旧有料道路探訪の第8弾です。
伊豆スカイラインの玄岳ICと熱海市街を結んでいた熱海新道です。
熱海新道に関してはあまり資料も無く、経営会社であった小松地所が会社解散をしてしまっていることからなかなか情報が集まりませんでした。
最終的には、現地調査と静岡県道路公社からの情報提供でなんとか把握出来ました。
【概要】
前述のとおり、伊豆スカイライン玄岳ICと熱海市街を結んでいたいわゆる観光道路になりますが、もう一つの役割として熱海自然郷と呼ばれる熱海市内最大(当時)の別荘地へのアクセス道路でもありました。
熱海自然郷自体もコマツ製作所系の不動産開発企業だった小松地所によって開発が行われ、そこにアクセスする熱海新道もまた小松地所によって開発された道路です。
【通行料金】(普通乗用自動車)
300円(営業終了時)
【料金徴収期間】
1966年7月30日から1997年3月31日まで
1997年4月1日をもって、熱海市に払下げが行われ以後は市道になっています。
【料金所】
これがもう分かりにくかったです。特に起点ゲート側が・・・
まず開通当時の以下の資料を参考にしました。

(月刊土木技術1966年9月号より)
熱海市街側(起点ゲート)と伊豆スカイライン玄岳側(終点ゲート)があったのが分かります。
熱海自然郷の住人の方のお話によると起点ゲートは
このあたりだったそうです。
(下り坂が続いて平らになる所とのことで多分このへんで合っている気がします)
一応当時の空撮(昭51/10/06)でもそれっぽいのが見えますが、現在は全くその跡がありません。
もう一つ、資料に記載のある仏舎利駐車場ですが赤枠で囲った部分が該当するかと思います。
こちらについても現在はその痕跡がありませんでした。
終点ゲートは現在の伊豆スカイライン玄岳ICと同一ロケーションです。
(後述の【料金徴収について】参照)
ただし、「昔は屋根は無かった」(by静岡県道路公社)とのことです。
裏付けとして空撮(昭58/11/08)でも屋根が無いのが分かります。
ついでに言うと現在はブース近くに存在する事務所もありません。
ただし、現地で聞いた話によるとホテル(熱海森の温泉ホテル)が出来る前ぐらいで新しい料金所が出来たとも伺いました。
それがこのあたりのようです。
なるほど確かに、左右にスペースが広くなっているし、
湯河原新道と同じで路面にブースの跡が残っています。
話によると料金所が出来たタイミングでこの道路が使えなくなった(熱海新道と繋がらないようにした)とのことでした。

(Googlleストリートビューより)
あー、確かにこれは塞ぎますね。
ここ通れたら自然郷の中を通って料金所がバイパス出来てしまいますからね。
ただ、この料金所が出来た時期と熱海新道の歴史を突き合わせるとどうもマッチしません。
wikipediaにも記載がありますが、
「当路線の東半分(3.1km)を1979年(昭和54年)末に熱海市に無償譲渡し無料開放された。 」とあります。
つまり昭和55年1月頭の段階で起点側ゲートは用済みになったわけですが、同じタイミングで自然郷の所で新しい起点ゲートが運用しているのが妥当と考えます。
しかし、昭58/11/08の空撮で確認してみるとあるべき場所にその存在を確認出来ません。
また、前述の「ホテル(熱海森の温泉ホテル)が出来る前ぐらいに新しい料金所が出来た」という話について確認しましたが平成元年の建設のようです。
(トリップコンシェルジュ、有能ですなぁ)
つまり最低でも約4年(55年から59年)、あるいは最長で約9年(55年から64年)の間は伊豆スカイライン玄岳IC側の料金所のみで運用されていた時期があるという形になりそうです。
【料金徴収について】
ややこしい話ですが、伊豆スカイライン玄岳ICに接続された終点ゲートは熱海新道が営業していたころは「熱海新道の所有物」です。
熱海新道が無償譲渡されたタイミングで「静岡県道路公社の所有物」に変わっています。
1点疑問に思ったのが熱海新道における料金徴収スタイルです。
一般的な有料道路の場合、通常区間内に料金所は一つで事足りますが、熱海新道のようにその終端が別の有料道路にダイレクトに接続されている場合は勝手が変わってきます。
熱海市街方面から登ってきた車は玄岳側の料金所を過ぎれば必然的に伊豆スカイラインに入ります。
伊豆スカイラインは開業当時から前払い制(降りるインターを申告する)を採用しています。(山伏峠からの入りは例外として)
ですので玄岳の料金所では、熱海新道という会社が、別会社である伊豆スカイラインの料金を徴収するわけです。
静岡県道路公社にこの辺ってどうされてました?という話を伺ったところ、
熱海新道側とは料金徴収委託という形で契約を結んでいたとのことでした。
そもそも回答頂いた方ご自身が、かつて伊豆スカイライン勤務で「熱海新道に集金に行く」という業務をされた実績があったとのことでした。
【備考】
熱海新道は最終的に無償譲渡として熱海市に移管されました。
その結果熱海市道になったわけですが、市町村道のウィークポイントである「管理が適切にされにくい」という問題がこの元熱海新道にも当てはまります。
実際通行時に路面への落石、折れた枝(結構太い)の散乱、路肩の植物が道路側にせり出しているという事が確認できました。
またアスファルトの大きな凹凸もあったと記憶しています。
熱海自然郷に用がある以外は、熱海市街への通り抜け路としての通行はあまりお勧め出来ない状況かと思います。
参考:
https://ja.wikipedia.org/wiki/熱海新道
空撮写真の引用:
地図・空中写真閲覧サービス