あまりのことに俺は腰を抜かしたようになり、その場で漏らしてしまった(>_<)
立ち上がるにもうまく立ち上がれない…
ガクガクと震える膝でなんとか立ち上がり再び走り出したがうまく走れない。
早くここから逃げないと奴が来るかもしれない( ;∀;)
迫りくる恐怖の中俺は何度も後ろを振り返りぎこちなく沢を走り下った。
足元の白い霧は所々穴が開いたようになっており、そこからは赤いハサミを振り上げた異形の蟹があざ笑うかのように走る俺を見つめていた…
一目散に秘密の楽園を走り抜け、獣道に入る…
(ここまで来たら大丈夫かな⁉)(; ・`д・´)
足元の白い霧も少し薄くなってきたように感じた。硫黄のような匂いも薄まってきた。
右膝の切り傷からの出血も止まったようだった。
少しだけ冷静になった俺が気になったのは転んで沢の水でずぶ濡れになった全身よりも、漏らして濡らしたパンツとズボンだった…
(オカンに何て言おう…)(´;ω;`)ウッ…
そんなことを考えながら獣道を小走りで抜ける手前で俺の足が止まった。
「‼」
(そういえばジュリ蔵の前通らなアカンやん⁉)(;´Д`)
(うわっ、無理…無理やで…どうしよう……)(;´・ω・)
「あ、畑のおばちゃんの家があるやん‼」Σ(・ω・)
俺は思い出した…
獣道を抜けた所の沢のほとりには小さな畑があって、そこにはたまに畑仕事してる優しそうなおばちゃんがいて、虫取りに来た俺にお菓子やジュースをくれた事があった。
ただそのおばちゃんは「子供が一人でこんなとこに来たらアカンで(笑)」と言っていたので、そのおばちゃんが畑にいる時は秘密の楽園まで行くのは諦めていた。
そのおばちゃんの家(民家)が獣道を抜けた所の沢の反対側にポツンと1軒あったのだ。(家から出てくるのを見たことがあった)
短い坂道を上がると広い庭がありその奥にこじんまりとした佇まいの古い家がある。
気づけば俺はそのおばちゃんの家に向かっていた…
(せめてジュリ蔵の所まで一緒に行ってもらおう…)
(足のケガ見たらビックリするかなあ…)
(おしっこ漏らしてるのバレへんかなあ…)
西日が差す家の玄関に立ち中の様子を窺う。
「こんにちは!おばちゃん!」
中からの返事は無い。
「いますかーーー?おばちゃん…僕なぁ…虫取りに来てケガしてん!」(´Д⊂ヽ
シーンとした中で遠くに蝉の声だけがこだまする…
(おらんのかなあ…)
そっと玄関のドアに手をやる…
「ガラガラガラーーーー」
(開いてる‼)
スライド式の玄関ドアには鍵がかかってなかった。
「おば…‼」
開けたドアに顔を突っ込んでおばちゃんを呼ぼうとしたが途中で声が止まった。
その時俺の目に飛び込んできた異様な光景は…
玄関から家の奥まで丸見えだったのだが、リビングにある木製の大きな円卓の上に用意された何組ものおかずとご飯、箸や湯呑みなどが置いてありそれをテントのような大きな白い蚊帳が覆っていた。
今よそったばかりのようなおかずとご飯は全く人気のない部屋で不自然な違和感を感じずにはいられなかった。
青い羽根の扇風機だけがそこで静かに首を振っていた…
俺はゆっくりと後ろに下がりながらも目は部屋の奥に釘付けになっていた。
リビングの窓からも差し込んでる西日の向こう側…その奥にあるテレビは当時でもほとんど見なくなった白黒テレビで音は出てなかったが画面の映像は動いていた。
眩しい西日の向こうでよく見えなかったが、どこかの広場(公園)みたいな所に大勢の人がいて全員こっちを向きながら行進しているような気味の悪い映像が流れていた… 戦時中の日本兵のようにも見えた…。
(変な番組やってるなあ~⁉映画かなあ~?)(´・ω・`)?
「カラカラカラ…………」
俺はなるべく音を立てないよう玄関をそっと閉めた。
誰もいない円卓によそってあったご飯とか、つきっぱなしのテレビとか考えるほど不気味で気持ち悪かったがおばちゃん家族みんな二階で寝ているんだと思うことにして平静を保った。
それより何より心細さに押しつぶされそうだった。
(もう誰も頼る人おらん…)(._.)
もう覚悟を決めるしかなかった。
その時なるべく見ないようにしていた祠がある方の空が曇ってきている事に気づいた。
この時期よくある入道雲みたいな灰色の雲が山の麓方面から立ち込めてきた。
だがそのスピードが半端じゃない…
まるでコーヒーにミルクを流し込んだように渦を巻きながら空を覆っていった。
(夕立が来る前に帰らんと。ジュリ蔵の横は全速力で走り抜けよう)
俺はしゃがみ込みいつの間にかほどけていたスニーカーの紐を結びなおした。
立ち上がり深呼吸し空を見上げた… その時…
「…星でてるやん⁉…」
「⁇」
「え⁇なんで?なんで?」(´゚д゚`)
慌てて反対方向を振り向くと…
「…太陽ででるやん‼」
「うそやろ⁉」( ゚Д゚)
正気の沙汰ではなかった。
今でもハッキリ覚えている。
こちらに向かって渦を巻きながら広がってきた灰色の入道雲はやがて帯状であることがわかった。(空を2つに区切るように)
スッパリと切れた雲の向こうは真っ暗な夜空になっていた。
夜空には星が瞬いていた。
その雲の反対側は太陽が高い位置でさんさんと輝いてる。
夕焼けとか夕暮れじゃなく同じ空に昼と夜があった。(夕方と夜中⁉)
そして思ったのは…
(今何時やねん?)
そして…
(ひょっとして俺は死んだのか⁉…)
恐ろしくも幻想的でこの世の終わりにも見えたその空を俺は茫然と眺めた…
何秒くらい経っただろう……
獣道を抜けた山道わきに立っている木柱の外灯が下の方からひとつづつ「ポッ」「ポッ」と点いてくるのが視界に入り我に返った。
山を下る道の先はもう暗がりになり黒く塗りつぶされたようで何も見えない。
反対側の秘密の楽園辺りは眩しい西日が差し込んでる。
(帰らなきゃ!)
後ろは日差し、行く先は暗闇…
罰当たりな小悪魔はこんなところで死んでたまるかと勇気を振り絞り真っ暗な世界に飛び込んで行った…
空の上からは昼と夜の間(はざま)が静かにそれを見下ろしていた…
小悪魔外伝 ~「罪と罰」~へ続く
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小悪魔スピンオフ | 日記
Posted at
2022/10/28 18:29:36