養老孟司先生の「バカの壁」の中で最も印象に残っているのが、「情報は変わらない。人間が変わるのだ」というフレーズ。情報というものは日々刻々と変化し、それを受け止める小生は昨日と同じ小生なのだから、そのフレーズにはさすがに無理があるのでは・・・と思いきや、さにあらず。
流転しないものを情報と呼び、ひたすら変化し生老病死と向き合っているはずの人間がそれに気付いていないのだ・・・というのが養老先生のご意見。
以下は、10月7日付けの朝日新聞デジタルの記事より。
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元東京都知事の石原慎太郎氏は6日、豊洲市場(江東区)の盛り土を巡る問題で都から聞き取り調査への協力を求められていたことについて、「書面で質問いただければ、答えたい」とする談話を公表した。
談話によると、石原氏は「都の調査に協力する意思に変わりはない」とする一方、高齢で記憶が正確でなく、体調も優れないため、「(調査の)時間や方法に配慮して頂きたい」としている。都は、在任中に築地市場の豊洲移転を決めた石原氏への聞き取り調査を3日に要請したが、石原氏が難色を示していたという。
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平成11年9月、石原氏が都知事だった時代に、重度心身障害(児)者施設である府中療育センターを視察したことがあった。
そして、その後の記者会見で彼はこう言い、物議を醸す。
「ああいう人ってのは人格あるのかね。ショックを受けた。僕は結論を出していない。みなさんどう思うかなと思って。 絶対よくならない、自分が誰だか分からない、人間として生まれてきたけれどああいう障害で、ああいう状態になって・・・」
さらに、
「おそらく西洋人なんか切り捨てちゃうんじゃないかな。そこは宗教観の違いだと思う。ああいう問題って安楽死につながるんじゃないかという気がする・・・」
と発言。
これら一連の発言は、メディアでも大きく報道された。
当然のように知的障害者団体からも抗議され、石原氏は
「あくまで文学者としての表現」と、歯切れの悪い弁明に終始したように記憶している。
そんな石原氏が最近、老いと脳梗塞の後遺症に直面し戸惑っている・・・という話を耳にした。
話の出どころは、文芸春秋社の文学界10月号。
そこで本日の午前中、少し離れた市内の図書館に輸送機を出動させ、くだんの雑誌を借りてきた。

