
セブンが入院して,早1ヶ月。
エンジン警告灯が,昨年から消えないのだ。
確かに2,3度,エンジンが意識を失った。
しかし,その後は快調で,仮病を疑いたくなる。
チェックランプなんて点きっぱなしでいいからと,退院を申し入れたが却下された。
メーカーと毎日,少しずつ原因を詰めているので,実車が必要らしい。
毎日?少しずつ?
そのはずだ。
時差9時間だもんな。
英国から「グッド・モーニング」と連絡が来た瞬間…
こちらは「お疲れ様でした」と退社モード。
こんなやり取りじゃ進まない。
紅茶片手に「365歩のマーチ」なんて口ずさんでいる場合じゃない。
♪一日一歩 三日で三歩 ♪三歩進んで 二歩さがる
だから私は,今日も歌う。
「ゲット・バック」と───

我が家のマンション駐車場には,顔も名前も知らないライバルがいる。
まだ,会ったことはない。
だが,柱を挟んで毎晩しのぎを削っている。
私は左ハンドル(青いアバルト)。
必然的に,左隣のクルマと間隔を確保するため,右の柱(向かって左側)に寄せる。
一方,柱の向こうの住人は右ハンドル。
同じ理屈で,左の柱(向かって右側)に寄せる。
結果,柱を挟んだ両者が,お互いに「そこまで柱に寄せる?」という位置に停めている。
静かな駐車場で展開される,過激なチキンレースなのだ。
相手が寄せれば,こちらも寄せる。
こちらが更新すれば,翌日は必ず上書きされている。
これは偶然ではない。
完全に勝負だ。しかも不毛な。
不利なのは,私のほうだ。
アバルトのドアミラーは,電動格納式ではない。
柱にミラーを擦った瞬間,勝負以前に人生が終わる。
一方,相手のフォレスターは,超音波センサーやサラウンドビューという近代兵器を惜しみなく投入してくる。
かと言って,二回りも三回りも小さなアバルトが,ここで負けるわけにはいかない。
昨晩は,ミラーと柱の隙間が1センチを切っていた。
「よし,勝った」
そう思って寝た。
今朝,2台を見て愕然とする。
完敗だ。
絶対に,モニターを使ったに違いない。
私は,思わず叫んだ。
「武器を使うなんて,きたねーぞ!男なら素手でこい!素手で!」
(※相手が男かどうかも知らないが…)
湾岸線で最高速を競っているわけではない。
ましてや,峠でバトルしているのでもない。
それでも駐車場では,毎晩,MFゴーストが繰り広げられている。
ちなみに,読者の興味は一点に集約されていると思うが…
お陰様で,まだコスってはいない。

賛同,異論,反論と意見には様々な主張がある。
私が常々,念頭に置いているのは,正義は一つではないということだ。
ある正義があるとき,反対側にも同じ量の正義,すなわちアンチテーゼが存在する。
たとえば,殺人は許されない。
しかし,死刑は制度として認められ,こと戦争においては,殺した人数に応じて勲章まで授与される。
国が富むことを望まない者はいないだろう。
だが,それによって不利益を被る国があることも事実だ。
戦争などは,その代表と言っても差し支えない。
行為そのものは同じでも,状況が変われば正義の符号は反転するのだ。
政治家は国家を説く。
勘違いしがちだが,国家に従属して国民がいるのではなく,国民の自由を守るために国家があるのだ。
正義を掲げること自体は,どの体制でもできる。
それに異論反論を提唱できるかどうかが,民主主義か否かの分水嶺である。

お伊勢参りで七社を目指した。
六社は回れたが,最後の一社は翌日に持ち越す。
信心が足りなかったわけではない。
少々,日照時間が足りなかっただけだ。
結果として伊勢国に一泊することになった。
これは偶然ではない。
神の思し召しである。
神は言った。
「今日はもういい。牛を食え」
向かった先は,松阪。
鏡ならぬ,鉄板の上に松阪牛が現れた。
ナイフ(剣)の切れ味は抜群。
これはもう食事ではなく,神事である。
神前ではあるが,赤ワインが進む。
翌朝───
昨晩のお神酒(みき)が過ぎたようだ。
海鮮が食べたくなる。
かの地で海鮮と言ったら,もちろん伊勢海老だ。
これを豪快に網焼きにしてもらう。
出てきた一品を見て思わず叫んだ。
「おー!これは勾玉ではないか!」
程よく焼けた伊勢海老は…
赤く輝き,丸まり,勾玉の形になっていた。
三種の神器,食にてコンプリート。
こうして七社も回り…
三種の神器も胃袋に奉納した。
お伊勢参りとして,これ以上の達成感を得られるであろうか。
唯一の誤算は,いただいた御朱印より…
レシートの枚数のほうが,多かったことだ。
※Photo by Kikutake Wakasa / CC BY 4.0 via Wikimedia Commons

