登山日:2023.5.3
まずは1/2(前編)からご覧ください。
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白糸の滝分岐から登り進むと、やがて目の前は見渡す限りのブナの森となりました。
T君と私は思わず感嘆の声を上げました。凄ェ!こんなの見たことがない!秋田の山にはいくらでもブナの森はありますが、大抵の場合斜面に生えております。
ところがここはどうですか!平坦な地面に生えています。適度な木と木の間隔で開放感があり、他の山では感じたことのない、癒やし、安らぎ、平和、爽快などなど、ポジティブな雰囲気に包まれます。
もちろん他の山でもこのような光景は見ることが出来るかもしれませんが、秋田で登山道がこのような場所を通っている場所は、私は寡聞にして存じません。
ここのポイント名称は、文字通り「ブナ見平」と言います。
そこには苦労して自分の脚で訪れた者にしか味わえない光景が広がっておりました。
これぞ登山のの醍醐味です。このような感動が時々あるので苦労をいとわずまた山に登りたくなってしまうのであります。
この感動は写真では決して伝えられないのが残念です。
今は春の若葉の頃。まだまだブナの葉っぱが大きくなっておらず、そのため空が見え、閉塞感が少ないというのも良かったです。ここで小休止し、ブナに浸りました。
時々残雪があります。地上の天の川を埋め尽くす星の数々はブナの実です。熊の大好物です。
ブナ見平を過ぎると稜線に出ました。前方には同じ山域の真昼岳が見えます。
登りです。脚は限界に近いですが、一歩また一歩、前進します。
手前のピークに来ました。やっと山頂に着いたと思ったのですが、前方に真の山頂が現れがっかりしました。まだまだ相当標高を稼ぐ必要があり、泣きたくなります。
鞍部へ下りていきます。
そして鞍部到着。ここからすぐに登りになると思いきや、山の右側の平坦な道を進んでいきます。そして分岐に出ました。
岩手県側からの登山客とはここで合流するようですが、今日は誰も居ませんでした。結局下山まで誰とも合わず、贅沢な貸切状態でした。
ここからは急登となります。息も絶え絶えで、脚も心臓も音を上げています。
一応つづら折りにはなっておりますが、殆ど直登に感じます。
ここで山麓の祭りの号砲が連発で轟きました。まるでチャイコフスキーの「序曲・1812年」のフィナーレのようです。
時節柄不謹慎なような気がしないでもないですが、素直にそう思いました。歓喜に包まれつつ、励まされるように気合いを入れ直します。
そして前方に何か見えてきました。
顔色の蒼い人に笑顔で迎えられました。反対面には「ゴミは持ち帰りましょう」との文字が書かれていました。
そしてようやく女神山山頂に達しました。標高955m、登山口から約6.3km、所要時間は約3時間30分、疲れ果てました。
このところ運動不足で、直近の検診では脂肪肝の疑いありと注意された私、筋肉はイミテーション・ゴールドになっているようです(?)。
秋田県側を背景に写真撮影。なぜか三角点らしき石柱が二つありました。
藪に近づいてもう一枚。真昼岳が指呼の間に望めます。T君は去年単独であそこからここまで縦走したとのことです。
ちなみに真昼岳は標高1,059mと、この山より若干高いですが、森林限界に達し木が生えていませんので、こことは比較にならない見事な眺望が楽しめます。
ゴメンね、去年の山と、また比べている…。
山頂部を離れて撮影。藪のない面積は狭いです。
岩手県側を撮影。こちらはある程度視界が開けています。
ザックを下ろし、お待ちかねの昼食タイム。本日のメニュー、T君はカレー味のカップラーメンとおにぎり2個でした。
私はかぼちゃスープとツナマヨおにぎり1個です。BGMはウグイスの鳴き声です。ホーホケキョの割合が2、ピヨピヨピヨの割合が8で、耳を楽しませてくれました。
