以前に SKYACTIV-X に触れた記事を書きました。
ヴィッツとデミオと SKYACTIV-X と多段AT
https://minkara.carview.co.jp/userid/2738704/blog/41959002/
ただ、他社との比較や多段ATに絡めて、いつもの通り思いついたことをグダグダ書いているので、わかりにくい。
もっとシンプルに SKYACTIV-X って何がすごいの?
という質問をリアルにいただいたので、できるだけわかりやすく記事にしようかと思った次第です。
- エンジン単体の燃費率は現行の「SKYACTIV-G」と比べて最大で20~30%程度改善
- 2008年時点の同一排気量の当社ガソリンエンジンから、35~45%の改善
- 最新の「SKYACTIV-D」と同等以上の燃費率
これが SKYACTIV-X の特長を並べたものです。
でもピンとこない人は多いと思います。
まず、SKYACTIV-G や、それ以前の MZR エンジン、そして SKYACTIV-D との燃費の良さの比較です。
縦軸は燃費の良さ、横軸はエンジンの出力(トルク)だと思ってください。
旧MZRエンジンと現行 SKYACTIV-G では 900kPa 以上がカットされていますが、それはそれ以降は燃費がどんどん悪くなるからです。(詳しくは
こちら)
そして新しいエンジンになればなるほど、「燃費の良い領域が軽負荷領域まで下がって」「燃費の良い領域が広くなる」というのがわかると思います。
軽負荷でも燃費が良いというのは、エンジンに負荷がかからない状態、つまり回転数が高い状態で一定速で走っても燃費が良いということです。
また、燃費の良い領域が広いということは、元気の良い走りをしても燃費が悪化しないということです。
では、これがどういうメリットにつながるのか
この通り、従来のエンジンでは 100km/h 走行時に 2300回転だと緑の領域、それを3000回転まで上げると濃い緑の領域になって、燃費が悪くなります。回転数を下げると燃費が良くなると感じるのはこういう理由です。
これに対して、SKYACTIV-X では 100km/h 走行時に 2300回転でも 3000回転でも黄色の燃費の良い領域で走行できるということになります。燃費を良くするために回転数を下げる必要がありません。
両者を比べてみると、従来のエンジンで 100km/h を 2300回転で走行するより、SKYACTIV-X で 3000回転で走行した方が燃費が良いということになります。
では、ギヤ比を下げて高回転にするとどういうメリットがあるのか。
ダウンサイジングターボよりも高い加速力を得ることができます。
簡単に言えば、常時スポーツモードで走っている様なものです。
SKYATIV-D 1.5/1.8 に乗っている人はわかると思いますが、そういったエンジンの力強さを感じることができるかと思います。欧州市場では、競合車の多くがターボ車ですから、競争上、大きなメリットになるかと思います。
さて、最新の「SKYACTIV-D」と同等以上の燃費率と謳っていますが、最初のグラフを見てわかる通り、燃費はディーゼルと大きな差はないはずです。ではディーゼルと比べて何が良いかといえば、
アクセルに対する反応の良さ(ターボラグがない)と、高回転まで回した時の気持ち良さ、ということになるでしょう。
そして日本市場で重要なのがもう1つ。
日本市場では SKYACTIV-G はイマイチ評価されませんでした。アクセラでも SKYACTIV-G 2.0 が廃止されて SKYACTIV-D 1.5 になりましたしね。
その大きな要因は、日本ではレギュラーガソリン(91RON)対応だったということ。欧州はハイオク(95RON)なので、同じ SKYACTIV-G 2.0 でも結構性能が違います。SKYACTIV-G の性能を最大限発揮するには、実はハイオクが必要だったということです。日本向け SKYACTIV-G が圧縮比13、欧州向けが圧縮比14だったことでもわかります。
しかし、SKYACTIV-X では、トルク曲線に多少差はあるものの、SKYACTIV-G ほどの差はなさそうです。
つまり、こういうことです。

(2015年
SKYACTIV 開発と今後の展望より抜粋)
理屈的にはこんな感じです。
本当にそれが実現したのかどうかは、試乗してのお楽しみですね。
以下はコメント欄に対する余談です。
■追記:ディーゼル並みの初期応答性
ガソリンエンジンと違いスロットルは開いたままなので(リーン燃焼=空気を入れても燃焼できる=空気を絞る必要がない=吸気抵抗がない)、ディーゼルの様な応答性が楽しめるそうです。
■追記:高負荷時はEGRではなく新気を増やしてリーンバーンを維持する
下図で高負荷時のEGRと空気の色が濃いのは、高負荷時では中負荷時の状態に加え、空気をより多く詰め込むことで、リーンバーンを維持しているという説明だと理解しています。
これが高応答エア供給機とよばれるスーパーチャージャーが必要な理由ですね。
これが2014年頃の発表資料ですが、当時の開発状況では、SKYACTIV-G2(SKYACTIV-X)の高負荷領域では燃費が落ちるのがわかります。燃費が良い領域を高負荷領域まで広げたいとしています。
そして一昨年の発表では、高負荷域まで燃費が良い領域が広がっているのが分かると思います。
これが高応答エア供給機の威力ではないかと。
Posted at 2019/03/04 00:30:46 | |
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