出張先の名古屋で時間が空いたので,ホビーショップ・タムタム名古屋店を覗いてきた。
目的はただ一つ―――セブンの模型だ。
しかも,サイクルフェンダー仕様。
愛車と同じ「タイヤ丸出し」セブンをリビングに飾れば,毎日ニヤニヤできて,それだけで白ごはんがいける。
むふふ。
だが―――なかった。
あったのは,例の貝印クラムシェルフェンダーのやつばかり。
どうしても,あのムキ出し感が欲しいのに,商品棚のセブンたちはみな,上品にタイヤを隠している。
落胆する私の脳裏に,人魚姫のセクシーな貝ブラがチラつく。
誰か私を海に帰して…
ここで諦めるか?否。
気づけば,私は名岐バイパスを北へ,気持ちはもはやサイクルフェンダー発掘調査隊・東海支部。
お次はタムタム岐阜店へ。
だが―――ここにもなかった。
サイクルフェンダーって,絶滅危惧種だったの?
もしかして今の模型界では「ツルシ仕様」だけが生き残ってるの?
それとも私が求めているものが実は幻というオチなのか?
もういい…こうなったら,買ってやる。
なにを?
そこにあった初代アルピーヌA110とランチア・ストラトスHFのプラモだ。
なぜか?
それは「せっかく来たから」。
こうして私は,少し時間が空いたばかりに…
サイクルフェンダーを求めて名古屋と岐阜をさまよい,わざわざ荷物になる謎のラリーカーのプラモデルを買って帰る羽目となった。
目的と結果が,もはや別ジャンル。
でも―――これもまた模型道。
夜,帰宅後。
セブンの横にプラモの箱を並べ謝った。
「許せ,お前も元々はキットカーだったんだし,兄弟みたいなもんだから」
※この記事を書いた直後,田宮俊作会長の訃報に接しました。模型という世界を豊かにしてくださった功績に,心より感謝と哀悼の意を表します。
私の行く先々が,大雨になる―――
先週は,名古屋で大雨の影響により,鉄道各線の運転見合わせや遅延が相次ぎ…
岐阜ではスマホが一斉に鳴り出し,警戒レベル4の避難指示が発令された。
昨日は,電話中,外からゴォォォォォ…という轟音。
あまりの土砂降りに,ついつい大声になる。
「すみませーん!こっち雨が凄くて!」
「えっ?そっちですか?こっちはカンカン照りで,一雨欲しいくらいです」
電話を切って,ふと雨雲レーダーを開くと…
私の所だけ,まっ赤っ赤。
たしかに周囲には,雲ひとつない。
雨?よし!分かった。
今から,そっちに帰るよ。
昔は,よく任侠(ヤクザ)映画の劇場から出てきた観客が,肩で風を切って歩く光景を目にしたものだが…
昨晩の私はというと…
F1レーサーが見る景色―――地を這う流れる路面が無性に見たくなり,セブンで真夜中の首都高を疾走していた。
頭の中で(挿入歌の)「Whole Lotta Love」のギターリフを響かせながら…
そう,まだ余韻の残る映画は,ブラッド・ピット主演『F1/エフワン』。
コクピットに収まれば,百戦錬磨のドライビング。ヘルメットを脱げば,あの甘い笑顔。
プロストやマンセル,そしてセナと共に戦っていた伝説のF1無冠レーサーも,現在では御年61歳。
そんな彼が現役の若手と互角に渡り合う姿は,熟年層に勇気を与える。
チームメイトの若手ドライバーとはあるあるだが,確執から,やがて固い絆へ。
エンジニアやピットクルー,また,親友でもありチーム代表との信頼関係。
一匹狼かと思いきや,背中でチームを牽引する姿が心に残る。
齢を重ねた者にしか出せない渋み―――それがブラピの速さの陰にあった。
そして,ラブロマンスも忘れていない。
この手の映画にはお決まりのように,カーアクションとベッドシーンが用意されている。
ハリウッドの処方箋とでも言うべきか,それがなければヒットしない,という神話。
だが,そんなクリシェすらも,ブラピが演じると何となく納得してしまうから不思議だ。
きっと彼の中では,愛もレースも,すべてが「人生」なのだろう。
エンディングは,解き放たれた,道なき道を走り続けるバハのデザートレース。
緊張の連続F1の舞台から一転,砂塵舞う砂丘の大地へ。
車好きにはたまらない,心憎い演出だった。
そして,真夜中の首都高,そこで私はそっとアクセルを踏む。
作中,ブラッド・ピットが駆っていたマシンは,カーナンバー「7」。
今夜,私が操っていたのも「セブン」。
ルームミラーに写る自分が,心なしか…「俺って,ブラピに似ている」と見えたのは内緒だ(汗)
夜間工事で抜けない車線規制の環状線を,ジワジワと進みながらも,気分だけは世界の頂点モナコグランプリ。
次のコーナーの先に,まだ見果てぬ夢があるような気がした。
私は雨男である。
天気予報士が「晴れです」と断言しても,私が買い物に行けばゲリラ豪雨になり,旅に出れば台風が進路を変えて接近して来る。
仕事を引退したら,干ばつに苦しむアフリカの大地に赴き,第二の人生は雨乞いの祈祷師と決めているほどだ。
そんな私が,ついにやって来た大阪・関西万博。
目の前に広がるのは,傘,傘,傘で,「ここはパラソル・フェスティバルか!」と思うほど。
しかし,それは私の雨の呪いではなく,全て日傘である。
あれだけイベントで雨を降らせ続けてきた私だが,この日ばかりは日差しが本気モード全開。
雲ひとつなく,空はこれでもかというほど青く,太陽がいつもよりずっと近い。
青空が暴力的… 日差しが突き刺さる… 思考力が奪われる…
なかなか進まない行列は,配給を待つ難民のように,他人に気遣うどころか,横入りを警戒して誰もが戦々恐々としていた。
体力の9割をそがれ,灼熱難民の一人としてやっと入場した………ものの。
そこには,救済も慈悲も日陰もなく,またもや目にしたパビリオンの長い行列に,魂が蒸発した。
これは,熱波の中での精神修行か?新手の汗だくサウナ祭か?万博と言うより,「罰ゲーム・バラエティーセット」だ。
この状況を例の化け物キャラ・ミャクミャクは,どう思っているであろう?
