールの開発が始まりました。

180MPa を実現する技術的ハードルをどうにかクリアし、欧州拡販の準備は整いつつあった中、マツダが 2002 年モデルのディーゼル車にデンソー製コモンレールシステムの搭載を強く要望してきたのが、マツダとデンソーの関係の始まりでした。

デンソーも BOCSH の後塵を拝している身、いきなり欧州メーカー向けで開発をするよりも、日本語が通じる国内メーカー相手に開発をしたいと考えていたところであった様です。
しかもマツダはデンソーに対しての要求が非常に柔軟で、デンソーとしても当初は疑問を持ったとのこと。(その部分を後述のデンソー開発者の資料から抜粋)

『さらに有り難かったのは,「第 2 世代の開発」が「途上」であることを十分考慮して頂いた。つまり,「第 2 世代」を開発状況に応じて,エンジン・クルマでカバーするか, 「第 2 世代」の開発に参画して,アイデアも出すというのであった。加えて生産開始後の他社拡販に対して,何の制限も要求されなかったのである。ただし,その反面「疑問」は残った。何故そこまで,「我々」に一歩譲るのか?欧州市場ならば,何故「BOSCH コモンレール」でエンジン開発を行わないのか?当時欧州メーカーは,2002 年モデル(EURO3 規制対応)でも「インセンティブ(税の軽減措置)」を得るために,「2005 年 EURO4 規制」達成を目指していた。この厳しい「EURO4 規制」に対応するため,高価な後処理「DPF」を装着して「PM」を低減することが「標準」と考えられていた。』


ではなぜマツダは、デンソーに対して高い要求をしながらも、仕様や契約で縛ることをせず、開発途上であることも配慮したのか、その答えがここにあります。

『先ず,メーカーの技術者は「アイドル音をもっと静かにしたい。」とだけ言ってきた。一般には,アイドル時に「パイロット噴射」を適用して燃焼音を低減するが,彼らは多段噴射(5 回分割噴射,ただし生産時には 3 段パイロット噴射,つまり 4 回噴射に変更された)を導入したいという申し入れだっ た。何故それほどまでに「アイドル音」に拘るのか,その時は理解できなかった。ただ,試験車のアイドル音を聞かされた時はさすがに驚いた。「伊藤さん,このエンジン音を聞いて下さい。このディーゼルアイドル音は,世界中どこにもない音色ですよ。これを生産したい」。確かに,これまで聞いてきた「ディーゼルアイドル音」とはまるで次元が違っていた。だが,「問題」はここからである。彼らの微小噴射量の精度要求値を聞いて驚いた。「噴射量精度を”1±0.5mm3/st”にできませんか」。その時の私の答えは,即座に「NO!」であった。噴射量のイメージがない方々には,いつもこの例で説明する。2L のディーゼルエンジンの最高出力点での噴射量は「約 50mm3/st 程度」で,これは「耳かき1杯に相当」する。今回の精度要求値は,その「100 分の 1」というとんでもない「微小量」なのである。インジェクター部品の加工精度,選択嵌合組み付けを駆使しても,当時我々の噴射量精度の実力は,レール圧= 25MPa(アイドル時)で,「2±1mm3/st」程度であった。レール圧が上がれば,さらに拡がる。広島のエンジン実験棟の会議室で,その当時でも珍しい”黒板”に白のチョークで書いて説明した覚えがある。「アイドル時の噴射量精度向上ができれば,実はその結果を”排ガスモード領域の高圧領域まで展開” したいと考えている。」(ちょっと待てよ,”高圧領域への展開”・・・?)「第 2 世代」を欲しがり,「微小噴射量精度の向上」を要求してきた理由が,ここに来てやっと理解できた。「DPF 無しで EURO4 規制をクリア」することを彼らは「研究」ではなく,「開発」のレベルで実証していたのであった。それには 「160MPa より高圧な”第 2 世代 180MPa”と”微小噴射量の精度向上”」がどうしても必要だった。「高圧噴射特性」の適用を拡大して,「DPF 無しで EURO4 規制をクリア」できたとしても,最後に残る大きな問題は,「高圧噴射特性によるエンジン燃焼音の増大」である。その「燃焼音」を和らげるには,微小噴射精度が高い「パイロット(プレ)噴射」が必要となる。広島のエンジン開発者は,「その事」を既に「BOSCH160MPa」「第 2 世代」の両方を駆使して 「データ」として掴んでいたのだ。彼らは従来の「噴射系の呪縛」から解き放たれ,「コモンレール」を面白いように駆使し始めていたのであった。』


