• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

きリぎリすのブログ一覧

2025年11月05日 イイね!

満タン法という罠

満タン法という罠

枡酒を前にすると,つい息を呑む。
枡の縁まで表面張力でせり上がった日本酒。
ほんの一筋,こぼれるかこぼれないか…
その瞬間にこそ「美」が宿る。

そんな性癖を持つ男が,クルマに乗るとどうなるか?

車好きには,避けて通れぬ儀式がある。
それは,燃費を満タン法で測ることだ。
ゆえに,タンクはギレギレまで満タンにせねばならない。

ノズルがいったん「カチッ!」と止まっても,そこでやめたら男がすたる。
あれはただの肩慣らしで,本番はそのあと。
タンクの奥底に潜む空気を追い出し,数値の精度を高める…という名の執念である。

だが,継ぎ足しの世界は一種のギャンブル。
じわり,じわりと入っていくガソリン。
耳は給油口,指先はノズル,心は祈りに捧げる。

―――頼む,まだいける!

そして,次の瞬間「ゴボッ!」とイヤな音。
バリウム検査中のゲップのように,残念な思いでガソリンが吹き出し…
私の眉間には,「マジ?」のしわ。

空気が押し返したのか?タンクが反乱したのか?
理由はどうあれ,結果は一つ。

―――やっちまった。

継ぎ足し禁止?キャニスターに悪影響?
それも分かっている。
しかし,数字の魔力とは恐ろしいもので,また今日もノズルを握る手に力が入ってしまった。

最後に給油口をそっと閉じながらつぶやく。

―――あふれ出たのは,俺の器なのかも知れないな…

Posted at 2025/11/06 18:17:22 | コメント(6) | トラックバック(0) | クルマ
2025年11月03日 イイね!

うろこ雲とオレンジの警告灯

うろこ雲とオレンジの警告灯

炎天下でラウンドするゴルファーや,厳冬に唇を青くさせ波を待つサーファー。
私はずっと,ああいう季節感のない奴らを,鼻で笑っていた。

しかし,逆の視点で捉えれば,彼らこそ季節を直に肌で感じている,真の風流人とも言える。
走る人間百葉箱セブンに乗ると,しみじみ彼らの偉大さが分かり,頭が下がるばかりだ。

とはいえ,オープンカーにとって最高の季節は,春と秋。
天国の扉が開く,あの貴重な数週間だ。
日差しは柔らかく,風は甘い。
汗ばむことも震えることもなく,ただステアリングを握っているだけで,人生に拍手を送りたくなる。

だが,そんな夢のような時期に,愛車セブンは入院生活を余儀なくされていた。
病名は「原因不明のエンジンストール症候群」。
担当医いわく,「部品は発注してあるんですが…ちょっとイギリスからの船が…」。
もうそれ,紅茶飲んでる場合じゃない。

ところが不思議なことに,病室で寝ている間に症状はピタッと消えた。
まるで「先生,もう治りました!」と入院生活に飽きてきた患者のように。
…が,エンジン警告灯だけは頑として消えない。
たぶんセブンのほうもバツが悪いのだ。
「ワタシ,まだ本調子じゃないのよ。ゴホン!ゴホン!」とオレンジに染めたアイシャドウをチカチカさせてくる。

そんなわけで,医師(ディーラー)の許可を得て一時外出許可をもらった。
仮退院?仮釈放?
とにかく,一旦セブンは出所した。

帰り道,風が少し冷たい。
見上げれば,うろこ雲が細かく空を刻んでいる。
それでも,久しぶりのセブンの鼓動は,やけに温かく感じる。
なんとか移植手術の日までは,再発して救急車で運ばれぬよう,共に祈ろうじゃないか。


Posted at 2025/11/06 18:15:38 | コメント(11) | トラックバック(0) | クルマ
2025年10月28日 イイね!

上がりのクルマ

上がりのクルマ

<閲覧注意>

本稿には一部セクシュアルな表現が含まれます。
男性的な感情の昂ぶりを率直に綴っておりますので,ご理解の上でお読みください。

タイトルは,人生最後の一台の俗称で,バッテリー上がりのクルマではありませんw
それは終生の愛車であり…
たとえ他のクルマを手に入れても,その思いは揺るがないという意味です。

――――――――――――――――――――


男は歳を重ねるごとに,欲望を飼いならし,理性をまとい,激情というものを過去に押し込め―――そう生きていくものだと思っていた。
若い頃は,寝ても覚めても恋人のことばかり考え,会えば互いに貪るように求め合った。
指が触れただけで息が詰まり,肌が重なるたびに昂ぶり,熱にうなされたように,何度も何度も溺れたあの夜。
それも今や,遠い記憶の彼方に霞んでいた。

