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2010年09月23日

備忘録 18 「幻の日本発・ミッドシップ4WD」 その8 ~日産・MID4 第3回~

備忘録 18 「幻の日本発・ミッドシップ4WD」 その8 ~日産・MID4 第3回~  「技術の日産」と、その復興。

それを目指して日産自動車は、二つのミッドシップスポーツカープロジェクトを立案する。

そのうち一つは、「2+2シーターのミッドシップ車」。そしてもう一つこそがミッドシップレイアウト+4WDシステムを組み合わせた「MID4」であった。

スカイラインシリーズの生みの親である桜井眞一郎技師主導の元、MID4の製作は進められ、様々な苦心と苦難の中、MID4の試作車が完成した。それが後に「MID4-Ⅰ」と呼ばれることになるクルマであった。


~『MID4-Ⅰ』の登場~

1985年(昭和60年)9月。ドイツはフランクフルトで行われたモーターショー。そこで発表されたMID4は、コンセプトカーと呼ぶにはあまりにも完成されており、いつ販売されてもおかしくないようなクルマであった。

実際、MID4は報道陣から多大な注目を浴びることとなり「いつ発売になるのか」「値段はどれぐらいか」「ラリーにも投入されるのか」、などと言った質問が日産関係者に多数投げかけれらた。

そのMID4の主要還元は、下記のようなものであった。


全長×全幅×全高:4,150mm×1,770mm×1,200mm
ホイールベース:2,435mm
ホイールトレッド前/後:1,470mm×1,540mm
重量:1,230kg
重量配分 前/後:40/60

エンジン:VG30E型(横置き)
エンジン形式:水冷式 60度V6 NAエンジン

排気量:2960cc
ボア×ストローク:87mm×83mm
圧縮比:10:1
燃料供給:電子制御燃料噴射

最大出力:230ps(6000rpm)
最大トルク28.5kg/m(4000rpm)

冷却系:フロントマウント式ラジエーター

ステアリング:ラック&ピニオン式 パワーステアリング搭載 HICAS
変速機:5速MT(ブルーバード・マキシマ用)
クラッチ:シングルディスク
駆動方式:フルタイム4WD(ファーガソン式センターデフ搭載)

サスペンション(フロント):独立マクファーソン・ストラット
サスペンション(リア):独立超ワイドスペース・ダイアゴナルAアーム
ブレーキ:前後ベンチレーテッド・ディスク
タイヤ:前後205/60VR15


↑MID4の第一次試作車。ライトがリトラクタブルでないモデルの珍しい画像。

当初は31型フェアレディZと同じパラレルライズアップ式であったライトはリトラクタブル式に変更。

ボディ外板をFRPで作られたことにより、そのボディサイズ+4WDマシンでありながらも1,230kgという軽量を実現(参考:SW20型MR2、GC8型インプレッサが1,260kgです)。

15インチに60扁平タイヤや、このボディサイズながらもストラット式サスペンションの採用など、時代を感じさせる部分も所々もあるが、モーターショーに登場したMID4は間違いなく、「和製スーパーカー」の様相を呈していた。

ただし、このMID4は、あくまでも新技術の探求と、次世代の開発者育成を目的として作られたクルマであった。そしてまた、日産自動車本社は「絶対にMID4を走らせるな」と厳しく命令を下していたのである。

しかしながら、ドイツ・日産が独断で、「いい宣伝になる」として、このMID4をヨーロッパ数カ国で走行させてしまったのである。

見た目は市販車レベルの完成度を誇っていても、結局は試作車。いくらMID4と言えども、うまく走るはずはなく、ようやく日本に戻された時には、MID4のチューニングの命令が下されたと言う。

※参考までに。トヨタが開発中のミッドシップレイアウト+4WDシステムの「MR-Sハイブリッド」。MR2、MR-Sと20年に渡りミッドシップを作り続け、そしてまた、グループB仕様MR2=「222D」でミッドシップ4WDの開発も経験のあったトヨタですら、MR-Sハイブリッドの走行試験には、すでに7年の歳月を費やしています。いくら「技術の日産」とは言え、たった1年か2年で市販に耐え得る走行性能を実現するのには難しかったのでしょう。


