
以前、「ツーリングに、無線機のススメ」という記事で、ツーリング用にどんな無線機が使えるかという紹介をしました。
では実際には、どのように無線機を選んでいったらいいのかというところを、もう少し細かく書いてみたいと思います。
...最近こんな記事ばかりですね。
○仲間の無線システムに合わせる
自分が無線でしゃべりたい相手やグループが、すでに何らかの無線を導入しているのであば、システムを合わせる必要があります。
グループがデジタル簡易無線(登録局)を使用しているのならデジタル簡易無線(登録局)、アマチュア無線を利用しているのならアマチュア無線、と言ったように、同じシステム同士でしか通話をすることができないため、相手やグループに合わせる必要があります。
▶デジタル簡易無線(登録局)とアマチュア無線の違い
デジタル簡易無線(登録局)とは、基本的には業務用無線です。「業務」といっても「=仕事」ではなく、趣味以外の連絡用途である、と言ったイメージです。
デジタル簡易無線には「登録局」と「免許局」が存在し、大雑把に言えば「登録局」はレジャーや仕事を含めた業務用、「免許局」は会社等でまとまって主に仕事の業務用に使われていることが多いです。
デジタル簡易無線(登録局)は、使用する人の免許は不要ですが、無線機は登録(≒免許)を申請し、「無線局登録状」を受け取ってから使用する必要があります。
対してアマチュア無線は、使用する人は「アマチュア無線技士」の資格が必要で、無線機も管轄の総合通信局へ免許申請を行い、「無線局免許状」を受け取ってから使用する必要があります。
▶▶従事者免許と無線局免許(登録)について
無線機を運用するには、基本的に、無線を使う人(無線従事者)の免許と、無線機(無線局)の免許の2種類が必要です。
車で例えると、前者が自動車運転免許、後者が車検とイメージするとわかりやすいでしょう。
デジタル簡易無線(登録局)は”登録”を受ける必要があると書きましたが、登録≒免許と考えていただければよいです。細かい違いはありますが…
▶レジャーの連絡用途にはデジタル簡易無線(登録局)がオススメ
電波法にも定められているのですが、アマチュア業務とは「金銭上の利益のためでなく、もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務」とされています。つまり、アマチュア無線とは、「無線愛好家と話してみたい、自分の無線の電波がどこまで飛ぶか試したい」などという興味・通信技術の探求などの目的用の無線であり、単なる連絡用途としては最適とはいえません。
ですから、レジャーでの移動中や遊んでいる時に連絡用ととして使うのであれば、デジタル簡易無線(登録局)が最適です。
また、アマチュア無線では、通信中にコールサイン(自分に割り当てられた通常6桁の英数字)を読み上げることが法律で定められているため、連絡用途では煩わしいです。
さらに、アマチュア無線はデジタル簡易無線に比べ、混信(ほかの無線通信と被る)や妨害(ほかの無線局に邪魔される/ほかの無線局の邪魔をしてしまう)が発生しやすいため、デジタル簡易無線(登録局)を使うのが良いでしょう。
○無線機の形状を選ぶ
次は無線機の形状です。
大きく分けて、「車載型」と「携帯型」の2種類あります。
▶車載型無線機
車載型の無線機は、その名の通り車に固定して使うことを想定した無線機です。
弁当箱大の本体で、バッテリーは搭載していないため、車から電源を取り出して接続し、屋根などの車外にアンテナを設置してケーブルで接続して使用します。通話用のマイクも接続して使用します。
▶携帯型無線機
対して携帯型の無線機は、いわゆるトランシーバーと言えばイメージがわくと思いますが、手に持って使う無線機で、バッテリーを装着し、アンテナも本体に直接取り付けられているため、それだけで使用可能な無線機です。
▶▶車載型無線機を使うメリット
・安定動作ができる
車両に取り付けて連続使用することが想定されており、外部電源での動作なのでバッテリー切れの心配はありません。また、連続使用のための放熱対策もしっかりされているため、本体が加熱して動作停止、出力制限ということもありません。
また、ケーブル取り回し等を工夫して取り付ければ、見た目も良く邪魔になりにくい形で取り付けが可能です。
