
ライブどこの話じゃない!! ニュル夫です。
スズキとの提携解消が終了して一段落と思いきや、VWの排ガス不正操作が北米で発覚!
当初は北米仕様のみの問題で48万台程度で収まるハズが、なんと1100万台まで膨れ上がる可能性まで出てきてしまいました。
これ、とんでもない事態ですよ。
アメリカは最大2兆1000億の制裁金を課す可能性も出てきています。
何より問題なのは試験時に違法ソフトを使用してデータを意図的に改ざんしていたと言うこと。
更に北米のみならず、ドイツ国内も280万台の不正があるとのこと。
フランス・イタリア・韓国(お前はダマッとれ!)も捜査を行う方針・・・
今のところはココまでしか分かりません・・・
なので今回はより俯瞰的にこの問題を見ていこうかと思います。
①スズキとの提携問題
既に終わった話ではありますが、このディーゼルエンジンの該当期間にスズキとVWは揉めに揉めています。
スズキは提携先のVWから技術供与を受けられずにフィアットからディーゼルエンジンの供給を受けることになります。
それを問題視したVWは契約違反を指摘。 スズキは株買い戻しを通告するもVWは拒否。 先日まで行われていた国際仲裁裁判所での裁判となりました。
ここで注目なのが技術供与。
スズキは特定の技術とは言っていませんが、フィアットからディーゼルを買ったと言うことは、ほぼ間違いなくディーゼルの事でしょう。
多分VW側は更に株取得を行いスズキをワーゲングループに入れ、そのかわりに技術を使わせる気でいたと思われます。
ですがスズキは株買い増しを拒否。 VWの思惑は外れます。
もしここでスズキが粘らなかったら、間違いなくVWの欠陥エンジンを掴まされていたでしょう。
VW側も欠陥エンジンであることを分かっていたからこそ、技術供与を渋ったのでしょう。
仮に供与してベンチで回したら排ガスモックモクじゃシャレにならないw
傘下に入れてヤバイ橋を渡らせるつもりだったのかもしれません。
今現在、スズキの契約違反が一部認められて損害額を審議していますが、この一部が欠陥エンジンを指すのであれば、VWはこの訴訟において不利になるのは明らかです。
【契約違反に該当する部品が欠陥である以上、スズキが拒否する理由として十分
】なんて結果になるかもしれません。
もしもスズキが株買い増しを容認し傘下になっていたら・・・ 大手自動車メーカーは7社になったことでしょう。
②スズキが今だに保有しているVW株1.5%はどうなる?
スズキはVWが保有していたスズキ株19.9%を4000億強で買い戻ししていますが、スズキが保有するVW株はまだ売却していません。
ここ数日で4割近くVW株が下がっている事を考えると新たに数百億の損失が発生する可能性が出てきています。
ですが、故意のデータ改ざんで株主に不利益が発生したと確定したら、新たな訴訟問題へと発展していく事も考えられます。
株主である以上、損害賠償請求してもいいのでは?と個人的には思いますが・・・
③なぜ排ガス規制を通せなかったのか?
ニュースでは故意に改ざんした事しか書いていませんが、何故VWは排ガス規制をパス出来なかったのか?
これは、欧州の排ガス基準EURO規格の生い立ちにあると考えます。
欧州でEURO規格が生まれた時に彼らは自分らの営みが阻害されること無く、かつ欧州企業の繁栄に寄与するルール作りを行ったのです。
日本の場合はNOxに厳しくPMに甘い排ガス基準で以前は黒煙をモクモクと出しながらディーゼル車が走っていました。
70年代の光化学スモッグや発がんリスクのよるものが原因です。
一気に空気を吸ってドンと着火はせずに効率を下げて運用していた為にPMが発生していました。
欧州の場合は逆でPMに厳しくNOxに甘いのが特徴です。
これは欧州での車の使い方を考えた場合、NOxを甘く設定する方が都合が良かったのです。
NOxは燃焼温度が高い状態で発生しますが、欧州の車の使われ方は長距離高速移動が主体なので、どうしても効率重視の設計が必要です。
おまけに効率が上がれば運用コストも改善できる。
欧州の車選びはコスト優先の為、運用効率の高い道具として車を選んでいきます。
ガソリンとディーゼルどちらが最終的に安いかで選ぶのです。
そして80年代後半からの酸性雨の問題。 木々の立ち枯れや古城の外壁腐食を目の当たりにして欧州ではCO2対策に迫られます。 環境保護の観点からもCO2削減は社会の目から見ても好都合な材料です。
HVの台頭等も含め様々な問題を一気に解決させるにはEURO規格をPMに厳しく振ってNOxを垂れ流す方向に振ったのです。
EUROの基準を見れば分かると思います。
ディーゼル運用で発生するデメリットを法律を使って回避しているようでは、他国で基準未達でも仕方が無いのかもしれません。
いくら北米用にEGRと触媒追加しても基礎設計がダメならやはりダメなのでしょう。
日本のようになりふり構わず無慈悲な法改正をするような、ある意味おバカな国でないと技術は育ちません。
【オマケ】
ネットを見ているとVWクソ、スカイアクティブ最高と無条件愛国主義的な書き込みがありますが、数字読めてますか?