MID4のチューンは、元・プリンスワークスドライバーの古平勝に一任されることとなり、サスペンションを中心にMID4は手直しが施され、見違える程に「走り」は改善されたと言う。

後に栃木のテストコースで行われた比較走行試験では、ポルシェ911、アウディ・クワトロクーペ、プジョー205、メルセデスベンツ190E・コスワースチューンなどとの比較が行われた。

その中にあってもMID4は「よく曲がる」クルマであり、その「走り」は、ポルシェ911とよく似ていたと言う。

※不思議な話。MRと言うよりRR、と散々酷評されるトヨタのMR2(SW20)も、古いポルシェ911と良く似たドライブフィールであると称されています……


そして同年。年の暮れも近くなる中、日産自動車は追浜のテストコースにて報道陣を集め、MID4の試乗会を行った。その際におけるMID4というクルマについて、「カーグラフィック」1985年12月号は下記のように綴っている。

「簡単な結論。誰もが容易に安全に、ひとかどの運転が出来てしまうフールプルーフなGTである。エンジンは大排気量の余裕とノンターボの自然さを兼ね揃える」

「4WDメカニズムは、この出力とトルクをよく調教して活用している。基本的にはレールに乗ったような高速コーナリングが出来るけれども、積極的にやる気になれば、どういう姿勢にももちこえる二面性もあって、大いに乗り甲斐はある。」

「ただ設計者の方では『ドライバーのウデのふるいようのない、どうやってもスラリと走れてしまう水準まで追求したい』のだとか」

「いずれにしても、今から貯金だけは始めておいた方がいいかもしれません」

……と言ったように。MID4はパンチのある加速や過激でシビアな操作性などのマニアックさを可能な限り排し、「何も努力しなくてもプロと同じぐらい上手に速く走れてしまう」という桜井眞一郎技師の方針通りに味付けのなされたクルマであった。


↑追浜における試乗会のMID4・リアビュー

ただ、このMID4の数少ない非難点としては、デザインの問題があった。デザインを担当した前澤義雄氏は、「クルマは面白いがデザインがねぇ……」と散々聞かされ、開発時から困難のあったデザインとボディ成形についてはある程度の覚悟はしていたものの、「言い訳の出来ない悔しさはなかった」と後に語る。

そしてまたその試乗会においても、フランクフルトのモーターショーでなされたのと同様の質問が数多くぶつけれたという。

これについて、桜井眞一郎技師は、

「売る気ではじめたんじゃなかったんですが、報道関係の皆さんのほうで、発売時期とか値段とか、どんんどん早手回しに考えてくださってるようなので、こちらもそのうち、引っ込みがつかなくなるかもしれませんねぇ……」

と語った。

そして実際。その水面下では、さらなるMID4の性能の向上と、市販化に向けての改良とが進められていたのである……


(第4回に続く、と信じたい……ていうかそろそろ終わらせたい……)

参考文献:

・「ベストカー」号数不明(グループS仕様AWとMID4の記事について)/三推社

・「driver」1985年10月20日号/八重洲出版

・「CG CAR GRAFFIC」1985年12月号/二玄社
・「CG CAR GRAFFIC」1987年12月号/二玄社

・「モーターファン別冊 illustrated Volume32 特集 ミッドシップ 理論と現実」/三栄書房


参考サイト:

・「ウィキペディア」
http://ja.wikipedia.org/wiki/

その他。MID4の歴史に関連する(かもしれない)霧島のブログ:

備忘録 11 「幻の日本発・ミッドシップ4WD」 その1 ~はじめに~
備忘録 12 「幻の日本発・ミッドシップ4WD」 その2 ~トヨタ・222D 第1回~
備忘録 13 「幻の日本発・ミッドシップ4WD」 その3 ~トヨタ・222D 第2回~
備忘録 14 「幻の日本発・ミッドシップ4WD」 その4 ~トヨタ・222D 第3回~
備忘録 15 「幻の日本発・ミッドシップ4WD」 その5 ~トヨタ・222D 第4回(終)~

備忘録 16 「幻の日本発・ミッドシップ4WD」 その6 ~日産・MID4 第1回~
備忘録 17 「幻の日本発・ミッドシップ4WD」 その7 ~日産・MID4 第2回~



ブログ一覧 | 備忘録・日本発 ミッドシップ4WD | 日記
Posted at 2010/09/23 17:09:02

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この記事へのコメント

2010年9月23日 19:55
此の当時でフルタイム4WDでオンザレールで曲がってゆく・・・やはりMRレイアウトが効いているんでしょうか?? 此のエンジンをターボ化すれば更なる性能UPが見込めるでしょうね・・・ まぁその他諸々の見直しが必要でしょうけど(汗)

コメントへの返答
2010年9月24日 9:32
おお、スルドイ!

このMID4。やはり日産初のミッドシップということもあってか、エンジンルームは既にギッチリ詰まっていて、ターボを載せる余裕はなかっし載せるつもりもなかったそうです。そして桜井技師曰く、

「NAの方が自然でいいけれど、売るなら営業的見地からターボなんて要求が出て妥協することもあるかも」

だそうな……。そして次の「MID4-Ⅱ」ではターボを搭載することに……

この時代の4WDは、確かに「曲がらない」クルマでしたね……2年後に出る32型GT-Rもアンダーの強いクルマでしたし。

そこはやはり、FRPによる軽い車重と、Z軸慣性の少ないMRならでは、だったのかもですね!
2010年9月24日 0:09
なんだか前半部分が180SXで、後半分がヨーロッパに見えます…。
機能上の必然?

ホモロゲとかもあったでしょうに、何で売るつもりが無かったんでしょう?
コメントへの返答
2010年9月24日 9:40
ミッドシップのデザインと言うのは、レイアウトの問題上、非常に制約があって難しいらしいですからね~。

ラジエーターの位置や、エンジンルームへの吸排気効率、熱対策、空力的処理……

どうしても、どんなメーカーも。結局、行き着く所は同じなのかもです……。AW11とフィエロとX1/9なんて激似ですしね(笑)

MID4は、元々、桜井技師が自分の持つ権限と裁量の元で「個人的に」作ったクルマだったので、日産上層部からの指示の元で作ったクルマではなかったですからね~。

「222D」なんかはトヨタによる世界制覇を目指して最初からグループB参戦を目的にしてましたけど、MID4はレースに出すとか全くそういう気もなかったみたいです……

作ってみたら案外、というかあまりにも好評だったので、市販化の流れになったようでございます。
2010年9月24日 0:21
うーん、これは売ってもよかったような気がするんですけどねえ。
飽くまで技術のためのものだけで走らせるためではないにせよ、何も『絶対走らせるな』なんて厳しい命令まで下さなくてもよかったんじゃないかと…。
コメントへの返答
2010年9月24日 9:48
確かに、走行性能やら何やら見てると、もはや市販前提車レベルに見えるんですけどね~

ただ、当時はまだFRPの成形技術も未発達で、ボディをFRPで量産するにはまだまだ技術が足りなかった、てなこともあるかもです……初代MR2のリアスポイラーは、それが理由で最初期は木製でしたし(笑)

そして当時。ラリーの世界では4WD技術は当たり前でしたけど、まだまだ「4WDは曲がらない」と言われた時代でしたし、それに4WSを組み合わせたり。さらにはまっすぐ走らせることすら難しいミッドシップレイアウト、ですからね~。

