街の遊撃手
のキャッチコピーは2代目いすゞジェミニですね。
今年3月に制作しました。

特段何かに秀でている訳ではなくその道のエキスパートほどでなくとも、何をやらせても卒なくこなせる多芸中庸の能力を備えた今時でいうジェネラリスト、今日では侮蔑的に器用貧乏とも呼びます。
何でも屋、遊撃手とも。現代では特に合理主義が絶対的で軽視されがちですが、組織の構成員としては不可欠な存在です。
ジェミニが街の遊撃手なら、帝国海軍にはそのメーカーと同名を冠する海の遊撃手とも言うべき艦がいました。それが、
長良型軽巡洋艦2番艦
五十鈴

(艦隊これくしょんより。五十鈴改ニ)
です。こちらはいすゞではなく、いすず。いそすずでもごじゅうすずでもなくです。平仮名にすると可愛い女性名ですね。ちなみに三十鈴と書けばみすずとこちらも女性名に。
戦艦少女Rにも実装。こちらの方がより史実の五十鈴の性格を再現しています。容姿も性格も艦これの五十鈴のような小生意気さがなく、こちらの方が個人的には好ましい。

1921年10月29日に浦賀船渠で進水の蠍座。
建造当初は平凡な5500t級軽巡洋艦の一隻に過ぎませんでした。
だがしかし、戦前において訓練艦としては優秀で多くの名艦長や名将を輩出しました。
五十鈴の歴代艦長の中には、
のちの聯合艦隊司令長官 山本五十六
のちの第二航空戦隊司令官 山口多聞
と、由緒ある艦です。
艦名の由来はいすゞ自動車が三重県五十鈴市であるなら、こちらはそこを流れる五十鈴川から。
日米開戦後は数多の海戦に参加する中で、空襲と潜水艦が大きな脅威となり、その対策に追われました。
多くの艦が、対艦戦闘力と引き換えに対空強化され、対潜強化された艦もいました。長良型軽巡洋艦ではそれが顕著で、明確な個性が生まれました。
その中で最も個性的なのが五十鈴です。
長良型は元々球磨型や川内型と同じく14糎単装砲7基7門を主砲としていましたが、配置の都合で実際の戦闘に使えるのは6門だけ、発射速度は悪くなく加害力も高いが平射砲であり、対空戦闘には不向きでした。そこで、長良は2基撤去して、そこに戦艦大和の副砲にも使われた12.7糎連装高角砲を装備する事で実質の加害力は据え置きに多少の防空能力が上がりました。川内型の那珂は1基交換で加害力も上げてますが、その分機銃数が減っています。
ところが、五十鈴は対空特化の防空巡洋艦として、対艦戦闘力を多少犠牲にして(実はこの高角砲の対艦威力は14糎砲に迫るものだったようで、数字上の性能より用兵側の評価が高く、艦これでも火力は同値)、思い切って14糎砲を全撤去、代わりに12.7糎連装高角砲3基装備したことで駆逐艦並みの砲火力に落ちたものの、空いたスペースに対空機銃をドッサリ載せました。
その数、九六式対空機銃三連装11基33門に単装5挺(8挺説あり)と、その弾幕は戦艦クラスとなりました。
それだけではなく、長良と同じく水上機とカタパルトを撤去した上で、索敵は21.22号水上電探と13号対空電探を装備する事で補い、対潜装備を搭載しました。搭載爆雷の数は90個。
雷撃力も他の5500t級軽巡洋艦と同じく、前後にあった53糎連装魚雷発射管を、前部を廃止して後部には61糎4連装魚雷発射管に換装しました。
まさに空潜一体の多用途巡洋艦、海の遊撃手となったのです。似たような防空巡洋艦としては、アメリカのアトランタ級軽巡洋艦、英国のダイドー級軽巡洋艦、フランスのド・グラース級軽巡洋艦などがあります。
しかし、防空能力こそ遺憾無く発揮したものの、何故かご自慢の対潜能力の割には、最期は1945年4月7日朝、潜水艦ガビラン、チャーの雷撃により撃沈されました。
ゲーム内ゆすちー鎮守府において、艦これでは最も私にドヤされて唯一バカ呼ばわりされている使えない防空対潜巡洋艦(多分相性が悪い。私の考える戦術と真逆の行動をよくするため、対潜は那珂か神風か潮か時雨、防空は秋月か涼月、熊野優先)。
ある海域の対潜哨戒で、先制雷撃を仕掛けてくるヨ級flagshipとカ級の組み合わせに当たった時、雷撃を受ける前に先制対潜攻撃が出来る五十鈴、
ゆすちー提督[ヨ級狙えよ]
五十鈴[五十鈴には丸見えよ!]ドャァ
カ級に爆雷が当たり撃沈
ゆすちー提督[ちょ、おまっ!]
ヨ級の先制雷撃が僚艦の駆逐艦白露改に直撃して大破。

