• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

midnightbluelynxのブログ一覧

2021年06月14日 イイね!

紫帯

紫帯 クオリティの高い鉄道関連記事の発信が多い老舗有力経済誌・東洋経済が運営するサイト「東洋経済ONLINE」の配信記事から『「半蔵門線」新車に見る東京メトロの車両開発戦略~東急、東武との共通化はどの程度重視される?~』に注目。

 話題の中心となっている新型車輌の公開自体は今月2日で、既に10日以上経過しているからか東洋経済の鉄道関連記事にしては少々散漫な印象。
 個人的にはあまり評価を高くしていないが、述べられている事実は大筋で間違いのないところ。


 半蔵門線と言えば、私にとっては神田神保町の玄関口である。
 今は亡き「いもや」(老舗の天婦羅/豚カツ店)で腹を満たし、古書店街で出物を探して疲れた身には、白雲なびく明治大が聳える丘を登った先にある御茶ノ水駅は実際の距離以上に遠い。

 神保町駅の入口は、古書店街・スポーツ用品店街とほぼ同じレヴェルの場所にあり、新宿へはズバリ「都営新宿線」が直行するが、渋谷・青山・表参道方面へは半蔵門線が直行し、池袋へも永田町駅にてエスカレーター一本の接続(但し猛烈に長いが)で有楽町線へ乗換えができる。
 反対方面は当時水天宮前駅折返しだったが、現在は錦糸町・押上方面へ延伸して、東武スカイツリーラインへの直通運転を開始、また総武線・京成線との乗換えも可能になり、利便性が倍加した。

 ちなみに、東京メトロの路線で全区間が地下となっているのは半蔵門線と南北線だけ、南北線を含め全ての東京メトロ各線と接続しているのは、半蔵門線が唯一となっている(乗換駅になっていないのは半蔵門駅だけ)。

 加えて新車発表と相前後して、私が鍛練に励んでいる松濤館流空手の道場から、半蔵門線のラインカラーと同じ紫帯を許され、また気持ちを新たに稽古へ臨んでいる。

 
 このように、なかなか思い入れの深い半蔵門線であるが、こと営団地下鉄~東京メトロの電車となると、実のところ印象がかなり薄い。
 1978(昭和53)年の開業当初は自前の車輌がなく、東急新玉川線(現在の田園都市線・二子玉川駅以東の旧称)から東急保有車輌の片乗り入れとなっていた。
 1980(昭和55)年に、千代田線用6000系・有楽町線用7000系のエッセンスを引き継いだ半蔵門線用8000系電車が導入されたが、これとて東急保有車輌が10両編成でホームを目いっぱい使うのに対し、8両または6両編成であったため見劣り感が否めなかった。
 その後、全19編成が10両化(うち5編成は製造当初から10両編成)され、増備車として東西線05N系の仕様をベースとした08系(10両×6編成)も導入されたが、それも印象に残っていない。

 これは半蔵門線の総延長16.8㎞に対し、乗入れ先区間が極めて長距離(東急田園都市線/東武スカイツリーラインおよび日光線の合計81.7㎞)であることに因る。
 相互直通運転は、便宜的に乗入れ先へ車輌を貸与/乗入れ先から借用する体裁を採るので、運用に供される車輌数は各社の管轄区間の長さに比例する。
 よって相対的に、半蔵門線車輌のプレゼンスが希薄になってしまう。

 
 私が半蔵門線を利用する際は、有楽町線との乗換えに便利な押上寄り先頭車に乗ることが多い。
 東急8500系が乗入れていた当時、何度も運転台後ろの壁に飾られた鉄道友の会「ローレル賞」の記念プレートを見たことを覚えているが、半蔵門線の8000系・08系について何か記憶に残っているものが有るかと問われると、絞り出せるモノが全くないのが実情だ。

 乗入れ区間の構成が変わらないので、この度導入された18000系電車も、乗車できる機会が限られてしまうが、新戦力として勢力を広げていく中で、何かしら佳き印象を刻み付けられればと願っている。


 記事では、鉄道会社間で車輌の仕様を共通化する利点と困難さを論じているが、その事実関係を述べているのみで、ソリューションが示されていない。

 車輌の共通化を強力に推し進めたいのであれば、車輌の調達を各社がバラバラに行うのを止め、「車輌保有会社」を設立してリース調達するのはどうだろうか。
 直通運転に供される車輌だけでもリース調達にスイッチすることで、スケールメリットの発現・資産圧縮などコスト低減が可能になる。
 「車輌保有会社」を公的補助の受け皿とし、中小民鉄へ最新の車輌を割安に供給することも検討したい。
 更にこのスキームを援用・拡大し、車輌の提供だけでなく第3種鉄道事業者として運行にもコミットできれば、投資コストとの見合いで絶滅状態となってしまった夜行列車を、新たな旅のコンテンツとして復活させることもできよう。

 東洋経済のライター氏には、せめてこの辺りまで踏み込んで記事にしてほしかった。


Posted at 2021/06/15 00:05:01 | コメント(0) | トラックバック(0) | 鉄道 | 日記
2021年06月04日 イイね!