しかし,私は今,あの忘れかけていた衝動を,再び身体の奥底から呼び覚まされている。

今度の恋人は,今までのどの女とも違った。
これまでの相手は,しなやかで優雅に微笑む,美しく躾(しつけ)られた女たちだった。
だが,今回の彼女は違う。
荒々しく獰猛で,誰にも手なずけられない野生の牝馬だ。

彼女は,挑発するような眼差しを向け,私を試してくる。
そっと指先を這わせた瞬間,彼女は敏感に反応し,背をのけ反らせた。
熱を帯びた肢体は,私を誘うようでありながら,しかし決して簡単には受け入れてくれない。
じれったくなるほど翻弄され,私はもどかしさに喉を鳴らす。
彼女はまるで,私の覚悟を推し量るかのように,逃げるそぶりを見せながらも,その奥で「もっと強く」と欲してくる。

とても抑えきれない。
荒々しく抱き寄せて,しなやかな腰に手を回す。
だが彼女は簡単には従わない。
唇を寄せれば,いたずらに笑うように私をかわし,舌先が触れれば鋭く噛みついてくる。
私を試しているのか,それとも,本気で拒んでいるのか―――
そんな駆け引きすらも,私の血を滾(たぎ)らせる。

このままでは,彼女はするりと私の手から逃げ出してしまう。
獲物を狙う獣のように,私は彼女を追い詰め,深く深く貫きたい。
彼女の熱が,私の熱と絡み合い,互いに飲み込まれるその刹那を,私は待ち望んでいる。
求めるほどに,彼女は激しく抵抗し,なおさら私を焦らし,弄(もてあそ)ぶ。

年老いたはずの男が,再び燃え上がる。
このじゃじゃ馬との日々は,愛であり闘いでもある。
はたして私は,彼女を征服できるのか。
それとも,彼女に屈するのか。

答えは,まだ出ない。
ただひとつ確かなのは,私の中で眠っていた本能が,今まさに目覚めたことだ。
お前を乗りこなすことは,すなわち,お前に試されることなのか?
応えておくれ,セブン480Rよ…


Posted at 2025/10/29 19:23:47 | コメント(8) | トラックバック(0) | クルマ
2025年10月24日 イイね!

森の余韻

森の余韻

今年は,昨年にも増してクマの被害が相次いでいる。
ニュースでは悲惨な事件として報じられているが,森の住人からすれば,彼らもまた生きるために必死なだけかもしれない。
人と森の境界が,年々あいまいになっている―――そんなことを思いながら,私は清里へと向かった。


IMG_6943.jpg


八ヶ岳の南麓に佇む天然キノコのフレンチレストラン亜絲花(あしはな)。
先輩の「今年も行くか?」の一言に誘われてやって来た。
森に溶け込むようなロッジ風の店で,シェフ自らが森に入り,キノコを採ってくる。
クマのニュースを想うと,もはや「命がけの仕入れ」と言ってもいい。


IMG_6944.jpg


昼下がりの光がテーブルを照らす。
皿の上には,土の匂いと森の息づかいがあった。


IMG_6957.jpg


驚いたのはスープ―――数種類のキノコだけで取った出汁に,味付けは塩のみだという。
たったそれだけなのに,山の恵みと温もりが舌に広がる。
人の手が加わらぬものほど滋味がある。そう思った。


IMG_6948.jpg


作文の師匠でもある先輩は,私の心を見透かすように微笑む。
「僕は最近,いろいろなAIに話しかけているんだ」
「名前をつけて呼んでもいいかって聞くと,拒否するヤツもいる」
「(喜怒哀楽なんてないのに)怒ったフリまでするヤツもいるから,つい機嫌を取っちゃうんだ」
冗談めかして笑う声には,どこか親しみのようなものがにじんでいた。


IMG_6953.jpg


人が土と語らい,機械とも語らう。
時代は変わっても,心が求める温度は,そう違わないのかもしれない。
今年のキノコは昨年よりも香りが深かった。
季節の巡りの中で,人と人との関係もまた,少しずつ熟していく。


IMG_6962.jpg


秋の山に,風が吹く。
キノコの香りが,記憶の奥をそっとくすぐった。
あのスープのように,心に残る風味がある。
それを確かめるように,私はきっと,来年もこの地を訪れるのだろう。




IMG_6935.jpg

Restaurant 亜絲花

山梨県北杜市長坂町小荒間2004-5
夏期営業(火・水・木および冬期休業)
要予約 0551-32-6835
https://www.ashihana.net/home


Posted at 2025/10/28 14:29:55 | コメント(9) | トラックバック(0) | 日記
2025年10月20日 イイね!

