![[試乗] フィットハイブリッド vs フィット1.3 vs フィットRS [試乗] フィットハイブリッド vs フィット1.3 vs フィットRS](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/020/320/848/20320848/p1m.jpg?ct=53bc9c6ca515)
フィエスタのネガは自分なりのモディファイやチューニングで解決してきたつもりだが,どうにもならない問題は「燃費の悪さ」である。
燃費を記録するようになって以降,平均燃費は12km/Lを維持しているが,近年の実用車的なコンパクトカーの実燃費に比べればかなりブは悪い。デッドニング等で車重はけっこう増しているはずなので,カタログ値を達成できているのは自分なりの対策も功を奏しているだろう(対策前は10km/Lを割ることもザラだったが現在は特に事情がなければ常に11km/Lを上回っている)が,原理的にそれ以上の平均値が得られるわけではない。
これまで16.2万kmを走行しているが,12km/Lの燃費が12+αkm/Lだったと仮定して給油代の計算をしてみると,数十万円もの相違が発生する。過走行なカーライフを続けるなら,箱替え(箱増し)の際には燃費の良さは極めて重要な事項だ。
欧州フォードが開発し,グローバル展開が決定しているエコブースト&パワーシフトのパワートレインは,今後フォードジャパンが日本に導入(輸入再開)する車種を増やしたとしても,必ずしも搭載が期待できないか,搭載されていても昨今の燃費をリードする車種ほどの実燃費は期待できないのではないかと予想している。
先日に試乗したVWのポロTSIの最新の技術の盛り込み具合と洗練度には圧倒された。燃費と車の内容のバランスから見て,次に乗りたい(購入してもいい)車の筆頭候補に挙げることができる。そのポロTSIと同等の最新の技術が盛り込まれていると見なすことのできる日本車=フィットハイブリッドが発売された。ポロTSIと真逆と言っても差し支えない気がするほど性格や方向性の異なる車ではあるが,自分は比較するに値する車だと思っている。
フィットは言わずと知れた大ベストセラーカーで,欧州ではジャズの車名で高い評価を得ている。ただしそれは洗練やパッケージングの面であり,フィエスタのような走りの楽しさに基づいたものではない。日本仕様のフィットに至っては足回りやステアリングフィールなどに苦言を呈され続けてきた車でもある(例えば
こちら)。
一方,ホンダはマイナーチェンジとモデルチェンジの際にそれらの問題に対する改良を重ねてきたとともに,ハイブリッド化されたフィットではさらに走りの面でも磨きをかけてきた。バッテリー駆動モーターのアシストを得たことによる低速トルク・加速感の向上や,リアに搭載されたバッテリーの重量とのバランスから実現したハンドリングの改善に注目している。非ハイブリッド(ガソリン車)以上となる車両価格に対する実燃費のアドバンテージが得られなかったとしても,自分にとっては十分に魅力を感じられる一面である。
フィットハイブリッドは,アイドリングストップやクルーズコントロールを標準装備し,最高グレード(プレミアムナビセレクション)ではパドルシフト,横滑り防止機能(VSA),通信型のナビシステム(インターナビ),シートヒーターを搭載,さらにはサイド&カーテンエアバッグを用意(オプション)している。これらによって,欧州車と互角に勝負できる装備を得たと見なすことができる。プ○ウスやインサ○トのあり方には疑問を抱かざるを得ない部分もあったのだが,フィットハイブリッドはその存在を無視できない。日本メーカーの持つ最新の燃費対策&ハイブリッド技術と,フィットとしての熟成度を,とくに走りの面に注目して自己検証した。
幸いにも,今回訪問したホンダディーラーには最新型のガソリン車(1.3Lの13G,Fパッケージ)と,マイナーチェンジ前のフィットRS(1.5L)の試乗車も用意されていたので,この機会にハイブリッド(1.3L,スマートセレクション)とともに比較試乗させていただいた(いずれもFFのCVT)。
街中を短い時間流した程度ではあるが,3タイプに共通してステアリングフィールは×だった。軽く無機質で中立が曖昧。エンジンの特性や足回りは,日本の常用域での走行速度とストップ&ゴーの多い環境向けに作られている。高速や山坂道ではあまり余裕はないだろう。ステアリングに関しては女性や年配者,狭い場所での駐車などを意識していると思われ,エンジンや足回りに関しては国産車(実用車)に共通する真っ当さであり,実用上はとくに問題はないと思われる。3タイプを比較してみると
