純正でブレンボを標準装備する我が家のエクシーガtSも、今年で2回目の車検を迎えます。
このところブレーキ鳴きが激しくなったため、車検前のDIY整備の一環として、ブレーキメンテナンスを行いました。すると、想像以上に大きな消音効果が得られましたので、その様子を備忘録として記します。今回のブログはその後編です。
◎前編は こちら →
その1・フロント編。
■小さなアシスタントたちの巻
エクシーガの前輪をリフトアップして、フロントのブレーキパッドのメンテ(既報 → 前回ブログ)を終えた頃。子供たちが、「パパ、手伝うよ!」 と言って玄関先に出てきました。
この日の最高気温は、約30℃。先ほどまで、エアコンの効いた部屋の中でゲームをしていたはずですが、炎天下で作業をしていた私のあとを追って、自主的に手伝うと言ってくれるとは。。。暑いので、水遊びを兼ねて、ブレーキダスト汚れの激しいアルミホイールの水洗いをお願いすることにしました。
<↓私が取り外したSTIホイールを、きょうだい(姉弟)が順番に流れ作業で水洗いしていきます>
<↓手持ちの鉄粉除去スプレーの類を使用。ホイールの内側を重点的に洗浄してもらいます>
<↓使用中のブレーキパッドはプロジェクトμのHC+。いや~、思いのほかダストがガンコです>
子供たちの流れ作業を脇で見守りながら、私はブレーキパッドの面取りやスリット加工の追加などを行いました。水洗いのあとのホイールも、あっと言う間に渇き、すぐに再装着できる準備が整いました。大変ありがたいことです。
■リヤパッドの状態確認
フロントのパッドは、スリットがブレーキダストで埋まり、パッド両端の面取りも消失していました。リヤのパッドはどうでしょうか。同様にキャリパからピンを抜いて、パッドを取り出します。
<↓接地輪(フロント)にクルマ止めを掛けて、リヤをKYB油圧シザーズでジャッキアップしてパッド取り出し>
<↓ブレーキパッドは異常なし。以前、読者さんから指摘いただいたローターの片側摩耗は状況変わらず>
ブレーキピストンや、ピストン周辺のシールゴムに異常がないことを確認して清掃します。
以前、リヤブレーキパッドを 「摩耗した純正」 から 「新品プロジェクトμ」 に交換した際、ブログをご覧になった読者から 「ディスクローターの内側と外側で摩耗が異なる」 とのご指摘をいただいていました。以来、様子見しているのですが、制動力(や制動バランス)に違和感はありません。ただし、好ましい状態とは言えないことには変わりないので、機会を見計らってディスクローターも入れ替えようと思っています(社外品でも適用可能なものアリ)。
<↓取り外したリヤのブレーキパッド。こちらは両端の面取りが残っており、残存厚みもかなりある状態です>
ここ最近、キーキーとかなり激しいブレーキ音が鳴っていましたが、リヤからも幾分は聞こえていたため、(フロントパッドよりも良好な状態とは言え)リヤパッドにも、何らかのブレーキ音対策を入れておきたいところです。
■オリジナルスリット加工の巻
リヤパッドの両端には まだ面取りが残っていましたが、いまいち汚れていたため、やすりで表面を少しだけ削ることにしました。
<↓(左):面取りはまだ残っている状態 (右):清掃を兼ねて、面取り部分をやすりで軽くさらっておく>
本来ならば、ここで復元作業に入ってもよいのですが、何だかスッキリしません。
そこでもう一度、事実を思い起こしてみることにします。
・ブレーキング時のキーキー音は、リヤからも聞こえていた。
(家族に運転してもらい、車庫入れを想定した微速前進←→微速後退を
繰り返してもらいつつ、私が伴走してリヤからの発音を確認しています。)
・フロントのパッドには、購入当初からセンターにスリットが入っていた。
(ダスト排出と摺動発熱時のガス逃がしのためには、
リヤパッドにもスリットがあっても良いのでは?)
