鉄鋼

　全国紙・産経新聞のニュースサイト「msn産経ニュース」の配信記事から『高炉など再開のめど立たず　長引けば自動車生産に影響も　新日鉄住金名古屋事故』に注目。

　事故発生自体は3日のことだが、現在も収拾しておらず事態が進行中のニュース。
　この記事始め自動車産業への影響を懸念する報道が出たからか、新日鐵住金（新日本製鐵と住友金属工業が合併し2012年に発足）は事故が発生したコークス炉を除く他のラインの操業を再開する構えを見せ、不安払拭に躍起となっている。



　コークス炉とは、鋼材の原料である鉄鉱石（酸化鉄）を効率的に還元するために必要な「コークス」を生産する設備。コークス生産を専門に行うプラントもあるが、高炉メーカー（鉄鉱石から鋼材を生産する製鉄所）では生産ラインに組み込まれていることが多い。

　それ自体が燃料である石炭を加熱・蒸し焼きにして、純度の高い炭素を取り出す工程なので、万全の対策を施さなければ容易に火災に至ることは、感覚的にご理解いただけるだろう。



　新日鐵住金名古屋製鉄所では、今年の正月早々と6月・7月にも、やはりコークス炉で火災が発生しており、度重なる事故発生に地元の不信感は強まっているようだ。
　6月の火災では、自動車生産に直接的な影響は生じていないが、製鉄所に隣接する保管場所に留置かれていたトヨタの新車2万数千台が、事故で発生した黒煙の煤やタールを浴び洗浄や整備のため出荷が遅れる事態を招いた。


　コークス炉の事故は新日鐵住金名古屋製鉄所だけではなく、高炉メーカーの双璧であるJFEスチール（川崎製鉄と日本鋼管が2002年に合併して発足）でも千葉製鉄所で連続して発生している。

　またあまり表沙汰にはなっていないが、他のJFEスチール製鉄所においてもメッキ工程の不具合から生産が滞ったり、新日鐵住金発足に伴う生産品目の移管がスムーズに進まず、新しく扱うことになった製品の梱包作業に慣れていない……という盲点のような事情で出荷が遅れる事態が起きている。

　実際に、と或る建設用の資材は欠品寸前の状態にまで追い込まれていたと聞く。


　
　長期の低迷で疲弊し人材不足に苦しむ建設業と同様、｢King of 製造業」たる製鉄業界でも、合併・事業統合に依る合理化で有能な人材が流出し、技術の伝承に影響が出ているのだろうか。


　公共事業や住宅着工が増え、国民の懐が潤って新車の需要が拡大しても、製鉄所のトラブルで鋼材が届かない、自動車のボディが作れない……では、景気回復に冷や水を浴びせかねない。
　日本経済全体に悪影響を及ぼさぬよう、安全管理に慎重を期してほしいものだ。