そして、その開発努力は結果に表れました。

『生産計画に対して半年程遅れたが,2002 年 3 月広島で生産開始され,5-6 月に欧州で販売開始された。このクルマは欧州のエンジンメーカー,一般顧客にも高い評判を呼んだ。特に,「DPF 無しで EURO4 規制クリア(この精神は今でもこのメーカーには残っている)」は専門家を驚かせた。最大 180MPa とする高噴射圧特性を適用しているのもかかわらず,高精度のパイロット噴射により最近の欧州エンジンよりも静かであること,とりわけアイドル音の静けさは,欧州の一般ユーザーを喜ばせた。広島のエンジンメーカーは 30 を超える”賞”を「エンジン」「クルマ」で頂いたと聞いている。我々も「2002 年度日刊工業新聞十大新製品」の一つに選出された。翌年には「トヨタプリウス」が選ばれるという,非常に名誉ある賞であった。』


これが SKYACTIV-D の前身となる、マツダ初のコモンレールディーゼルエンジン、MRZ-CD エンジンになります。
MRZ-CD エンジンに関しては、2002年のマツダ技報に掲載されています。

2002年以前マツダ技報
http://www.mazda.com/ja/innovation/technology/gihou/2002/

◎排気エミッションは D4(Euro4)相当



◎パイロット予混合

従来よりもパイロット噴射を早め、予混合時間を十分に確保することで、燃料と酸素をよく混ぜ合わせ、PM(煤)の発生を低減




(新型 SKYACTIV-D 2.2 では、インジェクタの性能向上により予混合時間を長く取らなくても燃料と酸素をよく混ぜ合わせることが可能になり、全く逆の発想で急速多段燃焼を実現したのが興味深いですね)

◎4段燃料噴射(1回の燃焼で4回噴射)による多段燃焼




◎そして微少噴射量学習



これらの技術は SKYACTIV-D でも一部改善されながらも採用されています。
ディーゼルエンジン開発に関して、マツダは長い歴史と高い技術力を持っていることがわかります。

■ディーゼル燃料噴射装置の現状と将来

第2世代インジェクタを開発した "私のコモンレール開発物語(1994年-2003年)" の著者である伊藤昇平さんは、ディーゼルの将来性についてはあまり肯定的ではないようです。
しかし、デンソーでは伊藤さん引退後も、しっかりと技術開発を進めています。

第3世代インジェクタ(G3S)では、さらなる高圧化による燃料の微細化を実現し、ノズルの駆動方式をソレノイドからピエゾに変更したピエゾインジェクタ(G3P)も開発しています。2013年からは燃料噴射圧 250MPa、高精度に噴射量を制御できる i-Art を搭載した第4世代ソレノイドインジェクタ(G4S)を量産化し、マツダやトヨタだけではなく、ボルボなど欧州メーカーにも採用されました。そして新型 SKYACTIV-D 2.2 では第4世代ピエゾインジェクタ(G4P)が採用され、急速多段燃焼が実用化されました。

この辺りの一連の流れを書いたのが、これらの記事です。

 インジェクターの燃料噴射量補正について
 https://minkara.carview.co.jp/userid/2738704/blog/39497846/

 新型 SKYACTIV-D 2.2 に採用された第4世代インジェクタ
 https://minkara.carview.co.jp/userid/2738704/blog/41132084/

 インジェクタの進化
 https://minkara.carview.co.jp/userid/2738704/blog/41147708/

まずは改めて第4世代ソレノイドインジェクタ(G4S)の特徴を列挙します。

 ◯燃料噴射圧を 200MPa(2000気圧)から 250MPa(2500気圧)に高圧化
 ◯圧力センサをインジェクタに内蔵し、 高精度に噴射量を制御(i-Art)

これらは以前の記事で紹介しましたが、さらに付け加えたいのが、

 ◯燃料ロバスト性を向上
 ◯インジェクタリーク最小化

になります。
燃料ロバスト性とは、多様な燃料に対応するという意味で、地域によって軽油の性状が異なるばかりではなく、欧州ではバイオディーゼル(Bio Diesel Fuel、以下BDF)と呼ばれる、菜種油や廃食用油などをメチルエステル化して製造された、ディーゼルエンジン用のバイオ燃料などもあります。
化石燃料を浪費しないだけではなく、BDF自体には硫黄分酸化物をほとんど含まないため、軽油と比較して硫黄酸化物(SOx)や PM(煤)の排出を減少できるというメリットもあります。
BDFの原料が食料資源とも競合する、水分を含む不純物の除去が不十分、という指摘もあり、賛否両論ありますが、そういった多様な燃料を使っても、デポジットの発生や焼き付きなどを起きにくくしたのが、「燃料ロバスト性を向上」になります。

