2009年06月05日
三菱自動車から7月にi-MiEVが企業向けに発売されるのは既知の通りですが、とうとう正式発表されましたね。先月位から、三菱自工内でディーラのキーマン向け説明会が開催されていたらしいですし、水島工場でも生産開始が報道されていますから、まさに絶好のタイミングです。
株価も、昨日からすごい勢いで跳ね上がってますが、今回はタイミング的に見てもインサイダーの疑いは無いでしょう。(笑) 前回があまりに不自然でしたもんね。(^_^.)
さて、誰もが驚いているのが、その価格でしょう。なんと
459万9000円っ!
高っ! 今の三菱車で一番高い車です。(笑)
補助金メイ一杯使っても、約320万円也...。
三菱はこの価格で、この車が売れると考えているのでしょうか。どうやら開発関係者も、正式に価格を知っていた人は少ないらしく、結構驚いているみたいです。
いくらフリート向けとは言え、このご時世にこの価格。かなり厳しいものがあるというのが、大方の世間の見方でしょう。私もまったく同感です。200台/月前後の販売計画らしいですから、エボの実売台数と同じ位でしょうか。国や地方自治体、公共団体等の大型案件が無ければ、達成はかなり厳しいと感じます。
発売当初はともかく、中期的にこの価格でそれ程売れるとは思えません。大体、今の三菱車で1000台/月売れる車種は僅かですし。今後の量産や技術開発等に伴うコストダウンを期待したいところです。
以上は買う立場としての感想です。
しかしっ! エンジニアとしての視線で見た場合の評価は、まったく別です。この価格、本当によく頑張ったと思います。
おそらくコストの問題は電池でしょう。MiEVの電池はいくら位するのか?
市販のリチウムイオン電池代表として、ラジコン動力用リポ(リチウムポリマー。基本的にリチウムイオンとほぼ同じ)で価格比較してみましょう。
RCの世界でもリポの性能は日進月歩で向上し、価格は下がっています。バッテリの性能にもよりますが、今だと大体2セル(7.4V)、4000mAhの30C放電で7000円位だと思いますが、更に安めに6000円と仮定します。
MiEVの公表されているバッテリ容量は、1セル(3.7V)、50Ahを88個搭載していますから、2セル(7.4V)換算で容量は2200Ah。つまり、RC用リポ550個分に相当します。この価格は330万円...。
実際にはRC用よりはるかに高い耐久性と安全性に富むセルを使っているでしょうから、価格はもっと高いと考えるのが妥当です。更に、リチウムイオンはバッテリ充放電管理が重要であり、そのための装置も新開発でしょう。当然モータ制御装置も新開発。更に、今まで存在していなかったものですから、様々なスペックは1から決めているはずですし、テスト項目も手探りのはず。ここにくるまで相当多くの不具合もあったでしょうし、開発費は相当かかっていると思います。
しかも、各ディーラでメンテ出来る体制を新たに構築する必要がありますし、そのための費用も掛かります。しかも、万一何か問題が発生した際のリカバリ費用を考えると、相当怖いものがあります。とにかく、事実上世界初の量産電気自動車なのですから、何が起きるか分かりません。きっとプロジェクト責任者の方は、胃潰瘍寸前だと思います。(^_^.)
三菱はリコール問題で相当弱っており、全然体力ありません。そこにこの不況ですから、トヨタみたいに新型プリウスを、インサイト潰しのために力技で価格を無理やり安くした様な財力は無いでしょう。もしこれがトヨタだったら、恥も外聞も無くステラ潰しするため、(笑)、きっと300万円以下で出して、補助金使って100万円台で買える様な価格設定にすると思います。まぁ、スバルは傘下なのでそんな事は無いですが。(笑)
約460万円の価格、決して安くはありません。しかし技術的に見ると、高くは無いと思います。おそらく三菱に儲けはほとんど無いでしょう。むしろ、よくこの価格で出せたと思います。個人的には、開発陣の努力に惜しみない拍手を送ります。
しかし、買う人にとってはそんなの関係ありません。高いものは高い。これはどう考えても高いです。実用航続距離が120Km前後とか、充電設備とか、電池寿命とか、それ以前の話です。それ程売れるとは思えません。国策による購入の動きが無ければ、相当厳しいと思います。
今世界はエコの方向に動いており、電池の研究開発も盛んです。新たな電池工場も次々稼動を開始し、世界的に使用量が増えれば劇的なコストダウンも実現出来るでしょう。モータや各種制御装置も、性能向上とコストダウンが進み、大きなコストダウンが期待出来ます。EVには内燃機関の様に吸排気系や高コストなエンジン、複雑な変速機構といったものが一切不要ですから、基本的には相当低コストに作れます。
維持にう関しても、オイルやプラグ交換不要ですし、エンジンの様に痛む所もほとんどありません。ベアリングさえ交換すれば、ブラシレスモータは事実上メンテフリー。つまりトータルのメンテコストはとても安く済みます。まぁ、バッテリは別ですが。(^_^.)
もしもこのまま上手く行けば、5年後には200万円切る価格になりそうな気がします。その頃には航続距離も伸び、多少はインフラ整備も期待出来ますので、いよいよ本格普及が始まるかも知れません。そうなれば更にコストは下がり、ますます普及するという良いスパイラルが始まります。
話は変わりますが、三菱の車両開発部門総責任者はIさんという方でした。当然面識はまったく無いですが、噂に聞くと車好きな方で自らもエボのハンドルを握り、車のイベントにも参加されるそうです。そう言えば以前、三菱の大きなイベントに行った時に、奥様(だと思う(笑))と二人、仲睦まじく歩かれている姿を見た事もあります。
このIさんが、今年に入って開発部門の責任者から営業部門の責任者に異動したという話を聞きました。アイの開発はダイムラーの横槍やリコール問題で、何度も頓挫しそうになったらしいですが、Iさんが必死になって守ったそうです。この車が世に出たお陰で、三菱の見方が変わった人もいると思います。
販売面で見ると、アイは最近は芳しくありませんが、この車があったからこそ、MiEVが出来たとも言えます。大体、三菱で販売の芳しい車は無いですが。(^_^.)
Iさんの異動、そんな販売不振の詰め腹を取らされてか、あるいはMiEVの販売体制を磐石のものにするためなのか? 少々気になるところです。
果たして三菱の、MiEVの未来や如何に?
Posted at 2009/06/05 17:18:12 | |
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電気自動車(EV) | 日記