
エンジンオーバーホール、前回まではエンジンをバラして外した部品を確認するところまででした。よって今回はその続きです。第一部 完では終わらせませんよ。
さて、数あるエンジン修理の方法から、今回は既存エンジンのオーバーホールを選びました。その理由として、1つが自分の使ったエンジンの状態が確認できること(これは前回紹介しました)。そしてもう一つが、今回紹介するエンジン内部の部品・表面処理・組み付け精度をオーダーできること。つまり、自分好みのエンジンを作れるということです。これがエンジン交換には無い、最大のオーバーホールの利点とも言えます。
最初に考えたのは、車の目的をはっきりさせることです。そうしないと仕様も決まりません。ラーメンみたいに全部乗せが出来るのであれば、目的を決めなくても片っ端から新品へ交換して、良いと言われる物を全部付ければ良いのですが、そんな予算は私にはありません。
今回の目的は、5年or100,000km遊べるサーキットアタック用エンジンとしました。
ちなみに、NAのままで行きます。NAはNAの魅力があります。
この目的に合うように、まずは交換する部品を選定しました。
LEGのオーバーホールは、標準で下記部品が交換となります。
・エンジン内全シール
・エンジン内全メタルスリーブ
・ウォーターポンプ
・サーモスタッド
・イグニッションコイル
シール類は、今回は全て純正品を使用しました。RX-8の場合、サイドシールは社外の物を使用した方が組み付け精度を出しやすいという特徴があるのですが、今回はあえて純正にしました。
LEGのオーバーホールでは、標準で水回り部品も交換してくれます。
ウォーターポンプは寿命が延びたとはいえ、やはり100,000km毎の交換が安心です。特に前期型は金属プロペラを使っているため、水の管理が悪い状態で長期間使用するとプロペラが減ってしまいます。サーモスタッドも、長期間使用していると開きが悪くなったり、全く開かなくなったりします。水回りの状態が悪いエンジンは即ダメになるので、何も言わずとも交換してくれるLEGは親切です。
今回はこれに加えて、補機類も含めて下記部品も交換しました。
・全ハウジング(サイド3枚、ローター2つ)
ローターハウジングは、今も昔もオーバーホール時は基本的に交換となる部品です。あらがうことなく交換です。
サイドハウジングは、前期は特に摩耗する部品です。私のは後期型で摩耗は少なく再利用可能でした。しかし回転数の高い8ではさらに消耗することも考えられるため、交換することにしました。
・ウォーターホース
常に高温にさらされるため、劣化してしまうため交換です。
もともとシリコンホースへの交換を考えていた場所なのですが、メニューを考えている時にLEG社長から
「ウチもシリコンホースもっとるんよ~、在庫がいっぱいあるんよ~、在庫がいっぱいあるんよ~、在庫が(略」
と言われたので、LEG製にしました。
・ラジエーター
純正ラジエーターでは、アッパー・ロアタンクが樹脂製であるため、熱劣化で割れてしまったり、熱交換部のかしめから水が漏れる場合もあるため、交換することにしました。
後期純正はタイムアタック用途では必要十分な冷却性能を持っていますが、今回はオールアルミであるDRL製が中古で入手できたため、そちらに交換することにしました。
・オルタネーター
最近のコンピューター制御車では、オルタネーターの故障は命取りになります。幸いにして後期用の新品が手に入ったため、交換しました。
ちなみに、もちろんオルタ・エアコン両ベルトも交換しているのですが、最近なぜかオルタネーターベルトが短くなったようです。純正オルタネーターなら十分テンション調整の範囲内なのですが、社外オルタネーターだと取り付けが非常に困難になるそうです。
・エンジンハーネス
こちらも故障したら命取りな上、高温にさらされ劣化しやすく、さらに経験上生産終了になる時期が他機械部品よりも早い事が多いため、交換しました。
写真は旧ハーネスで、コネクタや配線はまだ大丈夫でしたが、保護材のコルゲートが熱でパリパリになっていました。こちらは保護材を交換して、予備として保管しておきます。
・エンジンスロットル
長期間使用すると、スロットル裏がご覧の通り劣化してしまいます。これが原因でスロットルが固着して動かなくなるやつがたまに居るそうです。今回は交換することにしました。
外した部品は、こちらも予備保管です。
・燃料ポンプ
良い燃料がなければ、良い燃焼は得られません。RX-8の燃料フィルターは燃料ポンプ一体となっており、フィルターを変えるにはポンプそのものを交換しなければなりません。フィルターはいずれ詰まる物、もちろん交換です。
最近の汚友達情報だと、特にフィルターの小さい後期型では、フィルターが詰まり始めると高速燃費が悪くなる傾向があるようです。私の車もその兆候が出始めていたので、10万キロで交換した方が安心な部品のようです。
写真は外したポンプですが、フィルターはここからさらにバラさないと見えません。
