
仲間内で並んでツーリング、同じ目的地を目指してドライブ、なんてときに永遠の課題となるのが、お互いにどうコミュニケーションを取るかという問題。
もちろん助手席に素敵な殿方お嬢様方が座っておられるならば、変わってコミュニケーションを取ってもらうという手がありますが、今回はそんな話はしないんですよ!!!
さて、数台で並んで走っているときに、例えばちょっと休憩したいななんて時。
並んで走っているみんなに即座にその旨を伝えたいのですが、運転中は携帯電話の操作ができませんし、携帯電話では同時に複数の相手と通話することは出来ません。(めんどくさいから三者通話オプションとかそういうこと言わないで)
LINEを使えばできるかもしれませんが、そもそも運転中に携帯電話を操作することができません。
そんなときに役に立つのが、いわゆる「無線機」です。
携帯電話も無線機ですが、そういう話じゃないのはなんとなくご理解いただけるでしょう。
今回紹介する無線機は主に3つ。特定小電力無線、デジタル簡易無線(登録局)、アマチュア無線です。
無線機を使用するメリットといえば、大きく2つあります。
まず1つ目は、「同報通信」
わかりやすく言えば、LINEやSkypeのグループ通話のようなイメージです。
1人が多数の相手に同時に音声を届けられる通話方法です。
無線機は同じ周波数を聞いている人全てに自分が発した音声が届く(一部条件を除く)ので、一度に多数の相手に意思を伝えることができます。
例えば、4台並んで車で走っているときに、休憩したくなった時。
「次の道の駅に入って!」
といえば、無線を聞いている他3台が即時にその内容を了解できるわけです。
逆に言えば、同じ周波数を聞いている人は誰でも通話の内容を聞けてしまうので、あまり個人的な内容を話すのはやめておいたほうがいいでしょう。
これに関して、その通話の存在や内容を他の人に漏らしたり、利用したりすると電波法により罰せられるので注意が必要です。
もう一つは、「プレストーク方式」
プレストーク方式とは、本体やマイクについている送信ボタンを握った瞬間にマイクがONになり、電波が出て、自分の音声を発信できる方式です。
携帯電話の音声通話のように、予め相手の電話番号を入力して、発信、接続が確認できてからお話し、という手順を踏まなくても、PTTボタンを押すだけで音声の発信ができます。
また、PTTボタンを押していない間は電波は出ていないので、不要な会話や音を通話相手に聞かれずに済むという利点もあります。
また、メリットではないですが、電話といわゆる「無線機」の通話方式で決定的に違うのが、複信通話と単信通話という違いです。
携帯電話の音声通話が複信通話。
特に操作を切り替える必要がなく、自分の声が相手に届くし、同時に相手の声も自分に聞こえる という方式です。
普通の電話では、
「(Aさん)もしもし? (Bさん)はいはい (Aさん)次の道の駅で休憩したいのですが。 (Bさん)OKです。では次の道の駅に入りましょう」
と言う感じで会話しますね。
対して、無線機の単信通話というのは、自分が話している間は相手の声は聞こえませんし、相手も喋ることは出来ません。逆に、相手が喋っている間は、自分の声は届きません。
無線の通話は次のような感じになります。
Aさん「こちらはAです。Bさん聞こえますか? どうぞ」
Bさん「了解。Aさん、こちらはBです。聞こえています。どうぞ」
Aさん「了解。Bさん、こちらはAです。次の道の駅で休憩したいのですが、いかがでしょうか? どうぞ」
Bさん「了解。Aさん、こちらはBです。次の道の駅で休憩の件、了解です。どうぞ」
...