これらの理由により、もともとプレーンタイプであるプロジェクトμ HC+ のリヤパッド中央に、DIYでスリットを新たに設けることにしました。ただし、その角度には意図的に後退角を持たせます(後述)。
以下、作業風景を画像によるダイジェストで紹介します。
<↓追加するスリットの位置決め(垂直ではなく斜め方向に)をしたあと、手持ちの金ノコで手加工していく>
<↓深さ方向の加工量を確認(場所により深さに差が出ないように)しながら、均一にスリットを入れていく>
<↓ここまでが粗加工した状態。このあと、やすりも使って幅を拡大しつつエッジ部にC面取りを追加します>
<↓仕上げに向けた加工の途中段階。スリット追加作業の開始から、ここまでで約10分間が経過した状態>
<↓だんだん頭の中に描いていたイメージに近づいてきました(手持ちのツールではこのへんが限界かな)>
■スリットに後退角を持たせた理由
上記でスリットをDIYで追加工する様子について、画像で簡単に紹介したのですが、「パッドに対して上下方向に垂直に(左右対称のセンター位置に)」 スリットを入れるのではなく、「どうして斜め方向に」 スリットを入れたのか? について補足します。
以下、あくまで私的な考えです。
<↓ディスクの角速度ωが一定のとき、時間Δt→Δt+Δt で点Pが内周→外周に移動する際の軌跡を考慮>
いま、ディスクローターが角速度ω[rad/s]=一定で車両進行方向に回転しているものと仮定します。
ブレーキパッドの内周に位置する点Pが、回転するディスクローターと接してダストが生じるものとしたとき、ダストには遠心力が働いて時間Δt [msec]経過後に外周寄りの点P’に移動しようとします。さらにΔt+Δt [msec] 経過後に外周の点P”に達したとすると、ダストの軌跡はP→P’→P”の曲線を描きます。
よって、ダスト排出や摺動発熱時のガス抜きを狙ったスリットは、パッドの上下方向に対して垂直ではなく、回転方向に対して(内周→外周に向かって) 「後退角を持たせた斜めスリット」 とした方が良いのではないか。・・・というのが私の考えです。
※後退角は、狙いの車速レンジの高低(ディスクの角速度ω)に依存するでしょうけど、
今回はパッドの幅方向に1/3~2/3を横断する範囲で設定しました。
※手持ちの工具(金ノコ)では曲線を描くカーブでの加工が困難なため、
後退角を持たせたストレート溝で手加工しました。
DIYで斜めスリットを追加工する場合、注意すべき点は、対向する2枚のブレーキパッドが鏡像の関係にある点です。2枚のパッドは、ディスクローターを挟んでお互いに向き合う位置関係ですので、安易に同じ方向にスリットを入れてしまうと、いざ組んでみたときにスリットがクロスする方向(片方が逆後退角)になってしまいます。
<↓ブレンボキャリパのリヤブレーキパッドに、DIYで鳴き止めを目的としたスリットを追加工する際の手番>
「スリットはどっち方向でも変わらないだろ」 とか 「そもそもスリットが効くのかよ」 といったご意見もあることでしょう。しかし、自分なりの考え(根拠でもあります)をしっかりと持った上で、自分の技量の範囲内でチューニング(時には改造)を加えることは、DIYの醍醐味でもあります。
もしも後日、その考えに誤りがあった場合は、素直に自分の考えを正して改善する柔軟性も必要ですけどね(私の例で言うと、前回ブログ:ブレンボのブレーキ鳴きをDIYで解消する(その1・フロント編) の中で、「シムのブレーキピストン側には鳴き止め剤を塗らない」 といった事例です)。
■仕上げの巻
上記の考え(根拠、信念)に基づき、リヤのブレーキパッドにダスト排出促進による共振(キーキー音)の抑制を狙った斜めスリットをDIYで追加工しました。組み戻しする前の、完成形を載せておきます。
<↓プロジェクトμのブレーキパッドHC+ にDIYで追加した斜めスリット。金ノコとやすり1本でも十分に可能>