他にも、バラした時点で劣化が確認された部品(ホースジョイント、オイルシール・ホース、熱害板等々)は交換してもらいました。たとえばパルテノンの元である冷却水リザーブタンクも、私の車は今まで無傷でしたが、かなり変色が進んでいたため交換することにしました。最終的には、この部分もかなりの部品点数となりました。
ちなみに前期型の定番である、メタリングオイルポンプ(通称メタぽん)やメタリングオイルノズルについては、後期型では構造が大幅に変更されていて、故障しにくくさらに故障しても検知しやすくなっていることから、メタぽんは再利用、ノズルは清掃のみとしました。
次は、部品の加工検討です。
標準ではコスト・加工性・工程・そして万人向けという制約の中で作られたエンジンを、より目的を絞り自分好みにするため、一部の部品は加工をしてもらいました。
・インジェクター清掃
良い燃料がなければ、良い燃焼は得られません(大事な事以下略)。インジェクターも徐々にゴミがたまって当初の性能を発揮できなくなってしまうため、清掃してもらいました。
ちなみに、結果はそんなに汚れていなかったようでしたが、安心を買うことが出来たので後悔は全くありません。
・インマニ、エキマニ段付き修正
エンジンオーバーホールの定番です。エンジンを下ろさないと出来る作業ではないので、もちろん実施をお願いしました。
・インテークマニホールド研磨
今回の2大目玉その1です。
RX-8はインテークマニホールドの研磨で、アクセルによる車の反応速度(いわゆるアクセルのツキ)がかなり良くなることが中部の汚友達の間では知られていました。そこで、インマニのみをかなり昔に購入し、来たる日に備えていました。とうとうその日が来たため、日の目を見ることになりました。
こちらの加工は、八屋にお願いしました。研磨にはかなり時間と手間がかかり、さらに仕上がりも店によって違うようですが、私は八屋なら間違いないと確信してお願いしました。忙しい中時間を割いて加工をしていただき、大変ありがとうございました。
・エキセンシャフト・アペックスシール・サイドシールのWPC・DLC加工
今回の2大目玉その2です。
標準ではコーナーシールに施されているDLC加工を、他の部位にも行ってもらうことにしました。
・エキセンシャフト:WPC+DLC
・アペックスシール:WPC+DLC
・サイドシール:WPC
これも中部の汚友達の間では、特にエキセンシャフトへのDLC加工はエンジンフリクション低減の実績が知られていた加工であり、実際に実施したエンジンではメカノイズがものすごく小さくなるということも体験しているため、エンジンオーバーホールでは必ず実施をお願いしようかと考えていました。それに加え、今回は物は試しと言うことでアペックスにもDLCを行うことにしました。
加工はLEGより不二WPCへ依頼し実施してもらいました。
しかし、施工の途中で豪雨災害が発生し、運送会社が荷受けと配達をストップしてしまったため、不二WPCへの部品発送が出来ない事態に発生してしまいました。このとき、広島県でまともに動いていた交通機関は新幹線だけ・・・新幹線・・・
相模原の不二WPCまでハンドキャリーで持って行くことにしました。新幹線が早期に復旧してくれたのは、日頃の行いが良いからだと思っています。(わかる人だけ笑ってください)
対応してくれた不二WPCの社員の方、お土産までいただいてありがとうございました。
※社長、ブログから写真いただきました。
そんなこんなで、無事私の太い棒は黒光りになって帰ってきました。
エンジンのポートは、最後まで悩んだ結果、純正から形状を変更せずポート研磨のみを実施してもらうことにしました。
ポート形状を変更した場合、ほとんどの走るステージでのレギュレーションでは、プロ、セミプロ、ショップなど、魑魅魍魎(最大級の褒め言葉)を相手にしなければならなくなります。残念ながら、今の私にはそのUDEはありません。
そして、現在のステージであるノーマルポートでのレギュレーションでは、戦う相手が多く、これをやめたり1抜けたするつもりは今のところありません。
幸いにして戦ってもらえる相手に恵まれたため、受けて立てるようにノーマルポートとしました。
結果として、基本的にノーマルエンジンにレスポンス向上とフリクションを低減させて性能を向上させるエンジンとし、そのためにノーマルポート形状のまま、消耗品の徹底交換を優先し、予算の範囲で性能を向上させる加工を施す、ということになりました。
正直言って、タイムアタック用RX-8のエンジンオーバーホールでは、比較的普通の仕様になりました。しかし、これが私の目的に最もマッチするため、これ以外の選択肢を選ぶ理由は今のところありません。
1ヶ月半の作業工程を終え、無事に車を引き取ってきました。
オーバーホールを実施し、私の我が儘にも答えてくれたLEGさん、面倒であろうインマニ加工を引き受けてくれた八屋さん、急な部品持ち込みを引き受けてくれた不二WPCさんにお礼を申し上げ、私のRX-8はNEXT STAGEへ走り出しました。
2018年8月3日
RX-8 TypeRS Model.2011
ODO : 108,445km
新章、始まる。