「うあああああああーーーーーーーーーーーーー‼」
砂防ダム下の水溜まりから大声を張り上げながら飛び出した俺は一目散に沢の下流に向かって走り出した…
相変わらず硫黄のような匂いが鼻をつく。
少し走った所でどうしても気になり止まって後ろを振り返った。
目を大きく見開きハアハアと肩で息をしながら後ろの砂防ダムを見上げた…(;゚Д゚)
眩しい程の日差しが差し込む水溜まりのキラキラした反射が砂防ダムの壁に幾つものウネウネとした陽だまりを作っていた。
見上げる俺の視界の端に黒いものが映った。
俺は目を凝らし見つめた…
砂防ダムの上… 左端の方…
黒いものが置いてある。
「ししまい⁉(獅子舞)……」
黒いシーサーのような顔に真っ白いたてがみ。
ただ砂防ダムの上にペタンと置かれている様だった。
「誰⁇」
無音状態の恐怖の中俺は震える声で尋ねた…
誰かのいたずらかと思ったのだ。
体の部分は見えない、真っ黒な顔に大きな目玉…剥きだした歯は金色で笑っているようにも見えた。
まるで金縛りにかかったような異様な空間の中で数秒間俺は謎の黒い獅子舞と見つめあった。
「プシュッ」
炭酸が抜けるような缶ビールの蓋を開けたような音とともに獅子舞はゆっくりと顔をこっちに向けた…
「い…生きてる⁉」
とたんに耳をつんざく周りの轟音‼((+_+))
「うわわわわわーー」
俺は思わず耳を塞ぎ身をかがめた。
だがそれは今までの無音状態から解放されずっと聞こえなかった風の音や沢の音蝉の鳴き声だと気づいて我に返った……(゜.゜)〈放心状態
「あっ‼ししまいは…??」
砂防ダムの上を見上げるともうどこにもその姿は無かった…
(こっちに来る⁉)( ;∀;)
俺は恐怖に震える足で立ち上がり水の入ったスニーカーをグシュグシュ言わせながら命がけで沢を下り走った。
もう悲鳴を上げる余裕もなく、これが夢なら覚めてくれと願いながら走った。
足元はまだ濃い霧のようなものが立ち込めていて良く見えないが構わず俺は走り続けた。
足場の悪い沢を全速力で下っていた俺はさっきから何度もこけそうになっていた。
それは岩の上を走るたびに何かを踏んで滑るのが原因だった。
そしてとうとう…
「ズリィィィィーーーーーガツン❕」
もう足の回転が限界なのと大きな岩の上で何かを踏み右足を大きく滑らせたことで俺は派手にスッ転んだ。
「痛ったああああ----!!」(´Д⊂ヽ
ゴロゴロと2回転程回り岩の下に投げ出された。
白い体操服をドロドロにしながら俺はしたたかにぶつけた右ひざを右手で押さえた。
指の隙間からは血がにじんでいた…
傷口がズキズキと痛んだ(:_;)
(今はそんなことより逃げなアカン!)
再び立ち上がろうとした時に霧のようなものが立ち込めるその下に何かがいるのに気づいた。
(何かいっぱい動いとる…)
そこで俺が目にしたものは無数の沢蟹だった。
今まで見たこともない体が黒くてハサミと足が異様に赤い沢蟹がウヨウヨとうごめいていた(基本的にこの辺の沢蟹は全体的に朱色)
(さっきから踏んでたのこれか…!汗)
転んですぐに立ち上がれない俺を取り囲むように異形の沢蟹はワサワサと動いていた…
(とにかく逃げなアカン)
そう思ったその時…
「プシュッ」
(またあの音や…)
周りを見渡す。
(けどアイツおらん…)
また硫黄のような匂いが濃くなった… その時
「プ・・・・・・」
(ん⁉)(´・ω・)
「プ・プ…ワッハッハーーーーーーーーーーーー‼」
頭上すぐ上の辺りから突然大きな笑い声が響き渡り谷間中にこだました。
(こ、これさっきの俺の笑い声やん⁉)
現実か夢かわからないような世界の中俺は混乱した…
ただ自分の意志とは別に股間からあふれ出る生暖かいものがこれは現実だよと物語っていた……
小悪魔外伝 ~間(はざま)~に続く
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小悪魔スピンオフ | 日記
Posted at
2022/10/21 09:41:24