
見えない敵と戦うのは苦労します。
カーナビのノイズ対策のお話です。
車関連でノイズとして一般的なのは、点火ノイズやオルタネータノイズなどの電源系統です。
これらは比較的対処が簡単で、私も対策していますが、大抵はアースを正しく取ったり、ノイズフィルターなどを入れれば解決することが多いです。
しかし厄介なのが高周波ノイズ。今回の敵です。
一般的には気にならないか、存在がわからないことが多いのではないでしょうか。
気づくとすれば、最近は当たり前になってきた、カーナビの地上デジタル放送受信機能で受信がうまくできない、とか、GPS位置情報がうまくとれない、狂う、などと言った場合でしょう。
今回私の場合は、車に設置したデジタル簡易無線に妨害を与えている、でした。
デジタル簡易無線を使い始めた当初は、車だしこんなものか、と思っていたのですが、友人らの車を見ているとどうもノイズが乗ること自体がおかしい模様。
当初はこんな具合。
この機種はSメーター(信号強度)が表示できますので、下の1と出てるやつがそれです。
多いときで3程度までノイズレベルが上がることもしばしば。
また、受信中を示すアンテナピクトが点灯してしまっています。
通常、Sメーターは1以下(表示なし)でも音声が聞こえてくるレベルなので、ノイズだけで1出ていると、それだけ受信できるチャンスが減るということで大問題です。
また、通話制限時間のカウントもされてしまうことがあるので、利用上かなり厄介です。
さて、となるとノイズ源を探らなければなりませんが、これまた相手は見えない敵。
とりあえずはいろいろ探っているうちに、ETCアンテナを手で覆うとどうやらノイズが減るというのが見えてきました。
それもそのはず、ETCアンテナの取り付け位置が普通と違うので、ちょうどDCR(=デジタル簡易無線)のアンテナに向かってETCのアンテナが向いていました。

窓ガラス左下のがETCアンテナ。写真はまだ取り付け前だが、助手席側Aピラー付け根にDCRのアンテナがある。
そこでとりあえずはETCアンテナを移設することにしました。
ちょうどダッシュボードをばらしたので、ダッシュボードの中央付近内側に仕込んで隠しました。
もちろんアンテナの指向方向があるので、貼り付け面が外を向くように、です。
後にゲートをくぐってみましたが、問題ないようでした。
ところが、ノイズが消えていません。
泥沼化の形相が見えてきました。
高周波ノイズというのは発生源があっても、周りのケーブルなどが相互作用するので、発生条件はほぼ無限。
キーACC位置でノイズが出て来るので、ETCではないとすると、あと原因になりそうなのがカーナビ。
カーナビも取り外して、裏のケーブルを1つずつ抜いていきました。
するとGPSアンテナを外したところでピタッとノイズが消えます。
原因はGPSアンテナで間違いなさそうです。
しかし受信専用のはずのGPSアンテナがなぜノイズの発生源になるのか。
GPSの受信にはしばしば信号強度を上げるために、アンプが使われることがあります。
このアンプの信号が何らかの原因もしくは仕様でアンテナ側に回り込んでいるのだと勝手に想像しました。
とりあえずGPSアンテナのやたら長いケーブルがノイズを撒き散らすアンテナ代わりになっているのだろうと踏んで、束ね方をあれこれしていると、ノイズが増えたり減ったりします。
しかしよく観察しているとどうやらこれだけではない様子が見えてきました。
ちなみに観察とは、デジタル簡易無線の周波数帯である351MHzを、レシーバーのAMモードで観察していました。こうするとノイズの出方がわかりやすいのです。
ケーブルを手で持ち上げて色々向きを変えるとわっとノイズが増えたり、特定の束ね方をするとすっとおさまったり。
収まっていても、ケーブルを収納するとまたわっと増えたりと、条件がほんの少し変わっただけで大きく変化するもの。
もう少し根本的な対策をすべく、まずは電源系統の束にフェライトコアを付けてみました。

ちなみに緑色のコネクタがGPSアンテナ。諸悪の根源です。
少しノイズが減りました。一歩前進です。
しかしまだまだ実用的とはいえないほどのノイズが出ています。
次はGPSアンテナケーブルにもフェライトコアをつけてみました。
1ターンではあまり変化がありません。2ターン(2回ぐるっと巻きつける)だと少しノイズが減りました。
3ターンではまた増えます。
ということで2ターンで取り付け、またも一歩前進。
地道な戦いです。
信号線に乗っている信号を探知するトレーサーまで持ち出してきて調べたところ、どうやらフロントガラスに行っている地デジのアンテナ4本も強烈なノイズを伴っています。
地上デジタル放送なんてナビでほとんど見たことがないので撤去してしまってもいいのですが、せっかくついているものを撤去するのもあれだし、撤去はノイズ戦争に完敗してからにしようと決め、とりあえずはナビ側にフェライトコアをノーターンで取り付け。
若干のノイズ低下が見られました。
またこの地デジアンテナがやたら長く、助手席のグローブボックスの奥で大量に束ねられていたので、束ねられている部分にアルミテープを巻きつけてシールドしました。
ケーブル全体をシールドしているわけではないし、行き先はアンテナなのでほんの少しの改善でしたが、少しの積み重ねが大事。
ここまで来るとノイズもだいぶ減り、デジタル簡易無線のSメーターは0、アンテナピクトも点滅ぐらいまで来ました。
あとはノイズが増えないように注意深く配線束の位置を調整しながらカーナビを戻していきました。
カーナビを戻したあとにもう少しレシーバーでノイズ源を探ると、どうやらカーナビの奥を左右に貫いているワイヤハーネスにナビのノイズが乗り、アンテナのような仕事をしているらしいことがわかってきました。
そこでナビの後ろ側を左右に走るハーネスに、ナビからの遮蔽するようにアルミテープを貼り付けたところ、ぐっとノイズレベルが低下しました。
ここまでくるともはや怪しい燃費改善グッズのあれのようになってきますが、実際に効果があるので仕方ありません。
そしてついに。
無線機のディスプレイからアンテナピクトが消えました。
試験用に観察していたレシーバーも最初は9を超えて振り切っていたのが1に落ち着き、勝利の瞬間です。
改善後に少し聞いていましたが、今までは何か信号が来てるけど全く聞こえてこないレベルの信号がしっかり復調されていたので、効果はしっかりありました。
貴重な電波資源を有効利用するために、必要最小限の電力で無線機は運用していかなければならないと思うし、飛ぶのに聞こえない状態は無線機の運用としては最悪です。
そんな状況をなんとかできてよかった。。。
久々におもいっきり手こずった上に、ちゃんと成果が得られた珍しいパターンなので、記事にしてみました。