本体と表示部が分離する構造の無線機もあるので、本体はシート下、表示部のみダッシュボードへ、といったようなスマートな取り付けも可能です。
・送受信効率が良い
外部アンテナを接続する前提の構造のため、余分な変換ケーブルなどを使用しなくてもアンテナが接続でき、携帯型無線機に比べて送受信の効率を良くすることができます。
つまり、より遠くの相手と交信できる確率が上がります。
・最大送信出力が大きい(アマチュア無線の場合)
一般的に、車載型無線機の最大送信出力(出せる電波の強さ)は20W〜50Wと大きいです。(資格・機種による)
対して携帯型無線機はほとんどの機種で5Wとなっているため、車載型無線機の方がより遠くの相手と交信できます。
なお、デジタル簡易無線の場合は車載型でも最大5Wという決まりになっているので、この点では差はありません。
▶▶車載型無線機を使うデメリット
・取り付けた車両以外では利用が困難
車載型無線機は一旦車両に取り付けると簡単に移設ができないため、車外に持ち出して使ったり、別の車両を使う時にすぐに移設はできません。
・本体価格が高価
携帯型無線機に比べて、本体価格が若干高い設定になっています。
▶▶携帯型無線機を使うメリット
・車外に持ち出して使用できる
携帯型無線機は、車両に搭載して使うことも、車外に持ち出して使うこともできます。
携帯型無線機を車両に取り付けて使うときは、本体を汎用のホルダーなどで固定して使用します。別売りの外部電源ユニット等を使用して、シガーソケットなどから電源を供給してバッテリーを使わずに運用も可能です。こうすれば、車外で利用するときのためにバッテリーを温存することもできます。
また、アンテナも変換ケーブル等を使用して、車外に取り付けたアンテナを使用することで、より広い通信エリアを確保できます。
さらに、本体を車両に固定し、外付けハンドマイクを使用することで、運転中に使用することも可能です。
(*携帯型無線機本体を直接手に持って運転中に使用すると、道路交通法違反となります。)
車外に出て使用するときは、これらケーブルを外して本体直付のアンテナ、バッテリーを装着することで、例えばスキー中、オフロード走行の誘導用などにも利用でき、利用の幅が広がります。
▶▶携帯型無線機を使用するデメリット
・放熱の問題で機能低下する場合がある
あくまで携帯用に最適な設計となっているため、連続使用よりも携帯性を優先した構造となってい流ものが多く、連続して使用すると本体が熱くなり、一時的な機能停止や出力低下などの制限が起きることが多いです。
・車両への取り付けがスマートではない
車両に携帯型無線機を固定して使用する場合、小さな本体に、アンテナケーブル、電源ケーブル、外部マイクのケーブルが全て接続されることになり、ケーブルが集中することで取り回しが悪くなり、あまりスマートではないです。
・送受信効率が低下する場合がある
携帯型無線機本体のアンテナ端子は、小さなコネクタが採用されており、細い変換ケーブルを使用する必要があります。一般的に、無線機のアンテナケーブルは細くしたり接続点を増やすとすると効率が悪くなります。また、機械的な構造も小型化が優先されているため、車載型無線機に比べて通信エリアの面では不利になることが多いです。
・最大送信出力が5W (アマチュア無線の場合)
アマチュア無線の場合、送信出力は、車載型無線機の場合20〜50W(資格・機種による)となる一方、携帯型無線機は基本的に最大5Wとなるため、通信エリアには大きな差が出ます。
デジタル簡易無線の場合は車載型でも最大5Wという決まりになっているので、この点では差はありません。
以上のことを総合して、どの無線機を使うのか、どの形状の無線機を買うのかを検討されると良いと思います。
まとめると、「車を降りてからも無線を使いたいか」で決めるとよいと思います。
車に乗っている時だけ無線が使えればよいのなら、できるだけ車載型を選択されると良いと思います。
資金が許せば、車には車載型、携帯型を別で持っておく、のが最高なんですけどね。
▼無線機の例
●アマチュア無線機
八重洲無線株式会社 | アマチュア無線製品一覧
アイコム株式会社 | アマチュア無線機
●デジタル簡易無線(登録局)
ALINCO - アルインコ|デジタル・トランシーバー(ビジネス&レジャー)