雷都

雷都 クオリティの高い鉄道関連記事の発信が多い老舗有力経済誌・東洋経済が運営するサイト「東洋経済ONLINE」の配信記事から『車両お披露目「宇都宮LRT」、喜び一色でない現実~インフラ整備も進みつつあるが事業費大幅増加~』に注目。

 ついに既設路線の延伸でも、廃止路線の復活でもない、ネットワークそのものが新設される路面電車が、いよいよ開業する。
 社会人生活を始めた街での主要な交通手段であり、学生時代の研究対象であった路面電車の、経済的優位性・社会的有用性は、交通経済学の研究成果からも、また先行して整備が進められた欧米諸都市の実例からも明らかとなっている。
 数十年遅れではあるが、漸く日本も路面電車の価値に開眼する時を迎え、あたかも自分の夢が実現したかの如き大いなる喜びを禁じ得ない。


 路線名「ライトライン」は、雷が多い宇都宮=雷都・光(light)・ライトレールと、複数の意味を持たせている。
 優美な車体デザインの外装も稲光をイメージしており、ヴィヴィッドな黄色が力強さを付け加える。
 架線電圧こそ、街路区間での安全性に鑑み750Vに抑えられているが、軌間は宇都宮に乗り入れるJR在来線・東武宇都宮線と同じ1,067mm(3フィート6インチ)を採用。記事中でも触れているが、性能上は70㎞/h走行が可能な強力モーター搭載、および中間車を増結可能な構造と併せ、他路線への直通運転を念頭に置いている(但し、JR・東武が採用する架線電圧1,500Vへの対応/烏山線など非電化区間では電化工事を別途要す)。

 なお広島・長崎始め在来の路面電車は、架線電圧600Vを採用しており、「ライトライン」は25%電圧が高い。電圧差は出力や速度の向上となって顕れる。
 また、日本の路面電車としてはメジャーであっても国際的に直流600V電化の路線は希少で、メーカーの立場としては鉄道システムを世界展開していく戦略上、ガラパゴス化した直流600V対応の電装品の生産を停止するのではとの見通しがあり、「ライトライン」事業の継続性・発展性を見据え先手を打ったものと思われる。

 整備に際しては、宇都宮市・芳賀町が軌道設備だけでなく車輌も調達し、運営企業・宇都宮ライトレール(株)に使用させる「上下分離」を採っているが、主に路面電車を規制・監督する軌道法に基づく路線での「上下分離」スキームは初めてである(但し、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づく特認。これまで「上下分離」が適用されてきたJR貨物や各第三セクター鉄道は、「軌道法」ではなく「鉄道事業法」で規制)。
 「上下分離」方式による鉄道路線の整備は、特定財源まで用意されて公金で整備が進む道路との対比で、私の学生時代以前から声高に主張されてきたスキームであるが、私の記憶を辿るに路面電車に適用できる法律が無いことに気づいておらず、「ライトライン」の整備スキームを通じて初めて知った。
 今でも自主的に交通経済学の研究を進めている者として、新たな知見であると同時に、もっと早く知っておくべき重大な法的枠組みの不備であったと恥じ入っている。


 冒頭記事では、決して手放しで喜んではいられない現実も書き連ねられているが、運転免許を持たない児童・学生や、運転免許を返上した高齢者の勉学・課外活動・生活を支える為にも、地方都市における公共交通の拡充は避けて通れない。
 「ライトライン」単体での収支でなく、「ライトライン」開通によって、宇都宮を中心とした経済圏がどれだけ発展したか(域内のGDPや地価の変動率など)、生活の質がどれだけ向上したか(域内道路の渋滞状況や大気汚染の数値など)、移動の安全性がどれだけ改善したか(交通事故件数や死傷者数の変化)を金額換算し、社会全体としての収支を分析し判断していただきたいと思う。


Posted at 2021/06/04 18:35:28 | コメント(0) | トラックバック(0) | 鉄道 | 日記
2021年05月31日 イイね!

