保育士試験の実技試験は、音楽、造形、言語の中から任意で二つ選択し、試験官の前で披露しなければなりません。どれを選択するかは受験申請書に予め記入しており、私は音楽と言語を選択しておりました。
ちなみに造形は指定時間内に提示されたテーマの描画となりますが、絵心のない私には極めて困難な課題であるため、選択に悩むまでもありませんでした。
音楽は課題曲2曲の弾き歌いとなります。今回は「おかあさん」(叙情的な中田喜直先生の名曲)と「アイアイ」(後年私が三菱アイに乗ることを暗示していたかのよう…)でした。私はピアノが弾けませんので、少しかじった経験のあるギターでチャレンジします。
とは言っても私の所持しているギターはおもちゃみたいなZO-3で、これでは流石に門前払いされてしまうような気がします。そのことをMさんに話すと、なんとMさんからヤイリ社の素敵なギターを貸してもらえることになりました。
その日から私は矢井田瞳と化し、暇さえあれば課題曲2曲を弾き語っていました。家人はさぞかし迷惑だったことと思います。
言語は提示されていた課題図書の中から「三びきのヤギのがらがらどん」選択しました。絵本を見ないで3分間で読み聞かせします。時間が足りなくても余ってしまっても減点となります。
絵本の内容を全て話すと確実にタイムオーバーになるため、要点のみ話すようアレンジしなければなりません。また幼児の興味を惹くよう、メリハリのある話し方が必要です。
こちらも暇さえあれば3分間きちんと計って練習していました。あるとき職場で無人となったタイミングを見計らって練習していたところ、同僚から「何してんの?」と声がかかり、答えに窮し顔から火が出たこともありました。
このように2つの課題の練習に明け暮れ、いよいよ本番の日を迎えました。会場は前回の筆記試験と同じ、聖園女子短期大学です。
本日の受験生は44名、うち男は私一人でした。ミーティングで諸注意を受けるとともに時間割が配られました。分刻みでどんどん捌かれていきます。
緊張の中、あっという間に言語の時間となりました。数人前となったタイミングで会場の教室前に待機させられました。他の受験生のお話が小さく聞こえて来ますが、ペースを乱される気がしてあえて聴かないようにしました。
そして自分の番です。二人組の試験官を前に、3歳児クラスの子供が15人ほどいると想定し、お話しします。
スタートの合図の後、猫撫で声のような優しい感じでお話を進めます。飽きるほど練習していたので全く淀みません。最後の「おしまい」と言い、ひと息ついたタイミングで制限時間の合図がありました。これは手応えありです。
続いて音楽受験者の控室に移ります。余裕のない顔をした女性陣が各自自分の世界に入り込み、紙製の鍵盤を机に置きシャドーピアノとでも言うのでしょうか、運指の練習をしております。
ギターで受験するのは私一人だけでしたので、それによりペースを乱されることはありませんでした。
そして自分の順番となり、音楽室へ向かいます。こちらも試験官は二人組でピリピリとした雰囲気です。早速課題曲の2曲を立て続けに弾き歌いし、無難に終わらせることが出来ました。
こうして全て出し尽くした後の開放感たるや。実技試験の合格率は8〜9割ということで、よっぽどのやらかしがなければ不合格にならないとのことで、ますはひと安心です。
後日手元に通知が郵送されてきました。50点満点中、言語は40点、音楽は34点でした。思いの外低得点でしたが、試験官から保育士になれる基準に達していると判断されたということで、喜びはひとしおてす。
早速保育士証発行の手続きをしますと、後日A4サイズの証書が送付されてきました。秋田の殿の署名があります。
さて、本試験をクリアしてみたものの、生活は何ひとつ変わりません。時間を費やし神経をすり減らしただけのような気がします。
将来転職することになったとしても、保育園側は、いくら人材不足といえどもこんなおじさんを雇用してくれるとは思いません。
でもいいのです、趣味ですから。今まで知らなかった世界を窺い知ることが出来たことに満足しております。
Posted at 2023/01/24 06:11:10 | |
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