「ええい,もういい。見るのはYouTubeで。リアルで体験するのは,無国籍クラフトビールだけで十分だ」
逃れるように,かすかに影をたたえた会場の回廊―――巨大な木造リング状の構造物(名前は知らん)に避難。
…というわけで,私はその木造リングの下で,帰りの時間までビールで涼を取りながら,万博の暑さをイヤと言うほど満喫した。
ところで,EXPO2025のテーマは,「いのち輝く未来社会のデザイン」だそうだ。
そう,私は,いのちが焼かれる未来社会の現場を,日陰からビール片手に目の当たりにしていた。
「いのちが輝くためには,まずは日陰のデザインからだな」とつぶやきながら…
「日本には四季がある」なんて言葉に風情を感じていたのは,はるか昔のことのようだ。
セブンが来た翌日からは,雨季と乾季,すなわち雨かそれ以外である。
そして雨季のキング・オブ・キング,それが梅雨だ。
雨音が軒を叩くたび,世の中の人たちは「今日は電車はやめてクルマにしよう」と思うであろう。
屋根があって濡れずに,エアコンで湿度も快適―――つまり,文明の利器に屈しているのである。
だが,私は違う。
玄関を出て,空を見上げ,「この程度じゃ小雨だし,電車で行くまでもないか」とつぶやいて,セブンに乗り込む。
傘をさすか,ささぬか―――私は小雨なら傘をささない英国紳士よろしく,後者の人生を選んだのだ。
いや,正確には,まだ幌の掛け方がよく解らないだけである。
何しろ,セブンに乗り始めてまだ日が浅い。
幌の張り方は熟練の技がいるので,YouTubeで予習はしたものの,幌を留めるあっちこっちのスナップボタンが,ツンデレな彼女のように言うことをきかない。
道端でモタモタしていたら,通行人の「大変だね~」という言葉に心が折れたので,私は決めたのだ。
「濡れたほうが早いし,楽だし,クールだ」と。
結果,雨に濡れるセブンのシート。雨に濡れる自分のジーンズ。ほおを流れる雨しずく…
そして,雨を受け止め,気象と一体化する自分をストイックと感じている。
傍から見ればただのアホだが,哲学なしだと本物のアホだ(汗)
ある日,ドライブのついでに銀行に寄った。
ところが,幌なしセブンで突然の雨に見舞われ,全身びしょ濡れ。
自動ドアの開扉速度に,もどかしさを感じながら店に飛び込むと…
入った瞬間,待合室の視線が一斉にこちらを向いた。
一瞬,静まり返るロビー。
行員たちが,妙に緊張した表情で私を見ている。
しばらくして窓口に呼ばれ,通帳を差し出すと,若い行員が震える声で言った。
「ご用件は………お振込み,ですね?」
その間に,背後ではガードマンが,ゆっくりと姿勢を正している。
鋭く光る防犯カメラが,私の一部始終を捉えていた。
「いや違うんだ!びしょびしょなのは,クルマで来たからなんだ」
しかし,そんな弁解したら,もう怪しさマシマシである。
今日も私は,雨上がりの街を行く。
濡れても,風を浴びても,晴れ間を信じて走る。
助手席にはタオルとドライTシャツ,そして微妙な後悔。
でも,そのすべてが,セブンとの梅雨の思い出になっていく。
今はまだ「濡れる自由」を楽しんでいたいから―――
(後記)
ちなみに幌は…家の押し入れで眠っている。
実は私は,練習している姿を人に見せないタイプである。
幌の成功率はいまだ低気圧並みだが,いつかスナップボタンを手なずけ,日の目を見る日も近いであろう。
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