輻輳

輻輳 全国紙・朝日新聞が運営するニュースサイト「朝日新聞DIGITAL」の鉄道関連コンテンツ”テツの広場”配信記事から『福島駅の新幹線「渋滞」解消へ 東日本全体の運行に影響』に注目。 


 天下の朝日新聞をして、極めて拙劣なタイトルである。
 そもそも鉄道業界において、「渋滞」なる語を使う場面に遭遇することがない。
 緻密に設定されたダイヤに従って運行している限りにおいて、列車間隔が信号システムの限界にまで狭まることはあっても、道路交通における「渋滞」のような事象は発生し得ない。
 よって福島駅における分割・併合・緩急接続が、幾らトリッキーであろうとも、平常時に「解消されるべき渋滞」など発生していない。

 しかも記事中の「渋滞」と同じ意味合いで「混雑」という別の語が用いられている。
 「渋滞」なる語の妥当性をさておくとして、統一したほうが読み下しやすい。


 あくまでダイヤ乱れなど異常発生時に、福島駅における複雑な列車運行が原因となって、更なる列車遅延(=記事中で言う「渋滞」)を拡大させるリスクを解消するための工事である。
 非常に混み合っている状態を意味し、その結果として混乱や事故が生じかねない状態を表現するに最適な語として、「渋滞」に代わり「輻輳」を挙げたいが、如何だろうか。

 朝日記者には、記事執筆の基本に立ち返りつつ、鉄道技術分野の用語を正しく選択してもらいたい。



 弊ブログでも、福島駅における東北・山形新幹線接続の複雑さ・困難さをかねてより指摘しており、漸く解消に着手したことは非常に喜ばしい。

 しかし現場は、地上に東北本線・奥羽本線・福島交通線、空中にそれらをオーヴァーパスする県道の跨線橋と、更に東北新幹線の高架橋が横たわる。

 福島駅における新幹線列車以上に輻輳する既存施設とのクリアランスを確保し、新たな線路を通すのは、針の穴を通すような繊細さで、複雑な曲線を描く巨大な土木構造物を築造するプロセスに他ならない。
 記事中で、精密な3D図面を作成したとあるので、列車運行に差支えないよう注意しつつ、ドローンを飛ばして点群データを取得し、仮想空間上にアプローチ線新設現場を再現、導入空間を検討していったものと想像する。

 これからも施工計画・安全管理に相当な苦労が伴うものと予想されるが、竣工まで折に触れて状況を確認していきたいと思う。

Posted at 2021/05/31 23:16:04 | コメント(0) | トラックバック(0) | 鉄道 | 日記
2021年04月03日 イイね!

収受

収受 比較的質の高い鉄道関連記事が豊富な老舗有力経済誌・東洋経済が運営するニュースサイト「東洋経済オンライン」の配信コンテンツから『富山LRT、直通運転で消えた便利な「セルフ乗車」~2022年開業予定の宇都宮では導入目指すが…』に注目。

 記事の内容に触れる前に、執筆者・柚原誠氏の肩書に目が行ってしまった。
 なかなか一般メディアでは目にすることのない「技術士(機械部門)」とある。
 部門違い(建設部門)ではあるものの、同じく技術士の肩書を持ち、かつ鉄道を含む運輸・交通行政の研究をライフワークにする者として、もっと早くに柚原氏の記事に触れておきたかったところ。

 同氏は私鉄大手・名古屋鉄道の技術畑から出世し副社長まで務められた方で、現役を引退された現在は各地で講演活動をされている他、鉄道友の会副会長として、趣味の分野を含む鉄道の社会的プレゼンス向上に尽力されている。
 機会があれば、技術士会のイヴェント等でお目に掛かりたいと願う。



 述べられているテーマについては、一部に「それを言うなら、なぜ名鉄で実現しなかった?」という不遜かつ視野の狭い意見があるやに伺っているが、そもそも我が国において「セルフ改札」を成り立たせる社会的素地が醸成されていない。
 レヴェルの高いところから分析すれば、責任と良識ある市民としての義務=交通機関を維持するために必要な料金を自主的に負担するというコンセンサスがあるかどうか。
 誰も見ていなければ運賃をちょろまかす、責任感も良識も欠く不届き者が多ければ、「セルフ改札」が瓦解するのは自明である。