そして今回、わかりやすく紹介したいのが、インジェクタリークの最小化です。

まず、前述の通り、燃料を噴射するインジェクタには、ソレノイドインジェクタと、ピエゾインジェクタの2種類があります。
SKYACTIV-D 2.2 ではピエゾインジェクタが、SKYACTIV-D 1.5 ではソレノイドインジェクタが採用されており、ソレノイドインジェクタは安価で長寿命で駆動電圧が低いというメリットがありますが、高圧な燃料の噴射をオン/オフするには、駆動力が高いピエゾインジェクタが有利でした。

駆動力が低いソレノイドインジェクタは、噴射口を開け閉めするノズルニードルを閉じる力が不十分で、それを補うために高圧な燃料の圧力を利用しています。この構造のために、ノズルを開閉する度に、微少な燃料が漏れ、噴射量が変動するのをどうしても防げません。この燃料の漏れを静リーク(Static Leakage)と呼びます。

また、ノズルニードル開閉時に発生する燃料の漏れをスイッチングリーク(Switching leakage)と呼びます。

第4世代ソレノイドインジェクタ(G4S)では、この静リークをゼロに、そしてスイッチングリークをピエゾインジェクタと同等まで抑えることに成功しています。



また静リークは摺動部からの漏れなので、時間経過とともにリーク量が増加する問題がありましたが、第4世代ソレノイドインジェクタ(G4S)では、全体のリーク量に経時的変化がなく、リーク量も従来のピエゾインジェクタと同等になっています。



さらに、資料をもう1つ。
金沢大学の博士論文、コモンレールシステム用インジェクタにおける 高圧燃料噴射機構に関する研究から抜粋です。
この論文、はっきり言って内容は第4世代ソレノイドインジェクタの開発についてです。



第4世代インジェクタの新しい構造は、リーク量を減らしただけではなく、燃料噴射時のばらつきも大きく減らしています。

また、噴射開始時の立ち上がりが早くなっています。



この結果、燃料をより細かくして噴射できます。



このような改善が進められた結果、G4S は SKYACTIV-D 1.5 で採用されています。(ただし i-Art などはなし)
実はデンソーは、その第4世代ソレノイドインジェクタ(G4S)をさらに進化させた、第4世代ピエゾインジェクタ(G4P)および第4.5世代ソレノイドインジェクタ(G4.5S)を開発しています。

◎高矩形噴射による燃焼速度向上

これらの G4.5S および G4P では、噴射のキレ、つまり噴射開始後、即座に燃料が高圧で噴射できるように改良されています。



G4S にくらべ、G4.5S および G4P では噴射開始後、即座に噴射量(Injection rate)が上昇しているのがわかるかと思います。

◎高速微小量マルチ噴射による着火性能向上

また、噴射と噴射の間に噴射できない時間(無機能期間)が必要でしたが、第3世代ソレノイドインジェクタ(G3S)や G4S の最小噴射インターバル 0.2ms に対し,G4.5S インジェクタでは 0.1ms,G4P インジェクタで は限りなくゼロに近い噴射インターバルを達成しました。



マツダは新型 SKYACTIV-D 2.2 で G4P を採用し、急速多段燃焼を実現しましたが、これは最小噴射インターバル 0.1ms でエンジン設計されているようです。従来の SKYACTIV-D は 0.2ms でエンジン設計されており、第3世代ピエゾインジェクタ(G3P) の噴射インターバル 0.1ms と比べると余裕がありますが、燃焼制御をソレノイドインジェクタ(G3S/G4S) の性能に合わせたのかもしれません。(コモンアーキテクチャ)

ともかく、G4S の最小噴射インターバル 0.2ms は急速多段燃焼には不十分ですから、マツダからの要求で、デンソーは第4世代ソレノイドインジェクタを、G4S から G4.5S へ進化させたのではないでしょうか。

◎高拡散噴霧による空気利用率の向上

これは以前にも書きましたが、低負荷時の低噴射圧時は噴霧拡散となり、高噴射圧時は従来通りの長い噴霧長となる
Controlled Diffusive Spray Nozzle (CDS Nozzle) のことです。
SKYACTIV-D 1.5 に採用された G4S から採用されていますが、噴霧口の形状が改善されているようです。



長くなりましたが、次世代 SKYACTIV-D 1.5 では、第4.5世代ソレノイドインジェクタが採用されるのはほぼ間違いないと思っています。

急速多段燃焼によるノイズの低減は CX-8 や CX-5 で明らかなので、小排気量ディーゼルでも是非とも実現してほしいですね。

今回紹介した内容は、

JSAE エンジンレビュー
特集: エンジンの燃料噴射
Vol. 6 No. 4 2016
https://www.jsae.or.jp/engine_rev/docu/enginereview_06_04.pdf

 ◎ 私のコモンレール開発物語(1994年-2003年) p19-
 ◎ ディーゼル燃料噴射装置の現状と将来 p31-

になります。詳細はこれらの資料を是非読んでみてください。
Posted at 2018/04/02 01:46:27 | コメント(5) | トラックバック(0) | | クルマ
2018年02月24日 イイね!

