
信号機をあしらったジャケットをもう一枚。
『ポール・チェンバース/ゴー』(1959年2月録音)
パーソネルは、
フレディ・ハバード(tp)、ジュリアン・キャノンボール・アダレイ(as)、ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)、ジミー・コブ(ds)
フレディ・ハバード以外は1959年当時のマイルス・デイヴィスのバンドのメンバーです。つまり、これはマイルスのバンドがシカゴに演奏旅行に行っている間に、バンドのメンバーが、リーダーのマイルスの代わりにフレディ・ハバードを迎えて行った「お忍びセッション」なのです。
VeeJay(ヴィージェイ)というシカゴの黒人マイナー・レーベルからのリリースで、どういう経緯があったのかはよくわかりません。(VeeJayレコードはビートルズをアメリカに紹介したことで知られています。)
メンバーたちはマイルスがいないせいか、とてもリラックス(というのもいかがなものか(笑))しており、スタジオ・ライブという形式なのですが、ところどころに拍手や掛け声が入っています。
ポール・チェンバースはこのとき23歳ですが、このアルバムの6曲中3曲は彼の作曲です。その中でもA面1曲目の「Auful Mean(オーフル・ミーン)」がなんと言ってもすばらしい。ベースとドラムスが的確なリズムを刻んだところへウィントン・ケリーのピアノがかぶさり、アルト・サックスが絡んでいく・・・そして、チェンバースの弓弾き(アルコ奏法)・・・ハード・バップのお手本みたいな演奏です。
2曲目の「Just Friends(ジャスト・フレンズ)」は古くからのスタンダード・ナンバーですが、こちらはいきなりフレディ・ハバードのブリリアントなソロが炸裂。ウィントン・ケリーのリリカルなタッチが素晴らしく、スタジオにいた女性スタッフが録音中なのに、つい堪らず「ケリー!」と叫んでしまう声も収録されています。
昔のジャズ喫茶というところはLPの片面しかかけてくれないのが一般的だったので、リクエストする時はA面かB面かを言わないといけなかったのですが、このレコードはA面もB面も人気があってよくかかっていました。
さて、ジャケットですが、写真の左下にClaus Brousteil (?)というサインのようなものが見えるほかはVeeJay盤のジャケットにはどこにもクレジットがなく、作者が誰かはわかりません。けれど、前回紹介した
マイルスの『ウォーキン(54年)』を意識していることは明らかだと思うのです。アルバム・タイトルにしたって、「Go(ゴー)」という曲目は収録されていないのですから、この信号機の写真にちなんでつけられたに違いありません。
59年といえば、御大マイルスはもうハード・バップではなくいわゆる「モード」と呼ばれる技法への転向を模索していた時期。「モードとはなにか」って今でも良くわからないくらいなので、当時のマイルス門下生たちにも、多分わかっていなかったと思います。そこで、マイルス抜きでめちゃくちゃノリのいいハード・バップのアルバムをつくり、「やっぱり、こっちで行きましょうよ!」という意思表示?をした、と考えるのは穿ちすぎですかねえ。
Posted at 2009/09/27 13:14:36 | |
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JAZZのLP | 日記