 逆にレヴェルの低いところから分析すれば、諸外国では料金が極めて低廉に抑えられていて、不正乗車を成功させて手許に残る小銭と、発覚した際に課せられる罰金が、明白にバランスしないからである。
 諸外国の公共交通料金が低廉なのは、水準そのものも然ることながら、日本のように運営主体(公営・各民鉄)や輸送手段(鉄道・路面電車・バス)が変わるごとに初乗り料金を課されるような硬直したシステムになっておらず、最初に入場した時刻から一定時間内・一定エリア内は何回でも乗降自由という料金制度(=ゾーン制)の影響が大きい。

 私個人の見解としては、これらに加え、交通事業者の労働組合組織率が極めて高く、運行に集中するべきオペレーターに料金収受業務を担わせることを労働組合が許さず「セルフ改札」にせざるを得なかったのではないかと推測する。
 日本では路線バスにオートマチック車が導入されるまで、かなりの時間を要したが、例えばイタリアでは前世紀末の時点でマニュアルの路線バスを見掛けることが無くなっていた。これも労働環境の改善を目的に、組合が導入を要求していた可能性が高い。
 そのバス運転席脇には、料金収受に用いるために設けたであろうスペースがあったが、単なる運転席と客室の仕切り壁になっていた。
 オペレーターは料金収受に一切関与せず、しかも操作が簡略化されたオートマチック車での運転に集中できるが、一方で出力ロスの大きいオートマチックトランスミッションの大型車を、アクセルべた踏みで運転するものだから、街角で感じる排気ガスの不快さが日本国内よりも酷かった印象がある。



 話がやや脱線したが、私としても「セルフ改札」に賛意を示し、その導入に協力したい。
そのために、まず為すべきこととして以下の2点を挙げたい。
〇料金の大幅値下げ
運行と料金収受の分離

 前者は、前段で述べた通り、罰金が割に合わなくなるほどに料金が低廉であれば、不正乗車は少なくなる。
 水準そのものを下げなくても、初乗り料金の多重賦課を解消するだけで、相当安くなるはずだ。
 「卵」と「鶏」の関係になりかねないが、「セルフ改札」が定着すれば、初乗り料金を課す最大の根拠である駅の施設及び配置要員を大幅に簡略化・省力化でき、初乗り料金の多重賦課が正当性を喪うことになる。

 後者は、柚原氏が勤めた名鉄の本拠・名古屋都市圏などで、複数事業者に跨る「セルフ改札」を導入するに際しては必須となる。
 更に「ゾーン運賃制」が加われば、選択できるルートは無数に増えるため、収入を各社に配分しなければならない。

 運行と料金収受を完全に分離できれば、列車やバスを運行する事業者は利用者から料金を受け取るのではなく、料金収受を行う主体に対して輸送力を提供し、コストに適正な利潤を加えた費用の支払いを受ける形になる。
 このスキームであれば、「セルフ改札」で不正乗車が多発したとしても運行事業者の利益に影響しない。
 また料金収受を行う主体が別にあれば、政策的に運賃を引き下げるための公的補助の受け皿として機能しやすい。


 今回の記事では、主に短距離の路面電車における料金収受の話題であり、私が挙げたような内容にまで踏み込んでいないが、当然に柚原氏の念頭には、これらの施策が存在し検討を進められているものと想像する。
 技術士の先輩が執筆される、新しいコンテンツの発表に心から期待したい。
Posted at 2021/06/22 19:49:52 | コメント(0) | トラックバック(0) | 鉄道 | 日記
2021年03月25日 イイね!

拉因

拉因 オークションサイトで見つけた古レールは、明らかにロールマークの一部である陽刻が見えるものの長さ145㎜程しかなく、もし元々が長いロールマークだったとすれば、全体の一部でしかない。

 読み取れるのは「SW」「1922」の6文字。
 「1922」は西暦の製造年(=大正11年)で間違いなかろうが、「SW」が何を意味するのか(製造者?発注者?規格?)が分からない。
 なればと、古レールを目利きするのに毎度お世話になっているサイト(参考情報URL参照。極めて資料性が高く、辞書代わりにしている)を見るのだが、該当する刻印が無い。
 汎くネット検索を掛けてみても、ヒットしない。
 応札締切が迫る中、素性の分からない鉄塊に貴重なお小遣いを投じるべきか、悩んでいた。

 それは同時に、ラッキーな状況でもあった。
 ドイツ「ウニオン」のレールを落札した際も同じだったが、私以外にもウォッチしてた人が複数居たものの、やはり誰も明確な由来が分からなかったようで、札が入らない=値段がレイズしない。
 それなら私が解明し、納得して落札してやろうと、再度目利きを始めた。