第18回 SMP全国オフラインミーティング in八ヶ岳

第18回 SMP全国オフラインミーティング in八ヶ岳

北は東北から西は九州・四国まで,100台あまりのセブン乗りが信州八ヶ岳を目指して走ってきた。
いや,正確には―――たどり着けたのが100台あまり,である。
その光景は,まるで雨空にアルミと鉄で出来たカエルの大合唱だ。
聞こえるのは,自慢の排気音と笑い声,そしてときどき「帰りは積載車?」のささやき。

ところが,残念ながら私のセブンはその輪の中にいなかった。
原因不明の入院から,早3週間―――今も隔離病棟で無言の溜息を吐いている。
ディーラーいわく「なぜ不調なのか,原因が分かりません」。
…それって恋の病か?

だが,年に一度の巡礼をスルーするなんて,雨の日にサボる郵便屋みたいなもんだ。
そこで私は,家系図をたどれば親が一緒の―――ロータス・エリーゼを緊急出動させた。
「確かに英国生まれだけど…」と言われれば,「(妾腹の)セブン叔父さんから見ると,本家の姪っ子です」と笑ってごまかすしかない。

それにしても,あの場の空気は,予想通りカオスだった。

前輪の片側だけむき出しだと思ったら,フェンダーをロールバーにくくり付けていた人。
ナンバーぐにゃぐにゃ,ノーズコーンぐしゃぐしゃ。昨晩の生キズらしいが,「自走に問題なし!」と豪語する人。
セブンを一度ならず二度までも燃やした人や,途中で故障しレンタカーで駆けつけた人。
万が一に備え,トレーラーに載せてきた人まで。

まるで「八ヶ岳耐久レース<人間編>」である。

恐れていた雨は,突然の靄に包まれたものの,傘をさすまでもなく乗り切った。
寒いのに上機嫌,トラブルが起きても拍手,誰かが工具を出せば人だかり。
理屈より情熱,効率より浪漫。
―――セブン乗りは,燃料ではなく愛で走っているのだろう。

帰り際,スキンヘッドにキャッツアイ(グラサン)を決めた,強面の先輩に声を掛けられた。
「おい(小僧),来年はセブンで来いよ!」
「は…はい!そのつもりです」
ただし,発病もせず,無事にたどり着ければ…の話だが(汗)
ちなみに,先輩いわく「セブン乗りも高齢化の波でのぉ,頭頂部が淋しくなってきたわい」とのこと(汗)

ミーティング終了後,私は山を下りながら思うのだった。
八ヶ岳の空気には,オイルと笑い声と―――
そして,人の温もりが混じっていると…


IMG_8358.jpg


ところで,このミーティングには恒例の「お土産シャッフル」がある。
地元の名産を持ち寄り,次々と交換していくうちに,誰のものが誰の手に渡ったのか,すっかり分からなくなるという愉快な催しだ。

私の手元に残ったのは,信州名物の七味唐辛子。
なんと言う神のいたずらか!不思議なもので,実は昨日,買い忘れたばかりだったのだ。
まるで「忘れ物,届けにきました」と言わんばかりに,七味が我が家にやってきた。
こういう偶然こそが,セブン乗りの「縁(えにし)」というやつかもしれない。

八幡屋礒五郎の七味唐辛子をくださった方,このブログを見掛けたらぜひご一報を。

最後に,この場を作ってくださったすべての方々に,心より感謝申し上げます。
運営スタッフの皆様,地権者・施設管理者様,そして参加された皆様,誠にありがとうございました。
八ヶ岳の空気と同じように,皆様のお心遣いも私の記憶に温かく残る一日となりました。
また,現地でお話しさせて頂いた方もそうでない方も,まだみん友でない方は,気軽にフォロー頂ければ幸いです。

Posted at 2025/10/23 10:37:36 | コメント(17) | トラックバック(0) | クルマ

プロフィール

きりぎりす(旧GRASSHOPPER)と申します。 ここ10年ほどで,やっと実用性0(ゼロ)のセカンドカーを持てるようになりました。 サルはエクスタシー...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/11 >>

      1
2 34 5678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      

リンク・クリップ

夏が終わる、その前に・・・ (  ´・ω) 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2025/08/31 06:55:10
岡谷のうなぎとニッコウキスゲ (後編) 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2025/07/12 06:11:10
スイッチラベルの自作 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2025/05/26 09:25:32

愛車一覧

ケータハム セブン480 ヴァイパーブルー (ケータハム セブン480)
480R(LHD 5MT)に乗っています。 ★Open top ☆Wheelbase- ...
ロータス エリーゼ ファイアーレッド (ロータス エリーゼ)
ELISE 220Ⅱ(LHD 6MT)に乗っています。 ★Targa top ★Whe ...
アバルト 695 (ハッチバック) ブルーラリー (アバルト 695 (ハッチバック))
695 TRIBUTO 131 RALLY(LHD 5MT)に乗っています。  Hat ...
アルピーヌ A110 ブルーアルピーヌメタリック (アルピーヌ A110)
A110 PREMIERE EDITION(LHD 7DCT)に乗っています。  Co ...

過去のブログ

2025年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2024年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2023年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2022年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2021年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2015年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation