
この記事は、
MTとATの違いを考察する。(その5)について書いています。
前回の結論は、シフトポジションは、絶対だからMTみたいに書いたが、先達が「MTの醍醐味はエンジンの回転数を制御できること」と書かれており、2番煎じである。
今回は、(自称)これまで見たことの無い結論である。
クラッチとギアチェンジの操作を自動化するのは実は大変なこと。
人が分担するのが最適解であると思うに至った。(おバカ)
だから私は元気なうちはMTの車に乗るのだ。
以下、解説するが、詳しくない人には読みにくくて申し訳ない。
次回以降を読んだら(自称)分かるかもしれないように書くので、ふーんと斜め読みして頂き、何となく結論だけ鵜呑みしていただけたら幸いです。
【クラッチ】
・420psを伝えるためにクラッチの圧着力が必要。 押さえが弱いと滑る。
さて、シフトチェンジの際は、圧着力に対抗する力でクラッチを解放しないといけない。 これって結構なクラッチペダル踏力(アスティナで7.5kgf)なのに、半クラッチ時には微妙な力(0.1~0.2kgfレベル?)の制御が必要。 そうなら1~3%レベルを制御することになる。 おまけにクラッチペダルの相当なレバー比を持って操作してるので、こいつを直接制御するとなると相当な力が必要なはず。 て言うか、事実DCTのクラッチは1%程度滑ってるらしい。 滑らないレベルでクラッチを圧着するには仕掛けが大掛かりになり過ぎ、元が取れないらしい。(MFI21)
・手動で有れば、左足で踏みこむ。 繋げる時は、自らの経験を基に有る程度の操作を決めた上で、前方加速度の発生、エンジン音の変化、ペダルの等力変化を5感で感じながら(味覚は使わないが、三半規管は使うんで、5感ですかな)、毎回微妙に調整しながら、アクセルと相談しながらクラッチミートをする。 場合によっては、アクセルを強く踏んで、クラッチ滑らせ、クラッチに謝りながらエンストを回避することもできる。
・AMTのクラッチミートが下手くそとよく言われるが、勾配、速度、気温、クラッチの温度、クラッチのすり減り具合含めて、3~4かそこらのマップで乾式単板クラッチを制御しようと言うのが、無理なのでは? アクセルの制御も車に持って行かれてなんとか実用化されている。
・でクラッチミートから逃れるため、トルコン(こいつは繋がって無いので確実に逃れられる)と湿式多板クラッチ(伝達トルクの容量も大きくできるらしい)が採用されるんでしょう。 ただ、トルコンの欠点の滑りのフィールの悪さと、長所のトルクの増速効果は皆様ご存知の通り。
【ギアチェンジ】
・そもそも
MTのからくりが火星14号ばりの発明(大げさ)。 横「王」型のシフトゲートと2本のロッド(ワイヤー)でシャフトアセンブリーを操り4~7段+Rを選択する。 うちの6MTだと一番左のポジションでRのシフトフォークを掴む。

その隣のポジションは1速と2速のシフトフォークを掴む。 ニュートラルのポジションは3速と4速のシフトフォークを掴む。 一番右端のポジションで5速と6速のシフトフォークを掴む。 で進行方向に倒すとR、1速、3速、5速のギアがシャフトに繋がる。 手前に倒すと2速、4速、6速のギアがシャフトに繋がる。 考えると当たり前なんだが、よーく出来てる。 シフトチェンジしようとすると自動的にギアを抜き、シフトフォークを選択し、ギアを繋ぐことになる。
・ATの皆さんのうち AMT、DCTは各シフトフォークを油圧で動かす。
・MTは、変速だと思った瞬間(シフトダウンな)、アクセルオフ、クラッチ踏む、ギアを抜くが一瞬で、ニュートラルに入るまで自称0.2S。
・AMTは、「あっ、アクセル踏まれた。取りあえず1速落とそう、あっ、もう1速落とさないと、ってな調子で、変速しようと思ってからニュートラルまで0.5Sかしら。
・DCTは手ごわい。 何時も次のギアを予測しながら走ってる。 例えば5速で走行中には、シフトアップは急がないから、シフトダウン(4速)で待機やろうな。
クラッチを切り、ニュートラルにするや否や、1速下(4速)のクラッチを繋ぐのを、右足一本で指令出来るのは、見事。
DCTのシフトダウンにはMTは敵わないと思った。
・遊星歯車は、一組3種の歯車(サンギア、遊星ギアキャリア、アウターリングギア)のクラッチを繋ぎかえる必要がある。
1つが入力、1つが出力、1つがフリー。 3種の歯車に3通りの役割を当てはめ、直結、リバース、増速、減速8つのモードを可能にする。