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フィット 13G ・・・ 軽快で全体のまとまりがよい。実用車・買物車として過不足なし。エンジンやCVTは若干粗雑で安っぽいものに感じられるが,この車格&価格帯の車としては許容範囲。低速域でのCVTのフィールは過去に試乗したスイフトやデミオよりも洗練度は劣ると感じたが,加速時は他より自然。同価格帯の国産車と迷った時は,パッケージング(荷室の広さ),ディーラーの対応,スタイルに対する好み,実勢価格に対する懐具合などに頼って選べばよい。粗雑感を避けるなら車格は上になるがオーリス,もうすこしお洒落な雰囲気を求めるならベリーサがある(燃費は期待しにくいが)
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フィット RS ・・・ ノーマルのフィットの足下を固めた(ダンパーを堅めに&インチアップした)車。1.3Lに対する1.5Lエンジンの優位性はバネ下の重さと燃費の悪化で相殺されてしまうかもしれない。低めの排気音やパドルシフト,エアロパーツなどはスポーティさの「演出」。ギヤ比を低くすることでエンジンのレスポンスをアップさせているが,欧州コンパクトと比べるととくに気持ちよくはない。6MTも選べるが,固められた足下を信頼して元気に走らせようとすると,曖昧なステアリングに裏切られる(思うように曲がらない)。ノーマルに比べ実用車としての軽快感やバランスが失われていることも気になる。フィットのスタイルやパッケージングが好きだが,ノーマルのままでは退屈に感じる一方で自分でいじる気はなく,ガイシャやスポーティカーはNGな人向け
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フィット ハイブリッド ・・・ 常用域での加速性と静寂性と,大径化されたタイヤがノーマルとRSのネガを見事に打ち消している。リアへのバッテリー搭載による重量バランスの変化の悪影響も感じない。アイドリングストップの電子制御はかなり精密で,衝撃や違和感がない。ただし,低速走行時はエンジンの騒音や振動が小さいが故に,CVTのショック(ギアがひっかかる感触)が明瞭に伝わってくる。走行状態(エコ度)によって色が変化するメーター照明は少々うざったく,メーター中央のエコ度グラフも運転中の視認性は悪い。しかし,それらはいずれも「ハイブリッド車に乗っている」自覚と満足感を提供する役割を果たしている
といった具合で,ハイブリッドの完成度に感心させられた。しかし,ハイブリッドの実燃費と車両価格との関係から,車両価格(あるいはいずれ来るバッテリー交換の費用)を回収するにはかなり走り込む必要があるだろう。自分のように過走行となるような使い方をするか,「いま話題のハイブリッドに乗ってみたい(それもコンパクトカーで)」という場合以外にはハイブリッドを積極的に選ぶ理由は生じないように思われる。一方,「コンパクトカーでも車内は静かであってほしい」「疲れている時や長時間の運転をもっと楽にしたい」「エコ運転にチャレンジして最高燃費をたたき出してみたい」「話題のハイブリッド車をフィットの最上級グレードとして所有してみたい」という希望があれば,車両代に投資をしても満足度は高いだろう。モーターのアシストをうまく使いこなすことができれば,街乗りだけでなく高速巡航や峠越えもノーマルよりも疲れにくいはずだ。ハイブリッドならではの減税措置や保証システムも設けられている。
試乗の結果,やはりポロTSIとは性格も方向性も大きく異なるが,フィットハイブリッドはそれと同等かそれ以上に現在の技術の粋が詰め込まれた,見事な実用コンパクトカーに仕上がっていると感じることができた。そして,ハイブリッド車はハイブリッド車なりの楽しみ方や使い方があることもよく分かった。
個人的には,ハイブリッドの技術を燃費向上だけでなく,走りの楽しさやパワーアップに思い切り振った車があっても良いと思う。もしかしたらそのような車はホンダではなく後発の別のメーカーか,日本ではなく欧州で造られるのかもしれない。そういえば,
欧州フォードは次期フォーカスC-MAXをハイブリッド化することをすでに決定している。燃費を犠牲にしても油圧式ステアリングにこだわっていた欧州フォードが,ハイブリッドを得たことによって「ドリフトできるミニバン」C-MAXの走りとハンドリングをどのように磨いてくるのか? また一つ楽しみが増えた。
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試乗 | クルマ
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2010/11/07 23:30:59