伊勢神宮に行く理由は,願い事をするためではない。
無事に来られたことを報告するためだ。
主な7ヶ所を巡るのも,スタンプラリーではなく,ちゃんと意味があると聞く。
1ヶ所で済ませず,歩き,移動し,時間を使う。
その手間暇を含めての参拝なのだ。
───とはいえ,7ヶ所すべてを徒歩では効率が悪いと判断し,愛車A110で回ることにした。
いま思えば,この判断を神様はせせら笑っていたと思う。
ところが,最寄りインターは封鎖。
なぜか次も封鎖。
掲示板に「1月1日~4日及び11日は出口規制」。
私はこの一文に固まり,あやうく前のクルマに初詣するところだった。
二礼・二拍・一追突。
その後,流れ作業のように,仮設駐車場へ誘導され…
半強制的にシャトルバスで30分揺られ,やっと①豊受大神宮(外宮正宮)へ。
参拝後,次の②月夜見宮(外宮別宮)まで,徒歩10分。
このあたりまでは,まだ余裕があった。
「冷気の中を歩くのは,実に清々しい」などと,その後の苦行を知る由もなく。
次の内宮まで徒歩だと1時間以上。
そこで,タクシー乗場に並ぶものの,30分経っても列が短くならず,タクシーは断念。
またシャトルバスで仮設駐車場へ戻り,今度こそクルマで内宮へ。
もちろん大渋滞。
なるべく③皇大神宮(内宮正宮)に近い駐車場に向かうも,まったく入れず,Uターンして最も遠い駐車場へ。
結果,また歩く。
この頃になると,疲れているのは筋肉ではない。
ヒザだ。
ヒザが,はっきりと抗議してくる。
ほんのわずかな登り坂でも,自分は箱根駅伝の山の神だと念じる。
標高差は,せいぜい10メートル。
参道の人混みをかき分け,参拝を済まし,御朱印をもらって宇治橋鳥居に戻って来たのは,2時間後。
かなりの体力と時間の消耗だ。
④月讀宮(内宮別宮)へは,また駐車場に並ぶのを避けるため,あえてクルマには戻らず徒歩を敢行。
冷気の中を,さらに30分以上歩き続けた。
意識が朦朧(もうろう)としかけたころ,深夜のテレビ通販が頭の中に流れる。
「今から30分以内のご注文なら,ヒザ関節に効くグルコサミン配合の───」という,あのフレーズだ。
このときなら,迷いなく注文していた。
神様ではなく,サプリにすがりかけていたら,到着。
専用駐車場はガラガラだった。
もう,笑うしかない。
参拝後,なんとかクルマに戻って足を伸ばし,ヒーターで暖を取りながら思うのだった。
7ヶ所にちなみ,セブンで来なくて良かったと。
次の⑤倭姫宮(内宮別宮)に着いた時分には,薄暗く足元も覚束ない。
長い参道を,左右のヒザを押しながら一歩ずつ進む姿は…
駆動部は壊れているのに,神様が操縦席でレバーを握りしめているロボットのよう。
クルマというワープ航法を得た私は,二足歩行をやめた。
そこから⑥伊雑宮(内宮別宮・志摩)までは,30分の距離。
参拝終了の10分前。ギリセーフ。
残る⑦瀧原宮(内宮別宮・大紀)だけは,急きょホテルを取って翌日に持ち越した。
後で知った。
この日は「一月十一日御饌」。
125社の神様が一堂に会する,新年会みたいな日だったらしい。
なるほど。
神様は集合,私はずっと移動。
お伊勢参りとは,祈ることではなく駅伝だ。
最後は襷が繋がらず,無念の繰り上げスタート。
そして神様にヒザを屈する前に,交通規制と運動不足にヒザが屈した。
だが,「歩き,移動し,時間を使う」という話は,ホントだった。
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