忘備録を兼ねて1年弱のことを綴っていますので、長文ですが、悪しからず。
忘れもしない2018年の5月15日。
通勤途上の地元県道交差点で、青信号の横断歩道上を歩いていてた際に、信号無視の乗用車に当てられ、右肩関節の脱臼・下半身打撲の重傷を負って初めて救急車で搬送されました。
あれから2年と7カ月が経過しました。
8カ月の苦しいリハビリに通い耐え、事故当初は殆ど動かすことが出来なかった肩関節の可動域を広げることは出来ましたが、事故以前のように全く自由に動かすことが出来た状態に回復することはなく、可動域が制限された状態=後遺障害が残ることになりました。
昨年の9月には後遺障害申請して12等級が認められました。
そこまでの経緯については忘備録として
昨年9月にアップし、その後の3か月の進捗については
今年年始の一部にアップしていますが、今年の約1年弱については、特にブログでは触れていませんでした。
障害が残ってしまったことは悲しいことです。しかし、それを単に引きずっていても良い方向には行きません。健全な肩を戻してもらうことが事実上不可能な場合、何で代替してもらうかというと世知辛くなりますが、損害賠償=金銭となります。前に進むためには後遺障害をしっかり事実として認定してもらい、見合った額を受けるしかないのです。よって、簡単には認定されない後遺障害12等級の認定獲得は、損害賠償を受ける上で大きな前進であることは間違いありませんでした。
しかし、損害保険料率算出機構(機構)による後遺障害申請後の審査で重要となる基礎データに問題があることが判明。そこに至る経緯を知ると、心中穏やかではありませんでした。
後遺障害診断書には主治医による可動域測定結果が記載され、それが機構の審査の重要な基礎データになります。そこには、障害等級を判断するための比較として障害を受けた右肩の可動域だけでなく、健康な左肩関節の可動域も記載することになるのですが、当初は数値でなく全て『正常』と記載されていました。
後遺障害診断書を受けて素人の当方が見て、『これだと問合せが来るのではないか?数値を示す必要があるのでは?』と感じ、依頼弁護士に相談・確認しました。そして、弁護士事務所のチームで検討した結果、そのままでも問題ないだろう、ということでした。
『一抹の不安はあるけど、プロが判断したのなら』とそのまま申請となりましたが、あとで振り返ると、この部分に一番悔いが残ることになりました・・・。
で、機構の障害12等級認定の理由を確認し弁護士が調査すると、機構が左肩の『正常』との記載内容について当方や依頼弁護士を通じることなく直接主治医に問合せしたようで、さらに主治医がこれまた当方に確認することなく、デタラメな数値(可動域が狭くなっている)に修正して機構に出していたことが判明。結局、機構はデタラメな左肩の可動域データと障害の残る右肩の可動域データとを比較して、障害12等級を認定していた、ということでした。
事故前は右肩も左肩も正しく『正常』で五十肩もなく、自在に動かせました。事故後に右肩は可動域が制限されましたが、左肩は今も全く『正常』です。デタラメな左肩のデータを基に障害等級を審査されたことに到底納得出来ませんでした。
ですので、その後約6カ月(今年の3月頃まで)もの長い期間、データを真の正しいもの(規程上は上位の障害等級に該当)に修正・提出して再申請・再審査に費やしました。
しかし、上位等級への変更は認められませんでした。
規定上、正しい測定データでは障害10等級であることは間違いなかったのですが、主治医のデタラメなデータの機構への提出後に修正したデータ自体も、また障害の残る右肩の可動域データも信頼度が低くなるのは当然です。そこで、改めて左右の肩関節可動域を測定するよう要請があり、主治医の機嫌を損ねないように気を遣いながら再測定してその結果を機構に提出しました。が、そのデータは真実ではあっても、失われた信頼を回復することは出来ません。
さらに、関節可動域の測定方法もキチンと規定されているにも関わらず、『測定方法や結果は厳密なものでない』・・・という業界?関係者(主治医・弁護士・機構)の、矛盾した暗黙の共通認識・考え方が根付いていることも感じました。
つまり、データ・規定では10等級に相当していても、データや測定方法が厳密ではないし、機構はさらに主治医の再測定結果が信用は出来ない、よって上位等級には認めない、それも仕方ない、ということなのです。
一体何のための規定や測定なのか?やるせなく納得できないことばかりでした。
障害の度合いは人ぞれぞれ、千差万別であるものの、肩関節の脱臼による可動域制限障害は12等級以下になる、という業界の暗黙の判断があり、これを外れることはまずない、という一種の出来レースだったのかもしれません。
本来、被害者側の立場にあるはずの依頼弁護士や事務所チーム、主治医に対しても怒りを覚えましたし、『信頼度』が下がることになってしまいました。そして、自分がもっとしっかり詰めておけば・・・という当時の自分に対する行き場のない怒りも覚えました。
