2019年01月10日
意外に勘違いしている労働知識シリーズということで、今回は休業手当について。
法律のお話なので慣れない方には難しいと思いますが、思い込みで簡単に判断しがちなところですのでちょっと取り上げてみます。
「資材の仕入れが届かないので今日から数日工場を休む。だから全員休業。」
最近、いろんな業界であり得る状況ですね。
この場合、会社の都合で休まされるんだから賃金払ってくれんだろな?と思うものです。
根拠となる法律はまず、民法の536条2項。
民法には大雑把に書かれていますが、労働に当てはめると、使用者(会社側)の責に帰すべき事由による休業の場合は、労働者は賃金の全額を受ける権利を失わないこととなります。
しかし、民法というのは「自由契約」「対等」の原則で、この規定は任意の規定であるので、双方の合意によって排除できてしまいます。
どういうことかと言いますと、
社長「今回仕入れが届かないから工場動かせないんだ。だから仕方ないのわかるな。なので家帰ってくれ。賃金は仕事ないから今日の分は無しでいいね。」
社員(えー・・・そんなひどい・・・でも社長が言ってんだから仕方ないんだよな・・・)
ということがあり得ます。
これは労働の場合は契約双方が対等ではないことが多いからです。
使用者は強者、労働者は弱者ということが多く存在します。
なので民法だけで対応すると、自由契約であることから双方が理由どうであれ、「はい」と答えてしまうとそれで成立してしまうのです。
このケースに充てると、536条で規定していても、上記のような社長とのやり取りはあり得ることで、これに「合意」してしまうと賃金全額をもらう権利を失ってしまうのです。
そういった強弱関係をカバーするために設けられているのが「労働基準法」というわけです。
この点について労基法では26条において強行規定として「平均賃金の60/100以上の相当額を支払わなければならない」としているのです。
これが一般によく言われる「休業手当」です。
ここで少し戻りまして、「使用者の責でない」ものとしては天変地異などいくつかの理由がありますが、例で挙げている「仕入れ先から資材が届かない」というケースは、届かないようなことの無いように使用者は対策を講じておくべき、という点から使用者の責として扱われます。
なので、こういうケースの場合は使用者(会社)の責任だから休業手当として平均賃金の60/100以上払ってよ!というのが一般に知られている対応です。
では振出しに戻って、民法の全額支払いは何処行ったのでしょうか?
ここが勘違いの多いところ。
ますは労働契約、就業規則を見てみます。
そこで、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合は休業手当として云々と記載があれば、これは事前に使用者、労働者双方がこの民法の全額支払いの規定を双方合意によって排除している、ということになるのです。
労働契約を結んで仕事しているわけですからね。
なので、労働者を保護する労基法26条が強制的に適用されることになるのです。
では・・・
労働契約も就業規則にもそんなことどこにも書いてないよ・・・?
という場合はどうなるのでしょうか?
その時は合意によって民法の規定が排除されていないことになりますので、労基法の60/100ではなく民法の規定に基づき、休業しても全額支払いを請求することができるのです。
あなたの勤め先はこの対応をされていますか?
就業規則に休業手当の項目が書かれているのはこのためなのですね。
逆にいえばこういう規定がないときは会社にとってはヤバいってわけです。
時間のある時にでも書類を確認してみてください。
また何か、思い込みで勘違いされているような労働ケースがあれば書きます。
何か質問等があればお寄せください。
Posted at 2019/01/10 23:27:09 | |
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