昭和は遠くなりにけり・・・。永六輔さん他界。

作詞家、作家、放送作家、ラジオタレント、エッセイストとして活躍し、所謂「マルチタレントの先駆け」だった永六輔さん。


（毎日新聞　７月１１日　朝刊より）

七夕の日、自宅で８３歳の生涯を終えたそうです。

浅草のお寺で生まれ、中高生時代からＮＨＫのラジオ番組に投稿。今で言う「ハガキ職人」としての才能を発揮し、昭和２０年代中盤の早稲田大在学中に放送作家、司会者としてデビュー。

この時期、ＮＨＫがＴＶ放送をスタートしただけでなく、ＴＢＳ（東京放送）や日本テレビなどが開局し、民間放送局のＴＶ放送が始まったのもあり、ラジオとＴＶの構成作家として大活躍。

なかでも、ＮＨＫテレビの「夢であいましょう」では台本を手がけたのみならず、梓みちよさんのヒット曲として有名な「こんにちは赤ちゃん」などの作詞も手がけるなどマルチな才能を披露し、その後、作詞：永六輔・作曲：中村八大・歌唱：坂本九の「六八九トリオ」で数々のヒット曲を世に送り出し、「上を向いて歩こう」は日本のみならず、アメリカでは「ＳＵＫＩＹＡＫＩ」としてカバーされるなど、世界的なスタンダードナンバーとなったのは周知の事実です。


その一方で、日本語の美しさ、奥ゆかしさ、職人さんの技術と粋、矜持といった日本の伝統美・様式美に強い造詣を持ち、「ラジオと俳句こそ日本語を守る最後の砦」だとして、昭和４０年代半ばより、主たる活動の場をラジオに移し、ＴＢＳラジオで昭和４２年から約４０年にわたり放送された長寿番組「誰かとどこかで」では、遠藤泰子さんとの息の合ったやりとりと機知にとんだ永さんの語り口に感銘を受けたリスナーも多かったと思います。

エッセイストとしても活躍し、１９９６年に上梓した「大往生」は、人間の死生観を説いた言葉を集めた作品として、大ベストセラーになり、その他多数の秀作エッセイを残しました。

ここ数年は、パーキンソン病と前立腺がんに罹り、ガン克服後は、精力的に活動するも、自宅で転倒して骨折したのを機に「誰かとどこかで」を終了し、その後は闘病生活をしながら、不定期ながらラジオやエッセイストとしての仕事をしていたのですが、体調が優れないことが続き、七夕の日、眠るように旅立ったのだそうです。

昭和は遠くなりにけり。


（毎日新聞　７月１１日　朝刊社会面より）

永さんのご冥福を心よりお祈りいたします。