サマータイヤとスタッドレスタイヤとの違いを、自動車評論家が解説します

2020年2月13日

サマータイヤとスタッドレスタイヤ

遠目でみたらスタッドレスタイヤもサマータイヤも黒くて丸いタイヤとしては同じような外観です。でもどうしてスタッドレスタイヤは雪や氷でも走れるのでしょうか? そもそもスタッドレスタイヤとサマータイヤは何が違うのでしょうか? スタッドレスタイヤの秘密に迫ります。

スタッドレスタイヤはゴムから違う

スタッドレスタイヤもサマータイヤも黒いゴムで作られた丸いものです。しかし、じつはその同じだと思われているゴムがまったく違うものなのです。とくにコンパウンドと呼ばれるトレッド部分のゴムは大きく異なります。このコンパウンドの違いがまずはスタッドレスタイヤの特徴と言えます。

スタッドレスタイヤ用のコンパウンドは表面にミクロン単位の細かい穴が存在し、その穴によって氷上の水膜から給水し、タイヤと氷を接触させてグリップを発生させています。氷とタイヤでグリップするというと不思議かも知れませんが、滑りの原因は氷ではなく氷とタイヤの間にある水膜だからなのです。以前、スタッドレスタイヤ用の溝のないスリックタイヤでテストコースを走ったことがありますが、ビックリするくらい普通に走ることができました。

スタッドレスタイヤタイヤの性能の決め手はサイプ

スタッドレスタイヤのトレッドを見るとカッターナイフで切り込みを入れたような細い溝がたくさんあることに気づくと思います。この切れ込みが「サイプ」と呼ばれる構造です。コンパウンドと並んでスタッドレスタイヤの性能の決め手となるのがサイプです。

サイプは氷上の水膜を除去する機能のほか、エッジで氷上をひっかく効果、サイプの中に入った雪を圧縮して得られるせん断抵抗などさまざまなアプローチで氷上や雪上でのグリップを発生させています。このように効果の高いサイプですが、ブロックに単純に切れ目を入れてしまうとブロックの剛性が下がり、ブロックが倒れ込んでしまうため効果が発揮できません。そこで各社ともにさまざまに構造を工夫して、サイプの数と倒れ込み防止を行っています。

スタッドレスタイヤに求められるドライ性能とオールシーズンタイヤ

スタッドレスタイヤ

サマータイヤは雪や氷での走行は考慮されていません。雪や氷の上を走るときはタイヤチェーンを装着することが前提となっているからです。対してスタッドレスタイヤはドライやウエットの路面でも走れることが求められます。スタッドレスタイヤでドライやウエットの路面を走るときに、何かを装着する必要はありません。

しかしスタッドレスタイヤがサマータイヤと同等のドライ&ウエット性能を持ち合わせるわけではありません。もし、スタッドレスタイヤがサマータイヤと同等のドライ&ウエット性能を持ち合わせるなら、サマータイヤの存在価値はありません。スタッドレスタイヤはあくまでも、ドライやウエットでも使えるもの、という考え方を持っていたほうがいいでしょう。

また、最近はオールシーズンタイヤがかなり注目を浴びています。オールシーズンタイヤは、東京などの都市部で万が一雪が降ったときに走ることができるタイヤというように考えたほうがいいでしょう。降雪地域ならば冬場はスタッドレスタイヤを選ぶことが大切です。

諸星陽一
  • 諸星陽一
  • 日本自動車ジャーナリスト協会(外部リンク)
  • 自動車ジャーナリストとして専門誌やライフ誌での執筆活動をはじめ、安全運転のインストラクターも務める。1992年~99年まで富士スピードウェイにてRX-7のレースに参戦。セルフメンテナンス記事も得意分野。福祉車両の数少ない専門家の一人でもある。

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