インジェクタの進化

先日の記事、

 新型 SKYACTIV-D 2.2 に採用された第4世代インジェクタ
 https://minkara.carview.co.jp/userid/2738704/blog/41132084/

では SKYACTIV-D 2.2 で実現された急速多段燃焼と第4世代インジェクタについて書きました。
現代のディーゼルエンジンではインジェクタが重要なキーテクノロジーですが、そのインジェクタの進化を知るには、2010年に日本燃焼学会誌に掲載されたデンソーの論文がおすすめです。

 燃料噴射系製品のこれまでの歩みと将来の展望
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcombsj/52/161/52_189/_pdf

これを読めば分かる通り、デンソーは1995年に「世界で初めて」コモンレールシステムを量産化、当時は最高噴射圧が 120MPa、マルチ噴射回数が2回であったものが、2007年の第3世代ピエゾインジェクタ(以前の 2.2D で採用されたインジェクタ)では、200MPa、マルチ噴射9回に進化しています。

この様に最高噴射圧やマルチ噴射回数の向上がなぜ求められるのか、その大きな要因の1つは NOx と煤(スス、以下 PM)の低減です。



これは以前のブログでも示した図ですが、この様に細かい霧状の噴霧になれば、酸素とよく混じり、NOx や PM の低減につながるということです。

余談ですが、物知り顔で「SKYACTIV-D は NOx を減らす代わりに PM が増えた」と言う人がいますが、これは嘘です。
酸素が過剰だと NOx が増え、酸素が過少だと NOx が減る代わりに PM が増える」という EGR を使った NOx 低減策だけを知ったかぶりして語っているだけで、SKYACTIV-D も含めてディーゼルエンジンは NOx も PM も同時に減らす様に進化しています。

それを実現するために重要なのが「酸素と燃料をよく混ぜる」ということであり、その技術の1つが噴射圧の高圧化、そして SKYACTIV-D で採用されたのが 14.0 という低圧縮比です。

では、その噴霧圧の高圧化によってどの程度細かな霧状になるのかを示したのが次の図です。



グラフの横軸は噴霧圧、縦軸は燃料の平均粒径(小さいほど細かな霧状になっている)です。
このグラフを見ると、100MPa 以下では 20um を超える平均粒径ですが、135MPa になると 15um を切り、160MPa を超えると 10um を切る様です。
噴霧圧の高圧化が平均粒径の低下につながるのはこの通り明確ですが、逆に言えば高圧化されればされるほど改善幅は小さいこともわかります。
新型 SKYACTIV-D 2.2 では、低負荷時の噴射圧は 100MPa 以下から 150MPa に向上しながら、最高噴射圧は 200MPa のままである理由も理解できるかと思います。

さて、高噴射圧によって NOx と PM が低減するのは良いのですが、逆に大きくなるのが騒音です。それを低減するための技術が「マルチ噴射回数の向上」です。



Single Injection、つまりマルチ噴射をしない1回の噴射では、Heat Release Ratio(熱発生率)が急激に上がります。つまり短い時間に一度に燃焼していることになります。
w/Pilot Injection、つまりパイロットインジェクションを含む2回噴射では、Single Injection よりも熱発生率のピークが下がり、ゆっくり燃焼していることがわかります。
さらに 5-Times Injection、つまり5回噴射では、熱発生率のピークは大幅に下がり、なおかつ、よりゆっくり燃焼していることがわかります。

これにより、図の下側で示すように、アイドリング状態ではパイロット噴射と比較して5回噴射では -5dB も騒音が下がっています。またこれは騒音対策だけではなく、熱発生率が低く、ゆっくり燃焼することで、NOx や PM の低減にもつながります。

この後、このインジェクタの進化にマツダはどう関わったのか、そして最新の第4.5世代インジェクタ(G4.5S)の話に持って行きたかったのですが、力尽きました。

この辺りはまた後日。
Posted at 2018/02/26 17:18:34 | コメント(1) | トラックバック(0) | | クルマ

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