第七弾は、サーキットでのライン選択について。
昨年からのやり残しです。実は年末既に書き終えていたのですが...
例によって長いのでお好きな方だけ読んでくださいm(._.)m
参考:
第一弾(最大の正円を描くラインに対する疑問)
第二弾(トレールブレーキに対する疑問)
第三弾(タイヤが発揮できる運動性能)
第四弾(クルマが発生できる運動(Gとヨー))
第五弾(アンダーステアが強いクルマの乗りこなし方)
第六弾(オーバーステア・ドリフト・スピン)
第三弾から六弾までの投稿ではステア特性に合わせたクルマの乗りこなし方を自分なりに考えてみましたが、考えれば考えるほど、唯一最高の走行ラインなど存在しないと確信するようになりました。クルマによって特性は異なるし、クセの出方は速度域やコース勾配によっても変わるからです。似通った材質でできていて、同じ原理で動き、しかし異なる重量配分や駆動方式を持ったクルマ同士を比較するのですから当然のことかも知れません。

さて、今回の投稿では走行ラインについて、実際の走行データ等を見ながら、何に着目して考えるべきか、考えてみようと思います。繰り返しになりますがこのシリーズ投稿ではサーキットでタイムが速い走りを正とします。タイム=平均速度です。高い平均速度を出すためには、どのような考え方をするべきなのでしょうか?
私が思いついたポイントは三つほどあるのですが、
一つ目はコースの区切り方です。
もし、サーキットがストレート→コーナー→ストレートという単純なストップ・アンド・ゴーの繰り返しであれば、第6弾までで考えたクルマのステア特性に合わせた乗りこなし方を意識し、コース幅一杯に最大グリップを使い続けることだけ考えれば良いと思います。でも実際のサーキットはコーナーの連続ですからそういうわけにはいきません。
例えば、下のデータはあるサーキットのS字コーナーで同じクルマを二人のドライバーが運転した際の比較です(若干位置がズレていることを加味して見てください)。赤線のドライバーが一つ目のコーナーの速度重視、青線のドライバーが二つ目のコーナーの脱出重視なのがよくわかります。彼らのどちらが正しいかは、
コーナー中の速度だけでなくその先の加速区間を含めた平均速度で決まる筈です。

とにかく平均速度で考えなくてはならない。だから私は、ラインの選択やミスが影響を及ぼし続ける範囲でサーキットをセクション分けするべきだと考えました。例えば富士でいうと下のような3つのセクションに分かれると思います。この区分けでは、一つのミスは次のセクションに入るまでは影響し続けます。前半高速・後半テクニカルで分けた一般的なセクション分けとは異なりますが、平均速度に着目して最速ラインを考える上では、これらのセクションをそれぞれどう走るかで考えなくてはならないと思います。
二つ目のポイントはクルマの加速カーブに合わせたライン選択です。レーシングカーはそれぞれのサーキットのトップスピード区間でレヴがほぼ吹け切るようセッティングされますが、一般のクルマは普通のサーキットでまず最高速を出せません。そのため、プロレーサーがレーシングカーをベースに言っていることは必ずしも一般のクルマでのサーキット走行に当てはまらないと思うのです。
例えばケイマンSの加速カーブはたぶん下図のような感じになります(厳密に言うと各シフトポイントで加速が途切れ段々になりますが)。平坦な場所では静止状態から最高速の275kmまで1分ちょっと。ぱっと見た感じ140km/h以上のスピード域で徐々に速度の上昇が鈍くなり、カーブの角度が寝てきます。一方、減速は速度域に関わらずほぼ同じ角度の直線を描く筈です。

ここで私が注目したいのは加速カーブが寝はじめるポイントです。これはクルマによって異なりますが、ケイマンSの場合140~150kmくらい。つまり4速以上じゃないでしょうか。それより下のスピード、例えば最大100km/hで通過できるコーナーを10km/h低いスピード(点線)で旋回して加速する場合、二つの加速カーブの位置はそれほど大きく離れません。

つまり加速カーブの角度が立っているスピード域では多少コーナリングスピードを犠牲にしてでも早いタイミングで旋回を終えアクセルを全開にできるようした方が良いケースが考えられます。コーナー後の加速が続く限り、アクセルを早く踏み込んだことのアドバンテージは続く筈。例えば富士の第一セクションを例に取るとこんなイメージです。(実線vs点線)

一方、加速カーブが寝てしまうスピード域、例えば200kmで通過できる地点を190km/h(点線)で抜けて加速した場合、二つの加速カーブがより大きく離れるのがわかります。

つまり、このようなスピード域ではいったん失った速度を取り戻すのに時間がかかるため、コーナーではなるべく大きな半径のラインを描いて高いスピードを保つことが重要なのだと思います。200kmのコーナリングは非現実的に聞こえるかもしれませんが、もしこれが100km/h以上で加速カーブが寝てしまうロドスタで走る場合、絶対にスピードを殺せないコーナーの数はケイマンSより多くなるわけです。もしセクションが上り勾配だったなら尚更ですね。
このように、クルマの加速性能とスピード域によってコーナーでの優先項目は変わると思うのです。だから、
自分が乗るクルマの能力と実際のコーナリングスピードを把握して初めて最適ラインも決まると思うのです。おそらくプロドライバーはそういったことを直感的に理解して組み合わせているのではないでしょうか。
さて最後のポイントは上記の纏めにもなりますが、
セクション最後のコーナーを起点にしてサーキットを逆向きに戻りながら最適ラインを積み上げていく考え方です。上で考えたセクション分けでは、セクション内全てのコーナーでのライン取りが互いに影響しあいます。そして長めの加速区間直前に当たるセクション最終コーナーはコース料理で言えばメインディッシュに当たるのではないでしょうか。まずはメインディッシュを決め、それを完璧に味わうためのストーリーを組み立てるのが正しい順番じゃないかと思うわけです(笑)
だらだらと第7弾まで書いてしまいましたが、当シリーズ投稿はこれで一区切りとします。見落としや間違いもあるでしょうが、私はこれまで書いてきたことをベースに自分なりの走りを考えてみようと思います。他にもタイムでなくレースに勝つための走り方とか、思いつくことはたくさんありますが...色々言ったところで実践できないのでは仕方ありませんし、実際正しいかどうかはタイムと順位のみが教えてくれる筈。やっぱり実践できてナンボ。だから理屈はこのくらいにして実践面を磨こうと思います。
今日のポイント
☆ライン選択が影響を及ぼし続ける範囲でセクション分け
☆クルマの加速カーブに合わせたラインを選択
☆セクションの最終コーナーを起点にサーキットを逆向きに戻りながら積み上げる
長々と失礼しました。
Posted at 2011/01/09 21:03:56 | |
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