良いものを安く？

包丁選びの基本･･･
・さびにくい
・よく切れる
・切れ味が持続する
・リーズナブルな価格

これらを満たす鋼材は何度も書くが、AUS8,AUS10,V金,Kai-goldあたりである。

包丁のウリでよくある、”メスと同じ鋼材”とか、”日本刀と同様の鋼材”などというのは全く意味を持たない。
何故なら、医療用のメスは基本使い捨てだから耐久性を必要としない。鋼材はフツーのモリブデンバナジウム鋼で、硬度的には普及クラスの鋼材･･･ありがたがるほどのものではない。ロックウェル硬度はせいぜい50台後半。

日本刀は製法が厳しく制限・管理されており、玉鋼という鋼材を使うが、鋼材も出来も非常にばらつきが大きく、鍛冶屋の腕に大きく依存する。鋼材としては”玉鋼”に縛られた日本刀よりも、技術革新で粉末冶金法等を取り入れた包丁用鋼材の方が遥かに進歩しているのです。

上の基本のうち、”リーズナブルな価格”という部分を外すと･･･更に選択肢は広がる。
HAP72,ZDP-189などのロックウェル硬度60台後半に迫る超鋼素材、
同様に粉末ハイス系と呼ばれるR2,SPGⅡ,G5などなど･･･そして、ステン系ではあるがV金系の最高峰であるV金ゴールドなど･･･

デザインに無駄金を掛けたダマスカス（墨流し）系は別として、この辺のクラス（粉末ハイス等）になると相場は通常2万円付近になるし、その中でもトップクラスのHAP72やZDP-189となると3万円超えである。
（ツヴィリングのツインセルマックスならうまく探せば2万円前後であるけどね）

まぁ、前置きが長くなったけど･･･
ざっくり言うと、ステン系で最もコスパが良いのはロックウェル硬度58～60程度のものだと思う。この辺なら1万円までで買えるものが多いし、家庭用としては十分永切れし、包丁を研がない人でも時々研屋に出せば切れ味を保てる。

それを超えるもの、ちょっと値段が張っても良いものが欲しいなら、ロックウェル硬度60代前半、具体的には63程度が良い様に思う。
このクラスとなると、ほぼほぼ（錆びない系では）粉末ハイス系になってくる。

ZDP189はロックウェル硬度66とか67も出せるようだが、そこまで硬度を上げると背反としてもろさが出てきて欠けやすくなるので、ベストはZDP189で63～64程度の硬度に仕上げたものじゃないかな。
※実際オイラが持っているZDP189製の包丁はツインセルマックスほどの硬さは感じないし、今のところ刃こぼれも皆無である（使用頻度も低いけどねｗ）

もしくは、粉末ハイス系で61～63程度の仕上げのもの。この辺は100均や1,000円台の安物ステンとはやはり別物だと思います。

ネット等でも、良く研げは100均の包丁も高級包丁も切れ味が変わらないという意見もあるが、実際には違うのよね。安物は硬度が無いから、プロが研ぎあげた時には初期から違いがあるし、ましてや連続使用によるへたり度合いの違いはもう、雲泥の差があるのよ。
だから、ある程度永切れする高級ステン系の素材を、ある程度の頻度で研ぎながら使うのが一番いいと思うのです。

うわー、我ながらまた長々と書いちまったが、今回、ヤフオクで出物の粉末ハイス包丁が有ったので買ってみた。アウトレットものだが粉末ハイス系で3,990円はざっくり市場価格の半値6掛け位かな･･･

ヤフオクと言っても、出品者はプロ（刃物屋）なので、偽物とかはないと思う。
普段使いの天味聚楽、勝負包丁？のZDP189を使うと、やはりV金10号やグレステンとは一段違うな･･･と思うことが多いので、到着が楽しみです（笑）