内容はといえば、「死」と睨み合ってというテーマで行われた対談を収録したもの。
対談の相手は、精神科医の斎藤環氏で、石原氏の死生観を主とした14ページほどの読み物となっている。
ほんの一部を抜粋すると、こんな感じである。
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石原
とても尊敬していた政治家に賀屋興宣さんという人がいて、晩年に会った時、「先生、最近は何を考えてますか?」って僕が言ったら、「自分が死ぬことばっかり考えてます」という。「先生、死ぬことってどんなことですか?」と尋ねたら、「死ぬっていうのはつまらんですな。死ぬと一人でトボトボどこか暗いところを歩いていくんですよ。そうすると、自分のことを悼んでくれた親戚や友人なんかもみんな自分のことを忘れちゃって、そのうちに自分で自分を忘れちゃう」と言うんです。重ねて私が、「若い頃に結ばれなかったプラトニックな恋人や、熱愛していながら先立たれた奥さんに天国で会えるじゃないですか」と言ったら、「いや、会えませんな」と言うんですよね。
そんな会話を今非常に思い出すんです。つまり、人間というのは意識があるから生きているわけでしょう。その意識がなくなっちゃったら何もないんだね。
斎藤
死後の世界はあり得ないと思いますか?
石原
ええ。私は仏教徒で、「法華経」の解説書も書いたことがありますが、来世というのはないですな。死んだら虚無ですよ。そう考えるとつまらないね、やっぱり。
(中略)
この間の、障害者を19人殺した相模原の事件。あれは僕、ある意味で分かるんですよ。昔、僕がドイツに行った時、友人がある中年の医者を紹介してくれた。彼の父親が、ヒトラーのもとで何十万人という精神病患者や同性愛者を殺す指揮をとった。それを非常にその男は自負して、「父親はいいことをしたと思います。石原さん、これから向こう二百年の間、ドイツ民族に変質者は出ません」と言ったので、恐ろしいやつだなと思って。
斎藤
この対談は、読者にとってかなり衝撃的なものになると思います。石原さんが生と死の間で葛藤しているとか、自分の衰弱に苦しんでいる、悩んでいるというようなことがあるとは誰も思っていないでしょうから。
石原
私はそんなタフガイじゃないです。繊細な男ですよ。
斎藤
石原さんの繊細さは良く存じ上げていますが、世間的には違うでしょう。だいぶイメージが変わるんじゃないでしょうか。
石原
軽蔑されるかな。
斎藤
いや、軽蔑じゃないです。真逆だと思います。しかし今の超越性と死後の生との葛藤はすごく重要なテーマだと思いますので、そこは何か折り合いを付けたいですね。
石原
本当に、任せる人が居たら任せたいんだけどね。
斎藤
任せるということは、死後の生を肯定してくれる人ということですか。
石原
そうですね。それについて非常に強いサジェスチョンがあればね。
斎藤
でも、そういうことは今までいろんな方が石原さんに話してきませんでしたか? 死後の生に関しては。
石原
小林秀雄さんがもし生きていたら、ぶつけてみようかなと思うんだけど、小林さんも死んじゃったし、もうみんな死んじゃったもんな。
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社会学者の上野千鶴子氏は言う。
「超高齢化社会とは、どんな強者も強者のままでは死ねない、弱者になっていく社会であること。すなわち、誰もが身体的・精神的・知的な意味で、中途障害者になる社会」だと。
石原氏もやはり人の子。
脳梗塞の後遺症で記憶を司る海馬がダメージを受け、字を書く際にひらがなの「な」と「ぬ」と「ね」の区別がうまくできない話や、「自分でこのごろ鏡に向かって言うんだ。『おまえ、もう駄目だな』って」と葛藤を吐露するくだりは、恐らく真実なのだろう。
したがって、新都知事の要請による聞き取り調査の拒絶は、7割は彼のプライドの高さがその理由だろうが、残りの3割は実際に自信がないのかもしれない・・・と文学界10月号を読んで率直に感じた次第。
そのことはともかく、石原氏自身、後期高齢者・脳梗塞の後遺症という弱者性を抱え、そういったテーマを語り合いながら、同じ対談で、障害者施設入所者に対する大量殺人事件を、「ある意味分かる」と言い放つ彼は、「弱さ」を持つ人への共感の意識が感じられないという点で、やはりただものではない。
いや、共感の意識どころか、自分が弱者性を抱えていること自体を拒否しているのだろう。
弱者になった自分を受け入れられないのは、何も石原氏だけではない。
役に立ってこそ男という考えから抜けられない。社会のお荷物になる自分を受け入れられない。このような「高齢者の自己否定感」が、老後問題の最大の課題だと上野千鶴子氏は指摘する。
その背景にあるのは、生産性が高く、効率が良く、その上費用対効果が優れたものでないと価値がないとする考え方だ。
そういった価値基準は、結果的に弱者性を抱えた自分自身にキバを剥く。
石原氏の苛立ちは、そのような価値観を捨てさらなければ鎮まらないのかもしれない。
さて、極めて費用対効果のよろしくない小生だが、一昨日ターンパイクに行ってみた。
9時20分、戦闘機で自宅を出発。
クラウンコンフォートの背後に迫る不気味な影・・・

東北道から

東名集中工事を避け、圏央道へ

覆面ワールドリーグ戦に留意しつつ厚木小田原道路へ

小田原パーキングエリアで30分間休憩

身障者用駐車場に止めさせて頂く

毎度おなじみの下手な写真でご辛抱のほどを・・・











大観山にトウチャコ

お陰様でだいぶ戦闘機らしくなった

富士山は雲隠れ


帰路は箱根新道で

14時35分、帰宅。警備隊長が出迎えてくれる

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