マツダは欧州メーカーとは違い、極端な出力・効率を求めていないのです。
同じ排気量では馬力もトルクも低く、ディーゼルとしてはむしろ効率が低いくらいです。
ただ、マツダの場合は、闇雲な出力よりも全体としてのコストを優先した結果なのです。
欧州的なエンジンではNOxの後処理が厳しい。 なら燃焼温度をそこまで上げずにNOxの分母を減らしてしまおう。 という考えです。
これならエンジン単品でNOx・PMを抑え込んで後処理機構への投資が減る。
車体金額が安くなるワケです。
以降は⑥に記載します。
④本当にディーゼルだけがダメなのか?
正直、直噴ターボもかなり怪しいと思います。
一般的な国産ポート噴射のPM2.5に比べ、欧州直噴ターボは10倍強、国産直噴ターボでも5倍程度と言われています。
実際欧州車のマフラーは煤でドロドロに汚れている場合が多いです。
Z34のマフラーなんてあまりに綺麗過ぎてかえって迫力に欠けるくらいですw
欧州は速度域が高い為、煤が溜まりにくい環境にありますが、日本では低速走行が基本なので煤は溜まる一方です。
また直噴は国内外問わずオイルを食う特性が強いようです。
オイルの性能次第で食い量が変わるみたいですが、一般的に欧州車はオイル交換する間に足すのがデフォのようです。
その減ったオイルは消滅するわけではなく大気解放されているでしょうから、直噴ターボの環境負荷はかなりのものだと思えてなりません。
⑤測定基準が変わったら?
今現在、エンジンのコールドスタート時の測定温度は25℃で測定されています。
正直、世界中で低温25℃の環境が何処にあるのでしょうか? 赤道周辺くらいです。
この基準温度が仮に0℃(これでも高いが・・・)になったらどうなるか。
触媒の運用に必要な温度までの上昇時間は長くなり、それまでの間に高濃度の毒ガスが撒き散らされるのです。
すでに環境団体は今回の問題で検査基準の強化を訴え出しました。
いよいよ、内燃機関にとって試練の時を迎えています。
⑥今後ディーゼルはどうなる?
別の調査ではBMWのX3ディーゼルも基準超過との情報も出ました。
官民一体でグルになっている欧州のディーゼルはかなり厳しい結果が待っているかもしれません。
国産メーカーもトヨタとBMWは似た後処理システムになっています。
もしトヨタが規制をクリア出来たとしたら面白い事になってきます。
マツダはアメリカの基準をクリアしておらず、北米でも販売実績が無いので、世界で販売を目論むなら現状ではアウトです。
正直、ディーゼルエンジンはEURO6が策定された時点で終焉するエンジンだと考えていました。
先に書いた③のオマケの部分です。
排ガス基準が厳しくなればなるほど後処理システムへのコストが上昇します。
そうなればいくら軽油が安くディーゼルの効率が良くても、車両価格が高騰していまえば意味がありません。
欧州人は基本ケチですから、ガソリンエンジンよりもディーゼルの方が高コストになれば買う人はいなくなります。
事実、欧州ではガソリン車の販売がジワリと増えつつあります。
直噴化やダウンサイジング、熱効率の向上によってガソリン車のコスパが上がって来ているのです。
技術的な問題よりも消費者心理がディーゼルを終わらせるものと考えていたのです。(結果的に技術的にもダメだったが・・・)
乗用車ディーゼルの未来は形を変えて知見として生き残り、今後実用化されるであろうHCCIエンジンに活かされていくのでないでしょうか。
と、こんな具合でVW問題から見えてくる俯瞰的な問題をツラツラ書いてみました。
今後、各社の検査結果が公表されていくとメーカー間の勢力図や内燃機関と非内燃機関での争いが加速するかもしれません。
個人的にディーゼルも直噴ターボも未来は無いと思っているので。NOxとPMの問題が解消出来ない限り、両者は先には進めません。
今だに航続距離に問題のあるEVか。
背中に超高圧の爆弾背負ったようなFCVか。
まだまだエンジン離れできずにハイブリッドか。
火力発電所付きのEVことPHVか。
カムレスや熱効率アップでNAガソリン車復権か・・・
選択肢も勢力図もバラバラです。
今回のような問題は今まで未来を甘く見積もっていたメーカーには良い刺激になったと思います。
ぜひとも真面目に車を造っているメーカーがバカを見ないように。
差別や贔屓の無い公正公平な基準で真摯なモノづくりに努めていく事を願います。