
写真のような鍛造ホイール、どうやって作るのか考えてみたことも無かったのですが、鍛造ホイールの製造過程をBBSジャyパン高岡本社で見学する機会に恵まれ、専門家のガイド付きで製造工程を案内していただきましたので、その概要を記録します。
鍛造というとなじみ深いのは、日本刀を鍛える過程ですが、ホイールのようなサイズでそれは不可能だし、そもそもアルミは叩いたら割れるそうです。
もともとBBSはドイツの会社、ドイツ南西のbarden waldenburg州になるんでしょうか、ダイムラーの本社がシュツットガルトにあるし、もともと機械加工系の会社が集積しているエリアです。
その後、種々の経緯で今は日本でも三社しかない鍛造ホイールメーカーの一つです。
数字も聞いていますが、秘密情報に属するだろうから具体的な数値は記載しません。
【1】 製造プロセスの概要
① アルミやマグネのペレット(形状がそうなのでペレットと呼びます)をプレスで型を使って成型
② 成型時に使った離型剤のクリーニング
③ 絞り(スピニング)でホイール本体を形成
④ 時効処理
⑤ 硬度試験
⑥ マシニングで削り
⑦ 仕上げ
加工順で見学していないので、前後あるかもしれませんが理屈からしたらこうだろうと思います。この後塗装をするのですが、それは場所が別で今回は機会なし。
【2】 成型
・最大で1万ton近い力で型を使って成型します。ペレットは予熱しておき、型は高温を保った状態にしておきます。いずれも温度は数百度。
・プレスで押して金属をゆっくり引き延ばす、これが鍛造の所以。この過程で金属粒子の欠陥が取り除かれ、強度と粘り強さが出せるようになるんだと。
・ペレットの形状はマグのほうが細長い。これはアルミは変形量を大きく取れないからだとか。
・デザインは複雑化してきているので、一回のプレスでは最終形状にならないので、複数の型を使って成型を繰り返して最終の形状にします。
・成型前には、金型に離型剤を噴射します。役割は例えれば、餅つきで餅を成型するときに手にくっつかないように、餅につける片栗粉のようなもので、金型に材料がくっつかないようにするためで、成型プロセスでは一般的に使われます。
・型のメンテナンスは数百個形成ごとに必要。これはこんなものだろう。
【3】 離型剤の剥離(クリーニング)
・離型剤、炭素系だそうで成型したものは真っ黒です。
・これを強酸と強アルカリの水槽をくぐらして、剥離させます。
・長くつけすぎると、ホイール自体が侵食されるので、温度と時間管理重要。
【4】 絞り(スピニング)
・ホイールの形を見ればわかる通り、最終形は型では作れません。型が抜けないから。
・これは絞りを使って、アルミを押し広げて形成します。
・スピニング後にブラストで表面処理。これは二種類の材料の粒子を使用。
【5】 時効処理
・アルミ合金の硬度を高めるための処理。焼き入れ焼きなましで鉄も特性が変わりますが、アルミ合金も同じことなのだと。これなしでは所要の性能は望めないはず。
・時効処理のあとで、全数硬度測定。ビッカース硬度測定と原理は同じだろう。
【6】 マシニングで削り
・大まかな形にはなりましたが、最終寸法だしのためには削りが必須です。
・最初の材料の何割かはこの削りで失われるようです。もちろん削りくずはリサイクル。
・モデルによって、生涯個数の少ないものは、削りでデザイン含めて作りこむのだと。加工時間は長くなるだろうけど。
【7】 仕上げ
・これは今は、職人の技。いずれ機械化はされるのだろうけど。
・この段階で見慣れたピカピカホイール完成。
【8】 全体通じた感想
・材料を生かして特性を出すためにはすべての加工のプロセスで温度管理と時間管理とがキモ。
・ホイール、特に鍛造ホイールはデリケートな製品。ヘルメットと同じく、一度強い衝撃を受けると、再使用での強度保証はできないと考えるべきだと改めて感じた。
こういう機会がなかったら、人生で一度も見るは機会なかっただろうからアレンジいただきありがとうございました。
当日夜宿泊(民宿)でのヒラメ
これは鍛造ホイールみたいなものか歯ごたえあって旨いヒラメだった。
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車 | 日記
Posted at
2017/10/08 20:41:12