こうして秋田の三浦友和ことT君と、ひと春の経験、蒼い時を過ごしました。
現在の時刻は13時30分、復路も往路と同じ登山道を辿ります。6.3kmの長丁場ですのでのんびりしていると日が暮れてしまいます。休憩もそこそこ、私気ままにハンドルきるの。
ブナ見平の手前、稜線から山中に入る分岐に差し掛かると、T君が「熊いだ!」と慌てた声を上げました。同時に熊よけの鈴を激しく鳴らします。三人模様の絶体絶命⁉
数十メートル先の残雪地帯に、確かに黒い物体が見えます。私は「ちょっと待って、プレイバック、プレイバック」と、鈴を鳴らし続ける彼を制し、追い払うのは写真を撮ってからにして、と言いました。
しかし時すでに遅し、こちらに気付いた熊は、右手の藪の中へと消え失せました。勝手にしやがれ、出て行くんだろ…。
ということで、写真は慌てて撮影したこの一枚のみでした。
熊はすぐに逃げてしまい残念でしたが、発見した時点でのT君の行動は正解です。
突然襲撃してくる可能性がありますし、もし子連れ熊であれば我々は死を覚悟せざるをえないものとなっていた可能性もありますので。
万が一不測の事態が起これば、三浦友和ならば「人間到る処洋服の青山有り」と言うに違いありません。
ちなみに私は登山を始めてから20年以上になりますが、山中での熊との邂逅は初めてです。静かな興奮に包まれました。
ブナに囲まれた森、ブナの実が溢れて、長い毛をなびかせ、君が歩いて行く…激しすぎる出会いの場面…危険な女神。
やがてブナ見平へと着きました。やっぱりここは素晴らしいです。清々しい気分で牛歩戦術しながら通過します。
横殴りの低木帯を通過します。
ようやく「湯田神社跡」まで戻って来ました。少し歩いて分岐の先に行ってみますと朽ちかけた神社がありました。
「跡」というからには更地になっているものと思っていましたが、社殿が残っていることに驚きました。
ここで柏手を打ち、最後の下山に入ります。
杉林をグングン下りていきます。
シダが輝いています。
やがて杉木立の間から、キラキラする水面が見えてきました。写真で伝えるのは難しいですが、フィナーレを迎えるのにふさわしい、私の下山の歴史の中で(?)、最も美しい光景でした。
日が当たれば、影が違う、色が違う、光が変わる…ごめんね?
最後の最後、急勾配の石段に怯えながら一步一步下り、登山口に帰還しました。時刻はちょうど16時、山頂から約2時間30分の行程でした。
帰り道、すぐそばの六郷温泉・あったか山に立ち寄り、日帰り入浴しました。
そして、シャワーのあとの、髪のしずくを、乾いたタオルで拭き取りながら、この地を後にしました。
最後に、小腹がすいた二人は、大仙市の市街地にあるラーメン屋「十郎兵衛」へ向かいました。
この店の一番人気だという塩ラーメンを食し、本日の山行を締めくくりました。
私にはちょうど良い量でしたが、大喰いのT君は物足りなさそうです。
これっきりこれっきりもう、これっきり〜ですか?と、彼の目が訴えていました…。
参考:(アプリの生データのコピペです。実際のデータとは誤差があります。)
2023-05-03 09:26:03~2023-05-03 16:00:50
合計時間: 6時間34分
平面距離: 13.77km
沿面距離: 14.19km
最高点の標高: 967m
最低点の標高: 207m
累積標高 (上り): 1179m
累積標高 (下り): 1163m
標高データの種類: GPS標高
最後のつぶやき:
・登山口までは殆ど舗装道路、最後に少し砂利道となる
・聞いたことのない野鳥の鳴き声がいくつか聴けた
・眺望を楽しむのならブナの葉が育つ前か枯れ落ちた後が最適
・山中にトイレなし、行き帰りに六郷温泉で借りるのが吉
・山口百恵の曲はどれも刺激的で素晴らしい