【そろそろスタッドレスを考えましょう①】そもそもスタッドレスタイヤは雪や氷でなぜ滑りにくいの?

2020年9月8日

スタッドレス 効果

9月の上旬で全国的に暑い日は続いておりますが、10月下旬に北海道地方を皮切りに徐々に降雪が始まり、スタッドレスタイヤへの交換が必要となります。そこで、みんカラカーライフ記事ではスタッドレスタイヤに関する特集をしていきます。 初回の今回はスタッドレスタイヤの効果についてです。初めてスタッドレスタイヤで雪道を走るとき、そのしっかりしたグリップに驚くのではないでしょうか。ではなぜスタッドレスタイヤがグリップするのか? スタッドレスタイヤの秘密を解き明かしていきます。

サイプと呼ばれる細かい溝が路面の水膜を除去する

タイヤ 

スタッドレスタイヤのトレッド表面を見ると横方向にナイフで切り込みを入れたような細い溝がたくさん刻まれていることがわかります。この溝のことを「サイプ」と呼びます。氷雪路でスリップするのは、路面とタイヤの間にできる薄い水膜が原因です。スタッドレスタイヤのサイプはこの水膜を除去する役目を担っています。

サイプに水を取り込んで水膜を除去し、取り込んだ水はタイヤが回転する遠心力でサイプから排水、ふたたび路面に接地して水を取り込む、というサイクルを繰り返すわけです。サイプの数を増やすと理論上は吸水効率が向上しますが、剛性が落ちてブロックが倒れやすくなり、サイプ=すき間が開いてしまうので、吸水効率は落ちてしまいます。そこで、サイプ内部の壁面を立体的に加工するなど、ブロックが互いに支え合う構造が採用されています。

サイプは「エッジ効果」や「雪柱せんだん力」も生み出す

サイプには水膜の除去以外にもグリップを確保するメカニズムがあります。ひとつは「エッジ効果」と言われるものです。これはブロックの角(エッジ)が氷の表面を引っかくことでグリップを発生するもの。このエッジ効果もブロックが倒れてしまうと効果が低下します。

もうひとつは「雪柱せんだん力」と呼ばれるもので、サイプや溝のなかに取り込まれた雪が圧縮されることで雪の柱(雪柱)が作られ、その柱が抵抗力になってグリップが発生します。

コンパウンドそのものも専用の素材が採用されている

スタッドレスタイヤに使われているコンパウンド(路面と接するトレッド面のゴム)は、低温でも柔らかさが失われないものが採用されています。コンパウンドが硬いと、氷盤などのミクロの凹凸に対応できず、凸部分の上にのみにタイヤが乗っかっているような状態になってしまいます。これでは接地面積が少なくなります。コンパウンドが柔らかければ凹の部分にもトレッドが入り込むので、接地面積を稼げるというわけです。

また、コンパウンド自体も吸水効果のあるものが使われていて、ミクロのレベルでの吸水、排水が行われています。この吸水の仕組みは各タイヤメーカーで独自の技術が使われています。さらにコンパウンド内に硬い添加物を混入することによって、エッジ効果をねらうものもあります。

筆者はテストコースの圧雪路でスタッドレスタイヤ用コンパウンド、夏タイヤ用コンパウンドのそれぞれを使ったスリックタイヤ(溝のないタイヤ)を試乗した経験がありますが、溝がなくてもコンパウンドの違いだけでかなりグリップするのを体感しています。さらにスタッドレスタイヤは構造も専用の設計で、さまざまな技術の積み重ねによって成り立っているのです。

諸星陽一
  • 諸星陽一
  • 自動車ジャーナリストとして専門誌やライフ誌での執筆活動をはじめ、安全運転のインストラクターも務める。1992年~99年まで富士スピードウェイにてRX-7のレースに参戦。セルフメンテナンス記事も得意分野。福祉車両の数少ない専門家の一人でもある。

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