その男は突然店に相談に現れた。
目付きは鋭く、筋骨隆々としている50代半ばの武骨な男。
今時の草食系男子のかけらも感じない不器用そうな昭和男。
奥様も同じくらいの年の頃、小5の娘さんも一緒だった。
その男の相談に乗っていると、時々疑うような鋭い目つきでこちらを睨みながら話を聞いている。
「一体何者なんだ?」
ふとした時にその男は
「ガレージが…できたらいいんだが。ガレージにはエアコンも入れたいんだが。」
わし「は?…お、お車は、何に乗られているんですか?」
その男は初めてニヤリとして
「RX-7 !」
と即答する。
「まじですか!FDですか!」
男は首を横に振った。
「FCですか!?」
男はニヤニヤしながらまたもや首を横に。
「ま、まさかSA22C」
「左様だ」
「まじですか!あの1トンのボディーに165馬力の、緑色のやつですか!」
「そうだ。俺のは420馬力にしてあるけれどな。」
わし「うおおおおお、よんひゃく!?リアタイヤはぶっといんですか!?」
「205だ。」
!(◎_◎;)
仕事の話はほどほどで切り上げ、SA22Cが停まっている駐車場へ。
写メは撮れませんでしたが、素晴らしい仕上がりでした。
程よくローダウンされた美しいスタイリング。
一度もオールペンしていない、ややくすんだガンメタに近いボディーに30年以上の歴史を歩んできたことを感じる。
まさに銀閣のような佇まい。
足元にはRSワタナベのホイール、何とマグネシウム製の特注品。無駄なインチアップはせずオリジナルの15インチのまま。
420馬力を受け止めるべく、ホイール内いっぱいに収まるブレーキ。
フロントキャリパーはFDの異径4ポッド、ローターはFC用のスリット。
キャリパーの色は、赤や金色に塗るのではなく、あえて存在を消すグレーに塗装されているところに、「侘び寂び」を感じざるを得ない。
運転席、助手席とも目一杯ローダウンされたシート。
420馬力との事なので、排気音は爆音かと思いきや以外にもジェントル。
姿かたち、パーツ、音、全て主張することはない。
一般の人には今にも朽ち果てそうな只の昭和車にしか見えないだろう。
しかし決して華美ではないが、選び抜かれたパーツの一つ一つに宿る内側から滲み出る闘気(オーラ)。
わかる者にしかわからない。
別にわかってもらえなくて結構、という気高ささえ伝わってくる。
舐めてかかれば、生半可なマシンではあっと言う間に一刀両断にされるだろう。
久しぶりに武士道を感じる男とマシンに出会いました。
この男とマシンが休むガレージ付きの家、ぜひとも実現してほしいものだ。
Posted at 2015/06/15 15:59:04 | |
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