<↓キャリパに組み戻しする前の状態。2枚のパッドは互いに鏡像関係なので、スリットも鏡像で加工する>
リヤのキャリパは、ブレーキパッド1枚につき標準添付のシムは1枚構成です。こちらも、ブレーキピストン側にはコパスリップを塗布せずに、パッド側のみに全面塗布します(コパスリップにダストが付着してデポジット化し、ブレーキピストンの動きが渋くなる恐れを避けるため)。
<↓シムのパッド側にコパスリップを全面塗布(ただし薄塗り・・・厚く塗っても発熱で垂れてしまうため)>
<↓こちらは左後輪の様子。ブレーキローター、パッド、DIYで追加したスリットの位置関係が分かります>
■効果絶大、大いに驚くの巻
さて、ブレーキパッドを組み戻しして運転席のブレーキペダルをストローク(ポンピング)させ、エンジンルーム内のブレーキフルードの油面高さなどにも異常がないことを確認できたら、微速発進して感触を確かめます。今までは、車庫入れ時の前後進でもキーキーとブレーキ音がしていましたが(夜の使用が憚られる程度)、今回はまったくの無音、サイレントです。
次に私が試走しようとしたそのタイミングで、家族が(子供のお迎えのため)どうしてもクルマを使う必要があるとのことで、家族に試走を託して評価をお願いしました。
しばらくした後に帰って来ましたが、「ブレーキ音がまったく聞こえなくなった」、とのこと。「ホンマかいな? 少しくらいはブレーキ音が残っているのでは?」 と思い、同乗していた子供に尋ねてみても、「キーキーしないよ」 とのこと。
後日、1人の時間ができたので、いろいろな運転パターン(車速、ブレーキペダル踏力、登坂、平坦路、降坂、切り返しetc.)を試したのですが、本当にブレーキ音が聞こえてきません。運転席、助手席、左右後席のすべてのウィンドウを全開にして試しましたが、強めのブレーキング時に 「ククゥ~ッ」 というバッドがローターに喰い込む音がわずかに聞こえる程度で、あんなに盛大に出ていたキーキー音が皆無です。
「ブレンボも、実は こ・ん・な・に 静かに効くんだぁ~!!」
「そして、ブレーキタッチも な・め・ら・か になった!」
ある程度はキーキー音が抑制できれば良いな、と思っていたのですが、ここまで静かに解消されるとは予想外でした。確かな効きがあるのに静か。そして、ブレーキタッチもなめらかに(あくまで感覚ですが、パッドがローターに均等に当たって制動しているような感じ)。いやぁ、メンテナンスって本当に重要ですね。そこまで放置するなよって声が聞こえて来そうですが。
技術的な立場で考えると、
・フロントパッドのスリット復元(←ダストで埋まっていた)
・フロントパッドの面取り追加(←エッジ状になっていた)
・フロントの各シムにコパスリップ塗布(←消耗していた)
・フロントのブレーキピストン周りの清掃(←ダストだらけだった)
・リヤパッドに新たな斜めスリットを追加(←自分なりの根拠に基づく措置)
・リヤのシムにコパスリップ塗布(←消耗していた)
・リヤのブレーキピストン周りの清掃(←ダストだらけだった)
の各項目のうち、何がいちばん寄与しているのか、項目別に改善度合いを明確化したいところです。
しかし今回は、目指す目的 : 「(あんなに耳障りだった)ブレーキ音が一発で完全解消した」 「家族が笑顔で安心してクルマに乗れる状態に戻った」 ことが達成されたので、これで良しとします。また今回の知見を生かし、今後は早めのブレーキメンテナンスを行うようにしたいと思います。
以上、私的な考察に基づくブレンボの激しいブレーキ音(キーキー音)の解消事例報告です。このブログをお読みになった方々に、何らかの参考になれば幸いです。
Posted at 2017/07/17 11:20:20 | |
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