新古

　老舗有力経済誌・東洋経済が運営するサイト｢東洋経済ONLINE｣の配信記事から『BMWに｢新車同然の中古車｣が溢れかえる大異変～販売増の裏でディーラーの｢自爆営業｣が常態化～』に懸念す。

　一昨日前の記事で、ブランディングの重要性を指摘したばかりだが、我らがメルセデスおよびVW・アウディ陣営と並び立つドイツの最有力ブランドたるBMWに起きている異変を伝える記事。

　メーカーおよびインポーターから新車に関する情報や試乗車を提供して貰い、なけなしのコンテンツを組み立てる自動車メディアと違って、恐らくは便宜供与を受けることも、その返礼として「提灯記事」をリリースする必要もない一般経済誌という立場からか、書きっぷりに遠慮が無い。

　
　些か旧聞に属する話題で恐縮だが、販売競争力向上・ブランド維持を目的として、インポーター主導で優良な中古車を流す例を弊ブログでは紹介している。
　数量確保ありきではなく、中古価格を下支えすることで一般ユーザーの乗換え需要・リース販売の中核である法人需要を喚起し、結果としてブランド価値を維持したまま数量を拡大する施策である。

　一方、記事にある販売実態が事実であれば、新車販売を阻害し、割引幅拡大で値崩れ→利益が縮小するのみならず、ブランドイメージを毀損・崩壊する最悪の事態に至りかねない。


　記事のライター氏は、他ブランドとの激しい競合およびインポーターの強引な販売姿勢を主たる要因としているが、私としては、それだけが理由とは思えない。
　プレミアム性ではメルセデスと、数量面ではVW・アウディと、それぞれライヴァル関係にあるのはドイツ本国でも同じであるし、そもそもインポーターとは本社に対するプレゼンス拡大のため、販売現場に無理を強いるのが常なのではないか。

　BMWが苦境に陥っているのだとすれば、その要因は顧客側にも見出せる。
　このブランドが主たるターゲットとしているであろうセグメントを構成する、溌剌とした若き富裕層は、メルセデスがターゲットとする層(＝もう少し年齢が高く、やや保守的)よりも、考え方が柔軟で既成概念に束縛されない。

　カーライフについても経済的合理性を評価軸に判断した結果として、従来は一般的であったクルマの「所有」ではなく「利用」にシフト、或いは公共交通機関が充実する都心に暮らす人々が、クルマ自体を放棄してしまったとしたら。
　他のどのプレミアム・ブランドよりも、BMWが割を食ってしまうと思う。


　販売現場を預かるディーラーだけでなく、インポーターにおいても旧来の販売手法に固執し、只管に数量拡大を追い求めるのではなく、ブランド維持を第一に新たなサーヴィス提供・カーライフの提案ができるよう、業態そのものを含めた大転換が必要だろう。

　それが他ブランドに先駆けて成功した暁には、BMWがダントツのトップを駆け抜けているかもしれない。