ゆすちー提督[このバカ!確かに丸見えだわ、白露のパンツが。]
そしてちゃっかりヨ級も仕留めて五十鈴がMVPでドヤ顔
五十鈴[え、五十鈴が一番?あら、普通に当たり前だけど、いいんじゃない?]
良くないわ、白露に謝れ!
当たり前じゃないわ、先制対潜でヨ級仕留めてくれたら全員無傷だったわ!
確かに一番だわ、考えなし度合いでは。
と言った具合に、あまり真面目に戦ってくれません。砲撃戦も狙うべき駆逐艦そっちのけで、効かないのに戦艦を狙いたがるし、こやつの戦術思考には重大な欠陥があります。
???[これは少し厳しい躾が必要みたいですね。]
はい、是非ともお願いします、香取さん。(???で伏せた意味が仕事してない)
戦艦少女Rでは防空、対潜と言えば彼女ってくらい頼もしい存在です。ちゃんと分を弁えた合理的な立ち回りしてくれ勝ちだし。確率論ですが。それが前述の個人的評価に繋がるのです。戦艦少女Rやってなかったら危うく数少ない嫌いな帝国海軍艦になってました(汗)
ちなみに嫌いな帝国海軍艦ワースト4は
空母加賀
空母赤城
空母龍驤
潜水艦伊168
以下嫌いな艦なし。嫌いな基準は、日本人らしからぬ卑怯な戦法を取ったり、仲間をバカにしたり、同じ失敗ばかりしてまるで学習せず仲間を危険に晒したり、そもそも見た目が醜かったり、主に中の人の問題ですが。
比較のため、以前制作した軽巡長良
艦尾側から

艦首側から
今回、長良の時と同じく単ランナー完結だったので組み自体は非常に単純でしたが、1990年代のタミヤ製で考証が古いので新しい資料を基に改修しました。制作時間は6時間ほど。
艦上構造物の拡大

空中線は説明書を基にかなり凝りました。特に艦橋と第一煙突の間は蜘蛛の巣みたいに。
艦橋の形が長良と大きく違い、指令室は艦隊旗艦らしく装甲強化されています。
ウィキペディアでは単装機銃は5挺としていますが、キットには8挺あり、8挺説を採用して資料と独自考証を基に配置しています。
艦橋1階横には以前制作した重巡青葉の掃海具の余りを取り付けました。
艦首側から

長良とは本当に姉妹艦?と疑いたくなるほど似てません。
長良が佐世保海軍工廠グレイに対し、五十鈴は横須賀海軍工廠グレイにしました。
また今回訳があって甲板塗装のみMr.カラーの油性塗料を使用しています。他はいつも通りクレオスとタミヤの水性アクリル塗料です。
艦首の旗竿が再現されていなかったので自作です。
菊花紋章も無かったので、こちらは次回作(?)の艦で必ず余るのでパクってきました。
艦尾側から

爆雷棚など、再現されていない部分はピットロードの駆逐艦の余りを流用しました。後部マストの戦闘旗竿も再現。
艦尾部のデリックは以前制作した練習巡洋艦鹿島の余りを流用。
こちら側にも単装機銃を2挺搭載しています。
右舷側から

やっぱり大正ロマン溢れる英国調の艦影です。
後部マストの水上機用デリックのクレーンフックと、右舷魚雷発射管の後方から後部甲板に通じる廊下の支柱が再現されていなかったので、長良を参考に自作しました。
いつも思うのですが、こんなに高密度に空中線があれば、誤射事故とか無かったのかなと。その多くが電線なので絶対避けたいですけどね。
艦これの五十鈴はうちの鎮守府ではお粗末ですが、実艦は立派だったんです。