というように、お互いに発話の権利を譲りながら会話の進行をします。
当然会話全体の時間が長くなりますし、相手に伝わったかどうかも、相手のはっきりとした応答があるまでわかりません。
さて、メリットのお話をしましたが、今回の記事で紹介している目的である、ツーリングのときの最大のメリットが、運転中に使える、ということです。
もちろん、携帯電話の使用が禁止されているように、無線機の「本体を持って」通話することは禁止されています。
しかし、無線機に接続されたハンドマイクを持って通話することは禁止されていません。
このあたりは厳密に話をするとややこしいのですが、簡単なイメージでいうと、それ自体が電波を出して相手との通話をする機能を持つ本体を手に持って通話することが禁止されている、というイメージです。
ですので、Bluetoothヘッドセットを使用した通話が禁止されていない(一部除く)ように、ハンドマイクを使用した無線機の通話も禁止されていないというわけです。
携帯電話でBluetoothヘッドセットを使用して通話すればよいのですが、前述のように同時に多数の相手に意思の伝達がこんなんなこと、通話前に携帯電話の操作をして通話相手の設定を行わないといけないという点で、難しいところがあります。
「無線機」であれば、出発前に予め使用する周波数を決めておけば、マイクを握るだけで通話が始められます。
無線機をどう使うか、という話はここまで。
これからは、どんな無線機を使うか、というお話。
冒頭で述べたように、今回は、
・特定小電力無線
・デジタル簡易無線(登録局)
・アマチュア無線
の3つの無線を紹介します。
(一般的な通話用の無線機のお話をしています)
まず、特定小電力無線。
以前このブログでも、使ってますよと紹介した無線機ですが、一般的に「トランシーバー」と呼ばれている無線機です。
出力は0.01W以下、操作をする人も、無線機自体にも免許は不要です。
買って箱を開けたら誰でもすぐに使える無線機です。
アンテナの交換は許されていません。アンテナを含め、無線機全体で型式認可されているので、改造すると違法になります。なので、車で使う場合もアンテナは本体とセットになり、たいていは車内に設置して使う形になります。
届く範囲は少し語弊がありますが、「だいたい目で見える範囲」 と思っていただくと誤差が少ないです。
少し脱線しますが――
無線機の実用的な届く距離は、単純に無線機のW数に比例するものではありません。
どちらかというと、W数よりも遥かに「無線を利用している周囲の環境」の影響が大きいです。
無線機を手で掲げているのか、ズボンのポケットに入れているのか、これだけでもかなりの通話距離の差があります。相手が見えるのか、丘の向こうなのか、など、様々な条件に影響されます。
例えば、特定小電力無線の出力は一般的に0.01Wですが、市街地だと500m程度しか届かないのに、完全に見通せる場所(例えば山の上と見通しのいい平野)だと、数十km飛んだりもします。
これくらい飛距離には差があるので、そのようにお考えください。
話は戻って、特定小電力無線。
実体験的に言うと、一般道で車4台並んで走りながら先頭と最後尾の会話が限界、と言った感じです。
もちろん、先程脱線して述べたように、無線機をダッシュボードに立てているのか、助手席に転がしているのかでかなりの差が出ますが、おおよそこのくらいのイメージです。
信号でいうと、市街地の信号2つ離れた程度がいいところ。
しかし並んで同じところを目指している以上、そんなに大きく離れることはないので、これでほぼほぼ満足する結果になっています。
周波数の利用率も、そんなに混雑していないので、ほぼほぼ混信(他の使用者と近づいて、同じチャンネルを使っているためお互いの通話がお互いに聞こえてしまい、邪魔になる状態)もなく、快適に利用できます。
本体の価格は安いもので1万円を切るくらいから、2万円程度と、比較的安いので手に取りやすい無線機です。
つまり、みんなで足並みを揃えて導入しやすいというメリットもあります。
(参考: Amazon.co.jp) ALINCO(アルインコ) 特定小電力トランシーバー ロングアンテナ DJ-P221L
次に、デジタル簡易無線(登録局)。
あえて括弧書きで(登録局)としたのは、他に主にビジネス利用向けの免許局というものが存在しているので、その区別用です。レジャー用は一般的に登録局が利用されます。
さて、特定小電力無線との大きな違いは、出せる電波の強さです。
特定小電力無線が0.01Wだったのに対し、こちらは5Wまで許されています。
なんとその比500倍! とやってしまいたくなりますが、電波の世界はそうでもありません。
先程述べたように、無線の飛ぶ飛ばないは周囲の環境に大きく影響されるので、条件が悪ければ特定小電力と同じくらいしか飛ばないこともあります。