前向きに捉えれば、『違和感を覚えた部分をしっかり詰めて納得出来るようにしておくことが、後々悔いないために重要なのだ』という確認になりましたが。
ちなみに後遺障害等級を審査する機構は一見中立なようで、その実は損害賠償金を出す保険会社のOBが主要メンバーとなっている団体ですので、当然加害者寄りの視点(金額を絞る方向)で審査は進む訳で、簡単には障害等級を認めません。
例えば、交通事故(追突等)で多いむち打ちが障害として残って本人は本当に痛みに苦しんでいるのに、その障害の存在を本人以外に科学的に証明できないと障害等級が認定されません。
すると、例え本人に全く落ち度がなく障害が残っても、慰謝料や逸失利益などが大幅に低額となり、全く納得の行かない結果に陥ってしまいます。こういう例は非常に多いようです。
もちろん、本当に障害が残っていない場合に本人が障害が残っているように嘘をつけば賠償金が跳ね上がることになるので、損害賠償をする側にとって科学的に本人以外に障害の存在を証明できる必要性は妥当です。が、科学的に痛みを証明することが現在の技術では難しく、泣き寝入りしなければならないケースがかなりあるようです。
当方のように右肩の可動域制限が起きている場合も例外ではありません。事故以前にそのような状態になっていないか(例えば四十肩や五十肩になっていたなかったか?事故が本当に原因か?)が疑われますし、事故によって肩腱板が損傷・断裂していることをMRIやCT画像データなどで証拠として被害者が揃えて申請しなければ、障害が認定されません。被害者がリハビリや精神的な苦しみを背負いながらも、それ以外に相当な時間と労力を掛けなければならない訳で、障害等級の審査は決して被害者救済の視点には立っていないのです。
さて、機構の再審査結果(上位の10等級に該当せず12等級が妥当)に対する理由は全く論理的ではなく、納得性もありませんでしたが、過去(最初から機構に正しいデータを出していたら・・・)を変えることは出来ませんし、万策尽きたところでした。
依頼弁護士とも相談し、これ以上障害等級の変更にエネルギーと時間を掛けても徒労に終わる可能性が高いと判断。納得が行かない場合は裁判という最終手段もある・・・と自分に言い聞かせ、渋々ではありますが、認定された障害12等級を前提として加害者(保険会社)への損害賠償請求・(弁護士による)交渉に進むことにしました。
今年3月上旬に先方へ請求してから、これまた3か月という長い時間が掛かって6月に先方からの回答がありました。当然?のことながら請求よりだいぶ低い額が提示されていました。
請求通りの回答が出ないことは想定していますので、第一段階(そのまま交渉)を続けるのではなく、6月下旬には依頼弁護士に書類を準備していただき、第二段階として考えていた紛争処理センター(紛セ)への斡旋申し立てを行いました。
紛セは、中立な弁護士が加害者側と被害者側の各々の意見などを平等に聞き和解斡旋を行う機関で、無料にて対応してもらえます。通例だと、紛セへの申し立てから1カ月程度で初回受付で双方の意見・事情などを聴取され、その後毎月1回程度のだいたい2~3回『期日』が設けられて、和解案が双方に提示されます。
しかし、今年はコロナの影響があり、保険会社への損害賠償請求からの回答にも時間が掛かり、さらに紛争処理センターも緊急事態宣言期間は業務を休止していたので、その間に案件も溜まったのでしょう。『期日』の設定も遅れ遅れとなりました。
紛セには代理人である当方の依頼弁護士が出席し、間に立つ紛セの弁護士を通じて双方の意見や主張などを聞くことからスタートしますが、1回目が8月でその後9月と11月の2回『期日』が設けられました。
紛セでは中立弁護士が最終の和解案を斡旋する前に、双方が歩み寄ればそこで和解という形になる場合もあります。11月の時点で先方の歩み寄りはありましたので、事前に依頼弁護士とは妥結点を打ち合わせしました。
そして、最後となる『期日』12/16に、和解案が提示される前にこちらも歩み寄りつつ先方に主張を伝えたところ、それなりの理解とさらなる歩み寄りがあり、事前に話し合っていた妥結点を越えたことから、和解することとしました。
ちなみに、今回はそこまで至りませんでしたが、紛セの中立弁護士の斡旋による和解案に対して双方のどちらかが不満な場合は受け入れる必要がありません。その場合、次の段階として不満とする側が紛セの中の上位機関にあたる審査会へ申し立てることが出来ます。審査会は複数の弁護士がメンバーとなりますが、当然時間を要します(地域にもよるようですが、東京でも通常で3か月強)。そこで出された和解案に対して、加害者(側保険会社)は拒否出来ませんが、被害者が不満な場合は拒否出来ます。そうなった場合の最終手段は裁判となります。
さて、この和解については色々な思いが巡りました。
事故から2年7カ月という長い期間が掛かっていること、様々な紆余曲折、完全には納得していない障害12等級を前提としていることなど・・・和解した後に『こうしておけば良かった』などと再度悔いることはないか、本当にじっくり考えました。