これを2つ組み合わせて4ATにするのが基本だそう。 それでも2つのブレーキと6つの湿式多板クラッチが必要とのこと。 MTに比べるとギアチェンジの時に手順の多さが際立つ。 ここで、一句。 「踏みこむな、ステップATは急に、シフトチェンジできない」 字余り。
・CVTはずっとベルトを挟む力が必要。 理想の無段変速だが、そのための手法は実は力まかせ。
【自動化の代償】
20kgと1.4ps(根拠なし)を一生背負うのでした。
人が手足で動かせば済むものを、油圧で機械が意図したタイミングで動かす、つまり、制御する必要がある。
いろいろ
調べたんだが、ATの連中はポンプと配管と制御装置でざっと20kg前後は重くなる模様。
変速機は足元辺りだと思うので場所的には良いが、それでも一生20kgを足元にぶら下げて走るぞ。
石油のポリタンク+2Lのペットボトル。
で、油圧ポンプの吸収馬力が調べても出てこないですが、家庭用エアコン1kW(≒1.36ps)くらいとしよう。 大きくは外れまい。
1.4psだと大したこと無いと思われるかもですが、RS4が50km/hで6速1320rpmで走行しているとしよう。
偉い人が居て、カローラだと走行抵抗は3.26kWと
計算してくれてる。 RS4はカローラと一緒にして欲しくない。 走行抵抗は5割増しの5kWだい。(威張っているが、走行抵抗は少ない方が一般には良いとされる。)
すると50km/hで走ってる時は6.8psで走ってる。 DCTだと+1.4psの8.2ps。 ステップATだと伝達効率がMTの98%に対して95%なので3%程余分に馬力が要るので、8.5psで走ってる。 420psあれば50台くらい牽引できますな。
というわけで、50km/hでしずしず走ってる時に、ステップATはMTよりも25%(1.7ps)も 余分にガソリンを食うのである。
まぁ、しっかりガソリンをもっと燃やしている時でも油圧代は何時も1.4psなんですけどね。
いっつもベルトを挟む力を必要とするCVTはもっとパワーを食うんじゃないだろうかと思う。
そういうわけで、いつ発生するか分からない動力の断続、ギアの切り替えの手作業を機械にスタンバイさせて実行させるのは、そもそも大変なことなのだ。
シフトチェンジくらいは、人間でやってあげましょうよ。
駆動系の他の所、4輪の動力配分とか、デフの差動制限とかは機械に任せないと無理だけど。
ということを本能的に感じ取って、これまで、3台30年弱MT車に乗り続けていたことに気が付きましたとさ。
いろいろ欠点を取り上げてがたがた言ってるが、実はATってスムーズに変速してくれてるだけで凄い技術なのねぇ。
それが今やMTよりも安いとは、需要と供給の関係に翻弄される資本主義社会のなせる業です。

アテンザの価格抜粋です。
クラッチ操作は
スタンバイ式の電気式も出てきたようですが。
MT vs ATで言いたいことは事実上ここまで。
次回以降は、かじった技術的な話を垂れ流します。
って、みんカラ内に沢山良質なブログが有るんで、ここで止めてもいいんですけどね。
まぁ、ここで書かないと二度と書かないので、お付き合いください。
つづく