半ば備忘録のようなものですが、ご興味があればお読みください(^^
度々取り上げる「FM(/AM)チューナー」ですが、
ある程度の調整や修理を重ねてきて、いくつか気付いたことがあります
古いチューナーをチェックする際に参考にするのがメーカーのカタログ性能です
『オーディオの足跡』のように過去のオーディオ機器の情報をまとめたサイトがあり重宝します
この発売時の性能値を把握したうえで調整するんですが、
同じ機種であってもコンディションに違いが出るのは中古車などと同じです
外観や部品の程度は使用環境や累積使用時間などによりますが、
性能に関わる部分も徐々に理解できるようになってきました
チューナーは受信機ですから、一にも二にも「電波」が物を言います
いくら音質、性能に優れたチューナーでも、受信電波が良くなければ宝の持ち腐れです
この外部環境への依存度が高いところが他のオーディオ機器と大きく異なります
ではメーカーの狙い通りの音質や性能を発揮する方法とは?
単純に、メーカー製造時の調整と同じ強度の電波を得ることが近道です
ノイズやマルチパスがない最良の電波になるよう、受信環境に合ったアンテナやブースターが必要です
もちろん、チューナーがきちんと調整されていることも前提です
電波は強いほど良いというものでもありません
強すぎる電波を受けるとチューナー側の許容値を超えてしまい、かえって悪い影響が出ます
機種によっては「ダイレクトポジション」(信号増幅回路を一部パスする機能)を搭載していて、
増幅分の10~20dB程度をキャンセルすることで影響を抑えられますが、性能低下も見られます
しかし、そんな数値はカタログに書かれていません・・・
取扱説明書に推奨値が記載されていればそれを目安にするか、
サービスマニュアルを入手して確認するしかありません
「ステレオセパレーション」(左右チャンネルの音を分離する性能)の測定値を例に、
電波強度の影響を確認します
まず、調整前と調整後の変化です
調整後はかなり良好な数値になりました
無調整だと30dB台に低下しているものがほとんどですが、チューナー「A」はマシな方でした
チューナーA ステレオセパレーション(左チャンネル/右チャンネル)
調整前 調整後
電波強度 60dB 46.5dB / 48.0dB → 64.0dB / 65.5dB
70dB 45.5dB / 47.5dB → 64.5dB / 66.0dB
80dB 45.0dB / 47.5dB → 67.5dB / 67.0dB
90dB 46.5dB / 48.0dB →
69.5dB / 70.5dB
カタログ値 65dB
本題は電波強度による性能のばらつき
たまたまチューナー「A」では少なく良い結果でしたが、多くのチューナーはそうではないんです
そこで別の3台の数値を見てみます
チューナーB チューナーC チューナーD
調整後 調整後 調整後
電波強度 60dB 50.5dB / 53.5dB 59.0dB / 57.0dB 58.0dB / 56.5dB
70dB 53.0dB / 55.0dB 58.5dB / 57.0dB 59.5dB / 62.5dB
80dB 60.5dB / 63.5dB 64.0dB / 66.0dB 59.5dB / 64.0dB
90dB
64.5dB / 68.5dB 65.0dB / 67.0dB 59.5dB / 66.5dB
カタログ値 66dB 70dB 70dB
特にチューナー「B」のような大きなばらつきが出るとは思いもしませんでした
もし期待した性能を発揮してなかったらショックですよね
(普通は知らずに使ってると思いますが)
これらは調整時の電波強度を90dBに揃えてあり、今回どれもその強度で受信した時が最良値
メーカーのサービスマニュアルを較べてみると、
ステレオセパレーション調整時の電波強度は同じではありません
チューナーB
90dB調整(再掲) 80dB調整
電波強度 60dB 50.5dB / 53.5dB ⇔ 52.5dB / 55.0dB
70dB 53.0dB / 55.0dB ⇔ 57.0dB / 57.5dB
80dB 60.5dB / 63.5dB ⇔
65.0dB / 68.0dB
90dB
64.5dB / 68.5dB ⇔ 63.5dB / 67.0dB
電波強度を80dBで調整し直したところ、やはり80dB受信時の測定値が最良となりました
60dB、70dBで調整しても同様の結果です
当然といえば当然なんですが、調整時の電波強度が良いことが確認できました
てことは受信できる実電波の強度に合わせて調整すれば性能を発揮できますね
サービスマニュアル通りに調整するのが正しいやり方ですが、手に入らないものも多いです
手間は掛かりますが、ばらつきが少なくなる電波強度を探って調整したり、
感度なども含めて一つの受信周波数ピンポイントに特化したりもしても良いかも
S/N比なんかも考えると60dBは最低ラインかと思います
中にはほぼカタログ性能の数値が出る機種もあれば、遠く及ばない機種もあります
数台調整してみてどれもカタログ性能値に及ばない場合は経年劣化が原因ではないでしょう
最近になって修理・調整の記録を残し始めましたが、機種ごとの実性能や性能の出方、
劣化しやすい部品の傾向など、コツがもっと掴めそうです
もっと早くやってればよかったなぁと思うこの頃です、(^^;
注)電波強度の「dB」は標準信号発生機の出力(75Ω)