当たり前ですが、正常健全な自分の利き腕(右肩)の価値を『金額』に換算するのですから、最終手段の裁判で紛セ和解(額)より高額な裁定を得たとしても、そしていくら積まれても真の納得などあろうはずがありません。
さらに、当方の諸事情に近い昨今の凡例などを調べると、その先に進んで審査会や裁判で出される額が、11月時点での先方提示額より増えるか減るかは、審査会メンバー(複数弁護士)や裁判官によって様々で全く読めない(ある意味運の良し悪しで増減する)という依頼弁護士の情報もありました。
もし、裁判まで進んだ場合はさらに1年以上の期間を要しますし、当然書類やデータをさらに揃える必要が出て来ますから、コストもエネルギーも掛かります。
また、ある意味全面戦争ですから、先方は当方に不利となるような情報(例えば事故後の生活全般・行動など)を色々と調べ揃えて突っついてくるはずです。嘘偽りなく生活・行動などに対しても全て堂々と答えられますが、最終的には裁判官の心証如何になるので、こちらの答え方も重要になります。被害者と言えども色々な気遣いなど心労が増えることは確実です。
ちなみに当人が裁判所に行くのは1回程度ですし、滅多にない機会になることは間違いないので、一度は挑戦してみることも考えましたが・・・。
一方、裁判では機構で認定された障害12等級を前提としない主張が可能となるので、10等級相当の裁定が出る可能性もあります。が、右肩関節可動域がギリギリ10等級であることは事実なので、現実的な裁定の最大額は障害10等級の満額でなく12等級との中間と推定されます。
11月時点の額との差と今後掛かるだろう時間・エネルギー・心労を天秤に掛けると、裁判を起こす意味は殆ど無く、さらに裁定額が和解案の額と同等か下回ってしまった場合、さらに納得感が下がり、悔いが残る・・・ということなどを総合的に判断し、紛セの最終『期日』での妥結点を依頼弁護士とネゴしておいて、そこに至れば和解することにしておきました。
まぁ、結果的に最終期日で妥結点を上回るところで和解に至れたので、最低限の目標はクリアしたことになり、これも大きな前進となったことは間違いありません。
事故被害において、自分は『解決』はないと捉えています。また、真の納得もありません。
事故被害に遭ってから常に前向きに取り組み、何とかテニスも出来る(右肩のリハビリを兼ねている)ようになりましたし、頑張ってバイクも乗れるようにまでなりました。
しかし、右肩の可動域が制限されているので、テニスで以前のようなサーブは打てませんし、生活・就寝・仕事やツーリングなどの様々なシーンで右肩から首が疲れて痛みが出るとか、普段の生活の中で色々と不便があるなど、絶対に障害を忘れることはありません。つまり、今回の和解は自分にとって『解決』でなく、単なる『区切り』です。
今後、依頼弁護士による示談書の取り交わしを経て来年1月中には弁護士費用を差し引いた損害賠償として、それなりの額が振り込まれます。ネットで数多く挙げられている障害等級毎の損害賠償の絶対額を見た中で、かなり高い部類に入ることは間違いなく、この点が2年7カ月掛けた様々なものに対する唯一の救いです。
掛け替えのない自分の右肩の『価値』ですから、今後の人生をさらに充実させるために有効活用します。
<追伸>
みんカラに登録している方やみんカラを閲覧している方は、クルマやオートバイを愛し、運転している方が多いと思います。運転している時間の方が長く、道路を歩いている時間が圧倒的に少ない方も多いでしょう。
特に住まいが首都圏や大都市中心地ではなく、地方に行けば行くほどクルマ・オートバイに乗っている時間が長くなり、そうした人の割合も多くなります。
その分、歩行者の立場は理解し難く、どうしても路上においてクルマ・オートバイが優先という目線や意識に陥りがちです。当方も今は道路を運転している時間と歩いている時間を比べると大差ない位ですが、かつてクルマ通勤していた頃は道路を歩く時間がかなり少なく、クルマに乗っている時間が多かった人間です。歩行者の立場・目線・意識は低かったのは確かです。
つまり、クルマ・オートバイ好きの集まるこのSNSサイトで、クルマ・オートバイ好きでもあり今回歩行者として事故被害に遭った自分が一生残る苦悩や障害についてしっかりと綴ることで、クルマやオートバイを運転する際の歩行者事故への防止意識を高めなけれなならない・・・そう感じたこともあって今回の経緯をアップしました。
当たり前ですが、歩行者がクルマやオートバイに当てられたら大けがを負います。そして、多くの場合、傷や障害を心と体に残します。歩行者として道路を歩く機会の殆どない運転手に歩行者の目線・意識を持て!と言っても無理なのは判っています。
是非、クルマ・オートバイに乗るだけでなく、皆さんの地元や旅先の道路や交差点・横断歩道をじっくり歩いてみてください! 自身を含むクルマ・オートバイの運転を客観視できますし、歩行者を巻き込む事故防止意識が高まるはずですので・・・。
そして、運転する時間の多い方も歩行者となった時に事故被害に遭うこともあるでしょう。その時の賠償請求において少しでも悔いを減らす上で参考になれば幸いです。