
先日、ガレージエイトさんから嬉しい申し出をいただいた。オイル漏れしているパワステラックを、部品取り車から外してレンタルして下さるという。助かった!早速モンツァに電話してT工場長に話をする。
「分りました。でも脱着工賃とかは二重になってしまいますけど、いいですか?それから、今リフトが全然空かないので、5月のその週に出来上がるというお約束もできないんですけど、いいんでしょうか?」
「構いません。全国ミーティングに対しては、なるべくベストは尽くしてみたいので。宜しくお願いします。」
それでも、あと1ヶ月以上は紺豚号の美しいお尻を見れない。1月末に入庫したから、もう2ヶ月だ。もしかしたら、オイルを継ぎ足しながらなら、一時帰宅も出来るかも知れない。そう思って今日の午後、モンツァをP6で訪ねた。
到着すると何だかとんでもないクルマが。

「これって..フォードGT40ですよね...」
「ええ、レプリカですけどね。」とN店長がさらっと言う。
「何でこんなのが...」
「お客さんのをお預かりしてるんですよ。」
恐ろしい店だ。私などはほそいほそい客だ。体は太いけど(笑)

「Tさん、もしオイル漏れが継ぎ足しで何とかなる領域なら、一度自走して家まで帰りたいんです。ここに置いておくのも場所を取って申し訳ないし、456のお尻が見られないと悲しいし。」
「それは無理ですね。床を見て下さい。」

「え、これパワステオイル?」
「そうです。毎日拭いて帰るんですけど、これだけ毎日出てるんです。いま継ぎ足したら、プシューッてふきますよ」
こりゃダメだ。
店長のNさんに景気の話を振る。太いお客の多いここモンツァの売り上げが上がってたら、アベノミクスはホンモノだ。タクシー運転手さんや、Nさんのような業界人に話を聞く事で、これからの社会の動きが分るのではと思っている。それを探りに来たのでもある。
「Nさん、クルマ売れてます?」
「今年に入ってダメですね。去年よりひどい。」
「え、でもアベノミクスで富裕層は潤ってるんじゃ..」
「みんな実体経済が伴わないことを知ってますよ。もう少ししたら売れ出すかも知れませんけどね。」
まだまだのようだ。
「修理ばっかりでも、儲けは限られてますから。」
ごめんなさい。私も買ってません(笑)
私が
「そういえば今度ガリバーが南港にファラーリとか旧車を扱う店を出したらしいですね。」と言うと、
「どうしてそうなったか解りますか?」とNさん。
「利益率が高いから?」
「まあ、それもありますけど、一番は中古車の下取り価格が上がってるんですね。エコカー補助金のお蔭でハイブリッドや新車が売れる。売れるのを後押しするために、ディーラーが下取り車の価格を上げてるんです。そうすると高取りでクルマを集めてたガリバーにクルマが入らない。あれだけイケイケドンドンで来たのに、昨年一年で2000億の赤字らしいですよ。今までの利益が吹っ飛んだらしいです。」
「ええっ!」
「そうすると仕方ないから、利益率の高そうなフェラーリとかを売る事を考えてるんですよ。」
「でもメンテなんか出来ないでしょう?」
「そうですよ。だから難しいと思いますよ。」
Nさんが続ける。
「しかし、政府は自動車メーカーを助けるためにエコカー補助金を出した。でも現地生産をかなりやっている日本車メーカーは、為替が円高になっていてもそれほどダメージは受けていないんです。それに税金を投入してテコ入れしている訳ですよ。どうなってるんだ!って楽天の三木谷さんがTVで良い事言ってましたね。おかげで中古車屋は厳しいです。小麦粉の値段が上がったから、それこそパン屋や粉もん屋みたいな零細企業がばたばた潰れてます。」
「なるほど。」
「それなのに、政府はパナソニックは見限るみたいですね。まあ、赤字が巨大だということもあるんでしょうけど。」
「シャープもだめ、パナもダメって言ったら、関西は沈没するじゃないですか!」
「ええ。そこらへんを鼻の効く人は分ってるんですよ。それから、外車屋としては、パーツも高くなるし、並行輸入でクルマを入れてもこの2ヶ月で20%も円安になったら、売れる前に利益なんて吹っ飛んでしまいますよ。」
なかなか厳しい。お花見でお弁当が売れ出したなんて浮かれてる場合じゃない。まあ、輸出企業とは逆の立場だから、すべて正しいとは思わないけど、こういう意見もあるのだな。
「話は変わりますけど、この間嫁さんに456の稼働率が半分しかないんじゃないかって言われたんで計算したら、70%でした。」
「あははは!もし故障ばかりして入庫を繰り返していたら、高く付いたと思われるでしょうけど、紺の豚さんはかなり走って使ってるじゃないですか。あれだけ走ってたら、十分楽しめたと思いますよ。」
「確かにこの30ヶ月で11200キロ、月370キロは良いペースですね。東京往復を2回してますし。」
「だって夜中にラーメン食べに和歌山まで行くんだもん(笑)」
「あ、ブログ見てくれてましたよね。確かに楽しみました。日本で一番走ってる12気筒フェラーリかも(笑)」
私が切り出した。
「でもそろそろ厳しそうですね。456は潮時かも知れません。」
Nさんが
「私もそろそろ背中を押す時期が来たなと思ってました。」
「やっぱりプロの眼から見てもそうですか。」
Nさんが
「ご存知の通り、フェラーリもポルシェもランボも、近年すごく信頼性が上がって来てます。まあ、いくらフェラーリが頑張っても、ポルシェの信頼性には勝てませんけどね(笑)。456より550、そして355、スカリエッティ、360...どんどん上がるんですよ。そう考えると、紺の豚さんには次に行ってもらった方がいいかなと思って。」
「具体的にはどこらへんなんですか?」
「355の後期の6MTなんかどうですか?」
「カッコは大好きだし良いんですけど、2シーターが厳しいかも知れません。456にしたのもそうだったし、この間から借りてたアルファスパイダーもそれがネックだったし。」
「紺の豚さんは娘さんと3人で乗りたいひとですもんね。」
「ええ。そうするとマセラティグランツーリスモとか、先代クアトロポルテっていうのがやっぱり気になります。デュオレセクトのクラッチがイカれてしまうから安いとか。でも、あれってトランスアクスルだったりするんですよ。
実際に一度一緒に走ったら、ぶっちぎられましたから。」
「なるほど。実はクラッチ交換済み個体が多いんですよ。」
「え?!」
「交換しないと売れないんで、交換済みにして売る訳です。」
「なるほど。モンツァでも出来るのか、それともコーンズでないと無理なんですか?」
「うちで出来ますよ。一部コーンズにも出しますけど。それとも、交換していない個体を引っ張って来て、うちで交換するのも目の前で確実に交換されているから良いかも知れません。現行がカッコ悪くなったでしょ。それで先代の人気が出るかも知れませんよ。」
実はジャンクヤードのS社長からも
「うちのお客さんでも、フェラーリを4年以上のる人は見た事無いですね。」
と言われていた。あと1年半と思っていたのだが、そろそろ潮時かもしれない。