といっても、もちろん5Wまで許されているので、市街地でも1km程度、郊外だと数km飛ぶのが一般的なので、通話距離は格段に広がります。
こちらは、無線を操作する人の免許は不要ですが、無線機の登録が必要です。
たいていの登録局の場合、申請書類やガイドが同梱されているので、それにそって各地域の総合通信局に登録申請をし、登録状を受け取ってから利用をします。つまり、購入して箱から出して即使用はできません。
また、こちらの無線機は年間数百円の電波利用料を納付する必要があります。
こちらは本体の価格は3万円台から、車両専用のものだと5-6万円台からとなるので、なかなか手に取りにくい無線機です。
導入するメンバー全員がサクッと買ってさっと登録できると言う状況はなかなか難しいでしょうから、導入前の十分な検討が必要ですね。
(参考: Amazon.co.jp) アイコム デジタル簡易無線(登録局)5Wタイプ IC-DPR6
(参考: Amazon.co.jp) ICOM IC-DPR100 車載用デジタル簡易無線機
ただし、手軽に高出力を出せる無線機なので、特にツーリングでの利便性は格段に向上します。
こちらはアンテナの交換は許されているので、車内に本体を置いて、車外にアンテナを設置することで、格段に通話範囲を広げることが出来ます。先程から述べている、「無線機の周囲の環境」を良くするわけです。
1つ注意点は、5Wという高出力を出すので、携帯型の無線機は発熱が大きく、またバッテリーの消費も激しいところにあります。
例えば車でツーリング用途「のみ」に使用するのであれば、車載型無線機をおすすめします。
電源は車両から取りますし、放熱対策もしっかりされています。
車でツーリング用途に使い、車を降りてからも手持ちの無線機として使いたいのであれば携帯機を選択することになりますが、バッテリーの消費と発熱には注意が必要です。
次に、アマチュア無線。
こちらは聞いたことがある方が多いと思いますが、無線を操作する人の免許(資格)が必要ですし、無線機自体にも免許が必要です。
無線を操作をする人は、アマチュア無線技士の無線従事者免許(国家資格)を取得し、使用する無線機は無線局免許状の申請を行い、無線局免許を受ける必要があります。車で言うと、無線従事者免許が運転免許証、無線局免許が車検のようなものと考えていただくとわかりやすいかもしれません。
注意したいのが、某スキー映画のように、レジャー用途で使われていることも多々ありますが、あくまでもアマチュア無線の利用目的は、「個人的な無線技術の興味によって行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務」と定められているので、注意が必要です。
この無線の運用で出せる出力は、無線従事者の免許によって変わります。
例えば最下位の「第四級アマチュア無線技士」が出せる出力は、20W以下です。
それにしても20W。通話距離はさらに広がります。
おそらくこの無線を手にされる方は、免許を取る必要があるのでそれなりに勉強されるはずなのでそんなに心配していませんが、利用方法には注意が必要です。
自由度が高い分、秩序を守って利用していくことが大切です。残念ながら不法局も多く存在しています。
(無線を使っている人、無線機をあわせて、無線「局」と呼んでいます)
例えば見晴らしのいい場所で、大きな出力を出して使い続けると、遠くで使っている他の局に混信してしまったり、長時間専有し続けると迷惑になる、などといった難しい問題も発生してきます。
少し運用してみた感じで言うと、移動しながら車で使っていると、すぐにたいていどこかの局と混信してしまって周波数の変更が必要になったり、コールサイン(英数6文字の自分の無線上の名前みたいなもの)を呼び合うことが定められているので、あまり使い勝手は良くない印象です。
デジタル簡易無線が登場した今、これからツーリングやレジャーのために導入しよう、という無線としてはあまり適当とは言えませんが、個人的に利用する1無線として比較も兼ねてご紹介しました。
(参考: Amazon.co.jp) YAESU FT1XD 144/430MHz帯 5W出力 デュアルバンドD/A(デジタル/アナログ)ハンディトランシーバー
難しいことをつらつらと書きましたが、言いたいのは無線機は便利だよ、というお話。
そして、どんな無線機を導入すればいいかという話だと、みんなに余裕があって利便性を重視するなら、デジタル簡易無線(登録局)、あまり余裕はなく、最低限のコミュニケーションがとれればよい、というのであれば特定小電力無線かな、ということです。
無線の世界は知らなければ触れることはないでしょうから、こんな便利な手段があるよ、というお話でした。
少々語弊があるところがあるかもしれませんが、ご容赦を。