
帰省した時、広島県の三次に行きましたので
前々から行きたかった「日本妖怪博物館」に
立ち寄ってきました。
意外と面白かったので日記にします。
広島の三次市といえば「鮎」と「霧」と「ワイン」の土地。
大雨の中、川の駅が開いてたので、朝飯を食べるため立ち寄る。
鮎の塩焼きランチを食べようと思ったけど、朝11時以降から鮎を焼き始めるのでまだない、とのこと。
仕方なく今すぐ食べられる鮎蕎麦を注文。甘い出汁の蕎麦で結構美味しい。
でも塩焼きとご飯を食いたかった…。今回蕎麦ばっかりだ。
10:00開園と同時に到着。
「日本妖怪博物館 三次もののけミュージアム」
結構本格的な、民俗学としての妖怪伝説の記録を展示している博物館です。
ゲゲゲの〜とか、Watchとか、ぬ~べ~とか、そっち方面じゃない、大人の真面目な方です。
妖怪画の絵巻が展示されています。
妖怪画なんて、江戸時代でも、他の浮世絵とか錦絵に比べたら、何ランクも落ちる絵だったと思いますが、よくこんな綺麗に残ってると思う。
塗料としての「墨」は、風化にかなりの耐久性がありますね!
これは「斎藤月岑」が文政10年頃に作成した人面草紙。(本物)
これなんて、もうすでに現代の漫画の原型じゃないか。
これは妖怪画家で超有名な「鳥山石燕」の天明〜安永5年の作品。(本物)
良い構図で独特のタッチだわ。好き。
どこかユーモラス、それでいてペーソスも感じる印象的な画風。
こちらはいきなり新しく、昭和初期の怖い紙芝居。(本物)
神戸の紙芝居制作会社画作った怪談百物語というシリーズらしい。
これは江戸の版画界のスーパースター「蔦屋重三郎」の妖怪画。(のコピー)
こちらは浮世絵師の「歌川国芳」の妖怪画。(のコピー)
私は国吉の妖怪画はあんまり好きじゃない。
なんというか妖怪がみんな生命力あふれてて、ゾクゾクする感じがあまり湧き出てこない。
こちら超有名どころの御大「葛飾北斎」の妖怪画。(のコピー)
怖さの表現もあるある!
浮世絵師「月岡芳年」の妖怪画。(のコピー)
人の念というものを、ぐいぐい感じさせる画風。
さて、三次には「稲生物怪禄」という絵巻が寛延2年(1749年)に作られて、今でも残っています。
簡単に言うと、16歳の稲生平太郎という人物が、三次にある比熊山に肝試しに行ったところ、その日から30日間にかけて様々な心霊現象が平太郎を襲った、という物語。
怪異の真意はわかりませんが、平太郎という人物は歴史書に実在するし、肝試しをした比熊山も実在するし、後に30日間の怪異を平太郎の話を聞きながら書にまとめた広島藩の柏生甫なるものもちゃんと存在していた人物です。
扱いは、創作物というより、一応は平太郎の身に起こったことの記録本となります。

<日本妖怪博物館のすぐ近くにある、肝試しを行った比熊山>
「稲生物怪録」は江戸後期に国学者の平田篤胤によって広く流布され、明治以降も物怪録を題材にした芸能作品がたくさん出てますし、近年は荒俣宏や京極夏彦、水木しげるも、この物語を民俗学としての調査に来てるみたい。
これが稲生物怪録(のうち絵巻と呼ばれる3種、本物)。
うほー、よくこんな綺麗に残ってるな!
多少紙が風化もしてるけど、塗料の発色も申し分なく残ってる。
これは絵が中心の絵巻。
良い絵だ、少しの怖さも感じる、とても良い絵だ。
絵だけでなく、短文も付け加えられている詞書甲類と言われる絵巻。
こちらは3つの中で一番先に作られたであろう詞書と絵を記す系統の絵巻。
私も高校生まで広島県に住んでたので、稲生物怪録は有名で、今でも本を1冊持ってる。
他では見られないユニークな妖怪?や怪異が、昔からとても好きだった。
首に手が付いた女性が出てくる怪異とか。
訪ねてきたお客さんの頭が割れて、真っ赤な色をした赤子が出てくる怪異とか。
気がつくと、門に大きな婆婆の顔が覗いてた怪異とか。
…という、ユーモラスな化け物が出てきて、明らかに平太郎を怖がらせようとさせる怪異が多いのだが、その中には怪異なんだけど、怪異というには微妙な現象が現れる日もあって、それが子供心に印象に残ってたりします。
これは寝てると天井からたくさんひょうたんが育ってくる怪異。
他にもチョウチョが無限に部屋に入ってくる怪異もあったな。
客人がいきなり乱心して暴れ出す怪異。これは怪異なのか?
化け物が出てくるより、こういう方が私だったら怖いかもしれん。
意味がわからなくて。
平太郎を驚かそうとしてるのかしてないのか微妙な怪異もあって、なんかダウンタウンの廃旅館一泊二日の罰ゲームを見てる感じで、楽しめる絵巻と思う。
ちなみに絵巻の最後30日目は、妖怪の総大将が登場し、子細を語った後で、平太郎の肝の座った態度に感服し、大勢のもののけの眷属を率いて去っていく、という内容で物語は終わります。
昔から知ってた本物の稲生物怪絵巻を見れて眼福でした。
妖怪博物館、楽しかった。
夏休みで子どもが多かったですが、怖いと言って泣いてる子どももいました。
私のような歳だと妖怪はユーモラスと思いますが、子どもには怖いんでしょうね。
帰省から東京に戻って、鮎の塩焼き食べられなかったと言うと、家内が作ってくれました。
ありがたい。ああ、自分の家は落ち着くなぁ。
おまけ。
眠くて仕方ないモカちゃん。
お前もそのうち尻尾が別れていって妖怪になるのかね?
是非なってくれ。