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俺がスタリオンを欲しいと思ったのは……随分前だ

8年前か

オリンピック二回分だ


「あの、新車って新古車って意味ですかね」


「いえ？ 新車は新車ですが？ 試乗車はないんで、お見せできませんけれどね あ、こちらカタログです」


「おおお なんじゃこりゃ 俺の知っているスタリオンがエラくマッチョになっちゃってる」

「ああ、ブリスターフェンダーになって排気量も600cc増えましたしね グレードが選べなくなっちゃって…これしかないんですよ」


なんと、スタリオンはモデルチェンジもせず8年もの間、待っていてくれたのだった


「凄い 感激です でも、高いんでしょう？」

「ちょっと張りますかね プレーンな車両本体で330万ってとこですかね」


げ

やっぱ高い

「あの…ちなみにオプションって何があるんですか？」

「消費税導入もありますし、時期が時期なんで随分と引けると思いますよ？ 見積もりしてみますので、こちらにどうぞ」


「時期が時期って」

「新型が出るんですよ」

「え ええええ」

就職して、何年かたった。

会社からの借り物のライトバンは、とても便利だったが車の楽しみを与えてくれる類のものではなかった。

車を買うと、この淡々とした生活は、何か変わるのだろうか？

いや、逆に俺の生活が変わる車は何か

最初に頭に浮かんだ車がスタリオンだった。

未来へ、宇宙へ、俺の知らない世界に俺をつれていってくれるかもしれないのは、あのスタリオンしかないと思った。

だが、スタリオンがデビューしてから随分、長い時がたってしまっていた。

最早、中古車しかない。

それでもいいや

スタリオンは高いが中古車くらいなら買えるかもしれない

スタリオンの中古車というだけで、中古車雑誌を見るなんて何も思い付かず、まんま三菱のディーラーへ


ノウテンキに俺が最初に三菱ディーラーの入り口で言ったセリフが

「すみません スタリオン下さい」

受け狙いも多少ありで少し大きな声で言った

返ってきた答えは俺の想像の遥かに上だった。


「はい、わかりました～…え～っと？ 新車の方ですか？ 中古車の方ですか？」


にゃにおぅ
新車ぁ
そんな馬鹿な
新車あるはずがない

当時は、ハイパワー車戦争とも言えるほど自動車メーカーは各社がハイスペックなモデルを出していた。

スカイラインＲＳやセリカXXはツインカムで高出力のモデルであった。

スタリオンは、それらの車より、更に高出力であった。

2000ccシングルカムではあったがターボの恩恵により、デビュー時は国内市場最強の出力を誇ったのだ。

コンセプトは、宇宙・未来をイメージしており、内装もデジパネ、クルーズコンピュータ、オートエアコン、リモコンオーディオとてんこ盛り状態。

俺は、すっかりスタリオンにやられてしまった


だが、現実はそんなに甘くはない。
先進のテクノロジーを満載した三菱のフラッグシップは、とてもしがない一般庶民がサクサク買えるような価格では無かったのだ。

ましてや、自分自身は免許がない。
我が家で唯一の免許持ちは母であったが、まだ初心者マークが外れたばかりで、本人的にも新車を乗り回す勇気はなかった。

宇宙も未来の夢もスタリオンも、自分にはまだまだ高嶺の華だったのだ。

当時からＳＦにハマっていた俺は、ＳＦチックな絵画にも敏感に反応していたりした
特に長岡秀星という画家のエアブラシを駆使したレコードジャケットにはやられっぱなしだった。

その頃にデビューしたのがトヨタ セリカXX2800とターボの2000だった。
これを見た時に子供の頃に思っていたセリカに乗りたいというのを思い出した。

だが、まだ免許を得られる歳でも無かったのもあり、車への思いは、そう強くはならなかった。
また、しばらくはＳＦと星の世界に嵌ろうとする矢先、三菱よりスタリオンがデビューした。

最初にスタリオンを見たのはテレビCMであった。

尺八という古典的な楽器の音色で登場したそれは、全く対極な、まさしくエッヂの利いたボディラインのハッチバック車だった。

そして、その時に初めて自分はセリカに憧れていたのではなく、ハッチバック車が自分自身の中の美的感覚とシンクロしていたことに気が付いた。

次にスタリオンを見たのは、三菱の雑誌広告であった。
その広告に俺は目が点になった(@_@)

そのイメージは、未来感溢れる世界にスタリオンが佇むものであったが、その絵を描いていたのが長岡秀星その人であった

あるところで書いていた戦艦の今に至るまでを転載しようと思う。

実は転載する気は無かったのだが、勘違いされていることや、何も節制しないで車に金使っていられるからいまだにスタリオンなんぞに乗ってられると思われているのなら「それは違う」と言いたいから。

でも、これから書くことは
きっと普通な感覚では、有り得ないだろうし、そんなにしてまで乗る意味をみいだせないような内容でしょうけれども



元々は、セリカのシリーズが好きだった。

セリカリフトバックはカッコイイな。大人になったら、コレに乗るんだと思っていた。

でも車そのものには全然興味なんかなくて、むしろ「こんなジベタを這う様な原始的な乗り物に自分が憧れるなんて有り得ないと思っていた。

でも、そんな思いはスーパーカーブームの到来とともにやってきたランボのカウンタックとアルファのナバホとマセラティブーメランが何処かに連れ去っていった(笑)

その後は、車に対する偏見こそなくなったが、車に関することを趣味としたいとは到底思えなかった。

自転車が好きだったりラジカセに嵌ったり、天体望遠鏡や本で宇宙に憧れる、そんな普通の少年だった。