例えばこれまたMR2開発時、はじめはまともにまっすぐすら走らず、はじめに乗った故・成瀬弘さんは「俺を殺す気か!」と思ったそうな……

MID4も、走りに関してはそんな血の滲む苦労があって、まだまだ未完成だったのかもです(笑)
2010年9月24日 3:04
「31型フェアレディZと同じパラレルライズアップ式であったライト」

この画像って見たことないんです、、実は。。
イメージは何となく想像出来るんだけど(^^ゞ

どこかに画像が転がってたら見せて下さいませ~。


デザインに関してもどうしても「フェラーリ的なデザイン」になるコトを避けたかったとか。。
そのあたりの苦悩は特にリア廻りを見ると感じますな。
コメントへの返答
2010年9月24日 11:25
フェラーリを避けたかった……だと? いやだってどう見てもフェラーr(ゲフンゲフン

だいぶ洗練されたMID4-Ⅱに比べたら、Ⅰは色んな所の色んなクルマを思い起こさせる部分はありますね~。たぶん、どこのメーカーのミッドシップも、同じ苦悩があるんでしょうね~(笑)

パラレルライズアップ式採用のMID4ですか~!?

MID4の第一次試作車がこれを採用してたそうですけど、確かに全然見ないですね~。

一応、1985年の「カーグラフィック」12月号に、ライトを上げた画像なら、ちっちゃく掲載されてますよ~。

あと、どこかでパラレル式の走行写真も見たような……何かの雑誌ムックだったかなぁ……ちょっと手元にはございませぬ。

いずれにせよ、肝心の(?)格納時の写真は無いですけれどorz

とりあえず、↑のブログに追加して載っけときます~。

あと、「MID4-‘Ⅲ’」の画像&掲載時のニューモデルマガジンXがいまだに見つかりませぬ……また何か情報あったら教えてください~
2010年9月24日 12:21
こんにちは。

出てほしかったナーMID4

んで、SW(AW) FC 22B ストラトス 辺りと筑波あたりでバトルさせたらさぞ盛り上がったろうに…


勝者は…誰だろ(笑)自分的にはSWかストラトスに勝ってほしいよう
コメントへの返答
2010年9月24日 19:52
こんにちは~

MID4は、グループB仕様4WDターボ化AW型MR2である「222D」と違って、何度もその走行が公に披露されてすらいましたしね~。

荒々しいラリーカーの4WDと言うよりは、アルシオーネSVXのような、大人しいグランドツーリング向け4WDだったようですが、その実力は是非とも他車種と比べてみたかったですね!

個人的にはその中だと、インプレッサ22Bに期待かなぁ(←裏切り者)

結局、なぜMID4が世に出なかったのか。出たとしたら幾らぐらいの値段になったのか。それについては次回をお待ちくだされ~
2010年9月24日 13:07
追加写真、ありがとう☆

遠い昔にどこかで見たことある様な、、写真ですな。
何の雑誌だったかな?

いずれにしても、愛嬌ある顔付きだね~。
迫力はちょっと感じられないかも(-o-;)


マガジンX。。
(* ̄∇ ̄*)ククク

お任せあれー(*´∀`)♪

明日って刈谷に来れるのかね?
コメントへの返答
2010年9月24日 19:57
どうもです☆

スキャナがぶっ壊れてて、あんな画質の悪い写真で申し訳ないです……。

これが「カーグラフィック」の1985年12月号に掲載された写真ですね~。追浜の試乗会に登場した時の写真らしいです!

しかし萌え~ですよ。リトラとは違ったかわゆさがあります(爆)

Z31しかり。パラレルライズアップはむしろ、ライトOFFの時の姿がゾクゾクしますからね~。ホントはそっちが見たかったんですけどorz

何!? まさか……まさか「ニューモデル」、遂に発掘されたのですか!?

とりあえず、やっとこさ予定もハッキリしてきましたので、明日の刈谷ハイウェイオアシスは襲撃予定をしております☆

久しぶりに伊勢湾岸道も走りたいですしね~!

……ただ、高速降りてから迷子になりそうですがorz

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