小さな大横綱よ、永遠なれ。

皆さんもご存知かと思いますが、第58代横綱千代の富士こと九重親方（本名：秋元貢さん・61歳）が、昨夕、膵臓がんで亡くなりました。

いわゆる大型重量系力士（アンコ型）が主流の相撲界で、小兵と決して体格が恵まれず、昇進しても度重なるケガに悩まされ、伸び悩み一時は引退を覚悟した千代の富士は、先代の九重親方の進言で、当時としては異例のウェイトトレーニングを敢行。

これにより、足腰の筋力が強化され、安定感と粘り腰を兼ね備え、元来の運動神経の高さを向上させた千代の富士は、彼の代名詞となる、相手の前褌を取り、一気に寄り切る「速攻相撲」にシフトして、才能を開花。

その後の快進撃、大躍進は説明するまでもありません。

小錦や大乃国などの大型力士との名勝負、眼光の鋭さと筋肉で固めた細身の体で、大型重量系力士を投げる様は「ウルフ」と呼ばれ、リアで千代の活躍を観てた世代の私としては、子供心にかっこいいなと感銘を受けました。

１９９１年夏場所初日、当時売り出し中の貴花田（後の貴乃花）に敗れ、引退を決めた際の会見で「体力の限界。気力もなくなり引退します。」と語った時の様は、今でも記憶に残ってます。

各界で初の、国民栄誉賞受賞者でもあり、引退後は、九重親方を襲名して、千代大海などを育て上げ、ＶＴＲや交換ノートなどを活用した指導法は、理論派と評され、プライベートでは、歴史小説をこよなく愛する読書家、家族や仲間を大切にするよき父親、好人物だったそうで、娘でモデルの秋元梢さんは、公式ツイッターで「父の娘に生まれて本当に良かった。安らかな表情で眠るような最期でした。」と語ってました。


小兵でも相撲で勝てる、それを体現した努力の人でした。




謹んでご冥福をお祈りします。

小さな大横綱よ、永遠なれ。



（毎日新聞　1日朝刊より）