 「SW」の前に、後天的に穿たれたと思われる穴があるのだが、その淵にサビ或いはバリにしては不自然な凸部があるのに気付いた。

 そうか、元々ここには別の文字が刻印されていたのだ。
 「SW」ではなく「*SW」なのだとしたら、資料を一読した/ネット検索しただけでは、ヒットしなかった可能性がある。

 加えて、熊本県からの出品であったことから、地域も考慮して再検索と資料の閲覧を繰り返したところ………素性が判明。即刻応札して、出品当初の提示額で落札した。


 「*SW」は、正しくは「RSW」で、ドイツの「ライン製鋼所=Rheinische StahlWerke」の略号だった。
 「RSW 1922」で改めて検索すると、熊本電鉄の駅舎上屋で、全く同じレールが用いられているのを確認でき、出品地とも一致する。 

 ドイツの重工業地帯・ルール地方の中でも、国際河川・ライン川とルール川が合流する水上交通の要衝にあるデュースブルグ市ルーアオルトに製鉄所を構えていた「ライン製鋼所」は、帝政末期~ヴァイマル共和制下のドイツで最大級の鉄鋼企業だった。
 このレールが製造された1922年当時は、第一次世界大戦の戦後処理を話し合った前年のロンドン会議において莫大な額の戦時賠償が課され、ハイパーインフレに陥るなどドイツ経済が混迷を極めた時期である。
 ルール地方は、賠償金支払いの遅れから翌1923年1月にフランス地上軍が進駐、所謂「ルール占領」にも逢っている。

 その後、ドイツ経済が回復軌道に乗る過程で「ライン製鋼所」、現在も事業を継続している「ティッセン(1999年に、やはり日本向けにレール輸出実績がある大手鉄鋼企業クルップと合併しティッセンクルップに)」他2社の計4社が経営統合し、1926年に合同製鋼(Vereinigte Stahlwerke)が発足した。
 ティッセンを率い、合同製鋼創立を主導したフリッツ・ティッセンは、ヴァイマル共和制への不満からナチズムに傾倒、私財から巨額な献金をするパトロンとなっていた。

 後にポーランド侵攻やユダヤ人排斥に反発し、ナチスと袂を分かちドイツから亡命するが、時すでに遅し。ドイツだけでなく、世界を第二次世界大戦の渦へ巻き込む手助けをしてしまった。
 戦後になって、ナチスを支援した責任を問う裁判にかけられ、ドイツ国内に残っていた資産の一部を没収されている。

 
 1月に手に入れた「TENNESSEE」のレールではアメリカ経済史の勉強をさせてもらったが、今回の「RSW」のレールでも、大いにドイツ経済史・政治史を学ばせてもらった。

 めでたし、めでたし……



 ……と締めたいところだが、一つ疑問が残ってしまった。
 一般的に見られる古レールの断面サイズとは、どうやら違うようなのだ。




 上記写真の通り、底面幅・高さとも100㎜。
 サイズからして60lb(30kg)/レールだと思われ、この規格のレールは底面幅と高さが同じなのが一般的で、ここまでは矛盾が無い。
 しかし、多くの60lbレールは底面幅・高さが約108㎜(=4.25in)で、RSWのレールは僅かに小さい。
 ヤード・ポンド法ではなく、メートル法で定められた規格なのだろうか。

 この辺り、状況を整理した資料が見当たらず、不明のまま残されている。
 古レールの世界は、やはり奥が深い。


 


Posted at 2021/05/16 23:22:52 | コメント(0) | トラックバック(0) | 鉄道 | 日記

プロフィール

「育児 http://cvw.jp/b/1043160/47663127/
何シテル?   04/18 19:29
 建設業界で禄を食む文系出身(経済学専攻)のプロフェッショナル・エンジニアが、愛車整備・政治経済・文化学術・スポーツそして土木施工の現場で日々記した野帳を公開し...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/8 >>

     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

愛車一覧

メルセデス・ベンツ Gクラス カブリオ メルセデス・ベンツ Gクラス カブリオ
 G320カブリオ(V6・ミッドナイトブルー)を愛車にしています。  息の長いGクラスで ...
その他 その他 その他 その他
 サントレックスの軽規格折りたたみトレーラーです。以前所有していたキャンピングトレーラー ...
メルセデス・ベンツ Gクラス ジュラシックワールド・オフィシャル (メルセデス・ベンツ Gクラス)
G550 as a movie star! Coming soon.
メルセデス・ベンツ Gクラス ドイツ連邦軍多目的車輌「ヴォルフ」 (メルセデス・ベンツ Gクラス)
 ドイツ連邦軍が1989年~1994年にかけて10,000両以上もの大量調達を果たした軍 ...
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation